表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
救世主は救わない  作者: nauji
第二章
37/60

第27話 恒例

この作品はフィクションです。


重要語句は【】、能力使用時は≪≫で記載しております。

 扉の先にあったのは、明らかに豪華さが段違いの空間だった。


 高い天井。

 整然と並ぶ三又の燭台。

 壁に掛かる垂れ幕。

 床を彩る赤地に金の刺繍が施された絨毯。


 これは、まさか、城にでも入ったのか!?


 ひとまず、地下通路の先の場所は判明したのだ、長居は無用だろう。

 とにかく、何処か別の場所に【転移(てんい)】を。


 だが、その判断は遅きに失した。


 まだ深夜か早朝だろうに、職務熱心な見回りと思われる騎士が俺に気が付いていた。


「侵入者が居るぞ! 逃がすな!」


 おぉう、ここにきて、また虜囚ですかい。

 とはいえ、今回は冤罪とは言い難い。

 せめて透明化さえ備わっていれば……。


 俺は逃亡を諦め、大人しく捕まる。

 見られる前ならいざ知らず、見られた後では【転移】しても、街中に手配されていまうだろう。

 そうなっては、追手が更に増すだけだ。


 俺、こんな展開ばっかりだな。


 ……いや、待て。

 俺が捕まらずに済んだ事って実は無いのでは……。


 思い返してみる。

 おやっさんの居た都市では……虜囚になっていた。

色欲(しきよく)】の世界では……【魔神(まじん)】に捕まっていた。

【森の民】の村では……捕縛され連行された。

炎鬼族(えんきぞく)】の集落では……虜囚になっていた。


 成程、散々だね!

 記録更新だよ、畜生め!



 ドナドナされてゆく。

 向かう先は城内地下の牢獄だった。


 先程までは素晴らしいベットで寝ていたというのに、ここには冷たい石畳の床しかない。

 流石にこんな床に寝そべるのは勘弁だ。

 俺は浮きながら横になる。


 すると、それを見た騎士が声を荒げる。


「っ!? 貴様、魔術師か!?」


 お?

 魔術師だって?

 魔術師って今言ったよね?

 ということは、この世界は剣と魔法のファンタジーなんですね!?


 結局、エルフの見た目をした【森の民】が魔法を使えたのかは分からず終いだった。

 だが、この世界は魔術師なる職業が存在するようだ。

 ……まさか、錬金術師みたいな化学の担い手だったりするオチじゃないよな。


「……そう見えます?」


「この、馬鹿にしやがって! 今すぐ魔術を使うのを止めろ! さもないと手足を斬り落とすぞ!」


 おいおい、随分と穏やかじゃないね。

 どうせ【聖衣(せいい)】は斬れないだろうし、斬れたとしても、すぐに生えてくるけれどもね。


 ここはあまり刺激しない方がいいだろうか。

 俺は浮くのを止め、床に胡坐(あぐら)をかく。


「……それでいい。もしまた余計な真似をすれば、どうなるかは分かるな?」


「えぇ、大人しくしてますよ」


 しかし、魔術師ねぇ。

 それが一般的に知られているなら、一つ疑問が残る。

 風車に居たお爺さんだ。

 彼は俺が浮いている事に驚いていた。

 魔法が当たり前の世界なら、別段驚くべきことでは無い筈だ。

 それか、空を飛ぶことは、この世界の魔法では実現していないのかもしれない。

 それでも俺を魔術師かと問う訳でもなかったし、あまり一般には認知されていない存在なのだろうか。


 少し、期待値が下がった。

 もっとこう、魔法が普及している世界とかが良かった。

 あわよくば、俺も魔法を使ってみたいものだ。



 俺は睡眠のほとんどを妨害されてしまった所為か、何時の間にか寝入っていた。


 覚醒を果たすも、いつもに比べて、幾分眠気が残っている。

 やはり、探索パートが、俺に必要な睡眠量を損なってしまったらしい。


「……貴様、やっと起きたのか」


 そこに、随分と疲れた感じの声が掛けられた。

 見れば、鉄格子越しの騎士は、俺よりも眠そうにしていた。

 あのまま寝ずの番をしていたのだろうか。

 ご苦労な事だ。


「お疲れ!」


「五月蠅い! 黙ってろ!」


 (ねぎら)ったら怒られた。

 ちゃんと寝ないからイラつくんだよ、君。


 そうやって見張りの騎士をイジっていると、靴音が響いてきた。


 やって来る者の姿を視認したらしい見張りの騎士は、そちらに向かい敬礼をした。


「ご足労いただき、申し訳ありません」


「構わん。そこに居るのがそうか?」


「ハッ、そうであります」


 そう言って、鉄格子の前にやって来たのは、二人だった。

 一人は精悍な騎士、もう一人は偏屈そうな老人だった。


「……どうだ?」


「……いや、違うな。微塵も感じられん」


「……浮いていたとの報告があったのだがな……、おい、本当にこいつで間違いないのか?」


「ハッ、自分が発見し拘束致しました。報告したのも自分であります。間違いありません」


「……らしいが? お前が見誤っているのではないのか?」


「儂を誰じゃと思うておる、そんな訳がなかろう。こやつは間違いなく魔術師ではない」


「フン。魔術師などと、そもそもが胡散臭い話だがな」


「……それは儂に向かって言うとるんか?」


「そう聞こえたのなら、そうなのだろうさ」


 うわ、何か勝手に仲間割れしてるんだが。

 会話の内容から察するに、騎士は魔術師に懐疑的で、老人の方が魔術師らしい。


 魔術師の存在が希少なのか、魔術師の評判が低いのか。

 騎士の態度があまりに硬質だ。

 この世界では魔術師は歓迎されていないのだろうか。


「魔術師でないなら、先の報告はどう説明するつもりだ?」


「……大方、その見慣れぬ服装に、仕掛けがあるのではないのか?」


「……確かに、見慣れぬ服装ではある。だが、服だけで魔術師よりも優れた力を発揮してみせたというのか? それは、逆説的に言って、魔術師の株を下げておるのではないか?」


「今出来ぬからと、将来もそうとは限らんわ。それに、服が特別だというならば、量産が可能だと考えんか、このたわけが!」


「む……、成程、量産か」


「そうじゃ。今、儂らに足らんのは戦力差を補えるだけの力じゃて」


「そういう意味では、良い掘り出し物だったのやもしれんな」


「まぁそう急くな。あくまで推論に過ぎん。それを確かめんとな」


「そうだな。……おい、牢を開けろ」


「ハッ、直ちに」


 牢が開かれる。


 精悍な騎士が老人を背に庇う形で牢の中へと入って来た。


「今、ここで飛んで見せろ。それ以外の行動をとれば、この場で即、叩き斬る」


「…………」


 動物園の動物達はこんな気分だったのだろうか。

 いや、言葉が理解出来ない分、これよりも酷かったのかもしれない。


 だが、見張りは牢の外に居るとはいえ、この二人は牢の中に入っている。

 ならば、こうしてやればいい。


≪転移≫


 牢の外側へ【転移】し、見張りを牢の中へ蹴り入れる。

 そして、素早く牢を閉めた。


「っ!? 何が起きた!? くそっ、貴様ぁ!!」


「何と! 場所を瞬時に移動してみせたのか!?」


 ご丁寧に鍵は刺さったままだったので、鍵を閉めたうえで、鍵を刺した状態で鍵を蹴り折っておいた。

 これで簡単には出られまい。


 あの屋敷の主人がこの建物に来ていた筈だ。

 とはいえ、流石に時間が経っているから見つけるのは難しいだろう。

 この辺りが潮時か。


 どうにも、この連中は俺を、というより俺の装備を狙っているらしい。

【聖衣】は取られる心配はないが、【リング】が取られると不味い。

 彼らの俺に対する敵対心が爆上がりなのは間違いないが、このまま大人しく従っていても、俺に益はないだろう。

 であれば、さっさとこの場を離れるとしよう。


≪転移≫


 俺は、馬車を助けた街道へと【転移】していた。


 あまり収穫があったとは言えないな。

 分かった事と言えば、魔術師の存在と、さっきの国が何らかの理由で戦力増強を図っているという事ぐらいか。

 結局、あの屋敷と主人についても分からないままだ。


 今後の方針としては、どうしたものか。

 まずは、他の街へと移動するべきだろうか。

 さっきの国は、指名手配されているかもしれないしな。


 ひとまずは、この街道を、さっきの街とは逆方向に向かってみるとしよう。




 俺は、鳥と見間違えられるぐらいの高度を保ちつつ、街道に沿って空を進む。

 辺りは金色から緑色へと移り変わってゆく。

 徐々に穀倉地帯から草原が広がる景色へと変わってきたのだ。


 街道には、騎乗した騎士が見える。

 巡回だろうか、一定間隔で何名かで行っているようだ。


 草原の中でも、騎乗した騎士達の姿が見受けられた。

 こちらは演習中なのか、二組に分かれて訓練している様子だ。


 随分と騎馬が多い。

 この街道の先は、意表を突かれなければ、騎馬が主体の街なのだろう。


 流石に高度を取っている為、俺が見咎められることは無い。

 後は、街の近辺で歩きに切り替えればいいだろう。

 もう投獄されるのは懲り懲りだ。



 見えて来たのは城と城下街だった。

 随分と近い場所に別の城が建っているものだ。

 空を飛んで来たとはいえ、まだ日も陰っていない。

 さっきの街と同じ国なのか、それとも隣国なのか。


 俺は移動を歩きに変えて、街へと入る。

 街中でも、道中に散見していた騎乗した騎士の姿が見受けられた。

 どうやら、馬も騎士も豊富にあるようだ。


 俺の全身真っ白な恰好が物珍しいのか、街の住人や巡回中の騎士の視線を感じたが、拘束されることはなかった。

 まぁ、見慣れないってだけで捕まえたりは普通しないわな。


 とりあえず、情報収集をするべきか。

 目に入った果物の露店のおばさんに話しかける。


「いらっしゃい。おや、見かけない顔だね」


「えぇ、さっき街に着いたばかりでして」


「そうかいそうかい。街に着いてすぐに私の店に寄ってくれるなんて、ありがたいねぇ」

「それで、何にするかね?」


「あー、ではそこの果物を一つ下さい」


「あいよ、お代は――」


 俺は懐を探る。

 しかし、何もなかった。


 盗賊達の金を懐に入れておいた筈。

 それが無い。

 どういうことか、と、思い当たる節は一つ、投獄された際に没収されてしまったのだろう。

【リング】が無事だったのが、せめてもの救いか。


「……すみません、路銀を何処かに落としてしまったみたいでして」


「おやまぁ、そりゃ災難だったね。でも、それじゃあ、これからどうするんだい?」


「実は、田舎から出て来たばかりでして。この国の事とかいろいろ知りたいなと思って街まで出て来たんです」

「この店に寄らせてもたったのも、お話を伺いたかったからなんですが」


「はぁー、そりゃ勉強熱心なことだねぇ。まぁ、他に客も居ないし、話すだけならタダだ。おばさんの知ってる事で良けりゃ、話したげるよ」


「ありがとうございます。助かります」


 気のいいおばさんの親切心にあやかり、俺はこの世界についていろいろ聞いてみた。

 俺のあまりの常識の無さに、半ば呆れられつつも、話してくれた。



 この世界には、三国が存在しており、先程までいた穀倉地帯の国、今いる草原の国、そして鉱山の国だそうだ。

 軍事力の順でいうと、鉱山の国、草原の国、穀倉地帯の国、とのことだ。

 今いる国は騎馬と騎士が多く居るが、鉱山の国は、その鉱山資源を利用した兵器が数多くあるらしく、その影響で一番戦力が高いらしい。

 その鉱山の国は女王を、他の二国は王を国主としているそうだ。

 因みに、この国の王様は若いイケメンとの事だった。

 本当に、どこの世界でもおばさんはそういう類の話が好きなんだと痛感した。


 俺は話に出てこなかった魔術師について聞いてみたが、おばさん曰く聞いた事もないらしい。

 どうやら、魔術師は常識の範疇外の存在のようだ。

 もしかしたら、あの穀倉地帯の国のごく一部でしか認知されていないのかもしれない。


 最後に、ここ最近で何か変わった事が起きていないか訊ねてみた。

 が、特に思い当たることはないそうだ。


 まだ【強欲】に繋がる手掛かりは掴めない。

 念の為、もう一つの国にも行ってみて、異変が無いか確認してみるとしよう。


 俺は、おばさんにお礼を言い、その場を後にした。


 もしかしたら、国王とかなら異変について心当たりでもあるかもしれないが、アポも伝手も無いこの状況では会うのは難しいだろう。

 下手に聞きまわって、また投獄でもされるのも勘弁願いたい。

 そんな、複数の地域で騒動や脱獄でお尋ね者になんかには成りたくない。

 この国でも騒動に巻き込まれてしまう前に、出立するとしよう。



 俺は、鉱山の国を目指し、空を行く。






中々話が進まない感じで申し訳無い。

次ぐらいから話が進むといいなーとか、頑張ってみます。


ちなみに、サブタイは虜囚の件の皮肉です。


21/07/14 脱字修正


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただき有難うございます!

『勇者は転職して魔王になりました』
連載中です!

気に入ってくれた方はブックマーク評価感想をいただけると嬉しいです

小説家になろう 勝手にランキング

ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ