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救世主は救わない  作者: nauji
第二章
38/60

第28話 令嬢

この作品はフィクションです。


重要語句は【】、能力使用時は≪≫で記載しております。

 緑色から茶色や灰色へと、空を行く俺の視界に映る景色が、また色を変えてゆく。

 草原地帯を抜け、鉱山地帯へと入ったのだ。


 街道の傍に小さな砦のようなものが見え始める。


 すると、辺りに爆発したような轟音が響く。

 次いで俺を衝撃が襲う。


聖衣(せいい)】により痛みはないものの、運動エネルギーは健在だ。

 俺の体があらぬ方向へと飛んで行く。


 俺は慌てて【リング】の重力制御を強め、姿勢制御を行う。

 衝撃の原因を探るべく、辺りを見回してみる。

 砦の屋上にある砲台がこちらを向いていた。

 砲身からは煙を上げている。


 マジで?

 砲撃してきたの?


 結構な高度を飛んでいたのだが、街道よりも高い位置にある砦の屋上からだと、俺が鳥では無いと視認されてしまったのかもしれない。


 他の国の文明レベルから言って、空からは攻めて来ないだろうに、わざわざ上空を見張っているとこに出くわしたらしい。

 随分と仕事熱心な兵士だか騎士だかが居たものだ。

 俺にとっては迷惑この上ない。


 下手に警戒されて、俺が街に着く前に指名手配でもされたらたまったものではない。

 またしても投獄のお時間となってしまうのは避けたい。


 このまま更に上空に逃げて、この先の街へと向かったとしても、街側からも警戒されそうだ。

 やるならば、視認できない程高度を上げるか、砦の無い箇所を飛ぶしかないか。


 いや、ここはあえて、撃墜されておくのも手だろうか。

 撃墜された風を装って地表へと落下し、砦の奥側、視認されない場所に【転移(てんい)】してしまえばいいのだ。

 そうすれば、追っ手を差し向けられずに済む。


 いやいや、それでは墜落した場所を捜索されてしまうか。

 そうなってしまえば、落下地点に何も無い事が露見し、結果追っ手がかかりそうだ。


 では、砲撃を食らった瞬間に【転移】で移動すればどうだろうか。

 木っ端微塵になったと思わせられるのではなかろうか。

 それでも辺りを捜索はされてしまうかもしれないが、痕跡が無い事への根拠ぐらいにはなるだろう。



 そうと決まれば、やってやりますか。

 先程よりも、若干高度を上げつつ、俺の視認性を下げておく。

 街で見つかって騒がれてるのも面倒だし、あまり目撃されたくはない。


 砲撃されるまで、先程の場所付近を漂っておく。

 そして、次弾が発射された。


 俺は砲弾の衝撃を感じると同時に【転移】を行う。


≪転移≫


 砦の奥側、視認出来なさそうな距離の街道へと現れた。

 もう下手に飛んで移動しない方がいいかもしれない。

 後どれ程の距離があるか分からないが、大人しく歩いていくべきか。


 そこに、爆発音が響き渡った。

 思わず、衝撃に身構える。


 が、(しばら)く経っても俺の身に砲弾は飛んでこなかった。

 どうやら、先程の音は砲撃の音ではなかったようだ。


 街道から逸れている(わだち)が見える。

 先程の音はそちらからのようだった。

 その轍の先で何かやっているようだ。


 俺はその場へと近づいてゆく。


 見えて来たのは、鉱山の採掘現場のようだった。

 先程の爆発音は、爆破作業の音だったらしい。


 轍の主は、馬車ではなく、この世界の機械車両のようだった。

 乗用車ではなく、作業用というのか、貨物運搬を主としているようなトラックの劣化版のような見た目をしている。


 この世界は剣と魔法のファンタジーかと思っていたのだが、どうやらそうでもないらしい。

 砦にあった砲台といい、採掘現場の車両といい、文明レベルがおかしい。


 俺はその様子を何とはなしに見ていると、一台の車両がこちらに向かってきた。

 その車は作業用ではなく、乗用車のようだった。

 縦長な作りをしている。


 俺の傍を走り去ってゆき、しかし、すぐに停車した。


「おい、そこの白いの。そこで何をしておる?」


 若い女性の声が掛けられた。

 声の方へと目を向ければ、停車した車両から、顔を出してこちらを向いている女性の姿が見えた。


 長い金髪をポニーテールにした、色白の美人だ。

 切れ長の目に、鮮やかな青色をした瞳が、こちらを捉えていた。


「……特に何かをしていた訳ではありません。ただ、そこの作業風景が物珍しかったので、つい見入っていただけです」


「……ほぅ、それで、何処から来たのじゃ?」


「草原地帯の国の方からですけど」


「それはそれは、難儀なことじゃな。……それも、そんな何も持たぬ軽装で、な」


「っ!?」


 しまった!

 そういえば旅装なんてしていない。

 荷物も持たず、街道を歩いているのは十二分に怪しかったか……。


「……どうやら、一般人ではなさそうじゃな。これはオモシロ……コホン。不審者に違いない」

「ほれ、さっさと捕まえてこんか!」


 後半は同乗者に言ったようだ。

 車両から男が二名出て来た。


 ここにきてまた捕まるとか、運に見放され過ぎでは?

 地上じゃなく、上空を飛んで行くべきだったか。

 虜囚フラグがへし折れない。

 随分と頑強な作りのようだった。


 体を押し込められた先は、車両の二列目のシートだった。

 左右に男達が座る。


 先の女性は三列目のシートに居た。

 口元を愉快そうな形に歪め、その目は獲物を狙うネコ科の猛獣のようだ。


「ほれ、さっさと車を出せ」


「ハッ、直ちに」


 運転手を急かし、車は街道をひた走る。

 余程興味が尽きないのか、シートから身を乗り出し、俺に色々と尋ねてくる。

 その度に、女性に危害を加えさせない為か、左右の男達から羽交い絞めにされる。


 何という地獄か。

 こんな筋肉達磨(だるま)みたいな男達に、羽交い絞めされることになろうとは。


 念願の美女に遭遇する事が出来た喜びは、男達の肉感的な感触と接触とで失われてゆく。

 今すぐにでも上空へ【転移】して、この男共を地表へと投げつけたい衝動に駆られる。


 くそっ、これが女性であれば、例え筋肉質なお姉さんであったとしても、俺は甘んじて受け入れただろう。

 だが、男は駄目だ。

 ただひたすらに不快だ。

 俺は最早白目を剥きながらも、一秒でも早く降車する瞬間が来ることを願った。




 一同を乗せた車は、山を背にした街へと向かっていたようだ。

 ここが例の鉱山の国なのだろう。

 だが、そこに城の姿は見当たらない。


「あれ、城って無いんですか?」


 街を目にした事で、話す気力が戻って来た。

 今の今まで、無気力状態の死に体だった。


「……何じゃいきなり、(ろく)に返事もせんかった癖に」


「いや、この状況で元気にはなれませんよ」


「そんなに辛かったのか? ……そうか、車酔いというヤツか! おぬし、車に乗るのは初めてじゃったか!?」


「いえ、車に酔った訳ではなく、あえて言えば、筋肉に酔ったんです」


「は? 何を訳の分からんことを言うておるのじゃ?」


「…………」


「おい、どうしたのじゃ! 返事をせんか!」


「…………」


「お前ら、叩き起こせ!」


「いやいやいやいや、起きてます起きてますから、やめてください」


「ワシを無視するからじゃ。構わず殴れ」


「ぐえっ」


【聖衣】のお蔭で痛くはないのだが、リアクションをしておいた。

 黙っていると、もっと殴られかねない。



 結局、城については答えを得られないまま、車は街中へと入る。

 他の二国に比べて、明らかに文明レベルが上だ。

 木や石造りではなく、コンクリや鉄筋で造られたであろう、近代的な街並みが広がっている。

 流石に、アスファルトまではないようだが、十分に舗装された道が整備されているのが見て取れる。

 大きな病院らしき建物や、巨大なスタジアムのような場所まで見受けられる。


 そうした街並みに目を奪われていると、程なくして車が停車した。

 どうやら目的地へと到着したようだった。




「ワシは埃を落としに風呂に入ってくるから、そやつは部屋で待たせておけ」


「「ハイ、了解です、お嬢」」


 車を降りるなり、こちらに向かいそう言い放つと、女性はさっさと建物の中へと入っていく。

 全身を初めて見た。

 何せ、車の中では、ずっと筋肉に拘束されていたのだ。

 女性の服装は、Tシャツにズボン姿と、随分な軽装だった。

 そして、その服越しでも分かるほどに、スタイルは抜群だ。

 ありがたく目の栄養とさせていただく。

 もう筋肉祭りは嫌です。


 眼前の建物は、横長の三階建ての大きな造りをしていた。

 この街の最奥と思われる立地に、他よりも何倍も大きな建物。

 先の女性は、随分と身分の高い人物だったようだ。

 鉱山の所有者といったところだろうか。


 俺は建物の中へと両腕を掴み上げられた状態で、宇宙人の気分を味わいながら連行されてゆく。


 大きな両開きのドアの先にあったのは、やはり大きな吹き抜けのエントランスだった。

 正面に階段があり、踊り場から左右に分かれている。


 俺は二階へと連れていかれ、廊下の先の一室へと辿り着いた。

 どうやらここが客室らしい。

 ご丁寧なことに、俺を連れて来た男達は、部屋の入口に二人共陣取った。


 流石にベットにダイブするのは躊躇われたので、ソファーに腰かけておいた。

 窓から外を伺えば、夕暮れに染まりつつあった。

 城の牢屋から脱走した時から考えて、四半日程度経過している事になるのか。


 窓の外から夕焼けが見えなくなった頃、部屋をノックする音がした。

 どうやら、先程の女性が来た訳では無く、俺達を呼びに来た使用人らしかった。

 俺はまたエントランスへと戻っていき、二階正面の大きな扉を抜ける。


 扉の先は、大きな広間、というよりかは謁見の間の様だった。

 正面に玉座に腰かける麗人が見える。


 長い金髪の縦ロール。

 切れ長の目に、鮮やかな青色の瞳。

 色白の肌。

 裾の広がった豪華な赤色のドレス。


 先程の女性の親族だろうか。

 特徴が随分と似ている。


 というか、ここって屋敷じゃなく城だったのか!?


 玉座の前に、両腕を左右から捕らえられながら(ひざまず)かされる。

 そこに玉座から声が降った来た。


(おもて)を上げよ」


 促され、顔を上げる。

 近くで見ると、凄まじい美人なのが分かる。


「さて、先ずは名乗っておこうか。妾は――」


「いや、名乗りは抜きで良いです」


 俺の言葉に返事が返る前に、両側から頭を床へと叩きつけられた。






思ったほど進展しなかった……。

次回こそは進展する筈!


21/07/15 文言修正


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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お読みいただき有難うございます!

『勇者は転職して魔王になりました』
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