表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
救世主は救わない  作者: nauji
第二章
36/60

第26話 探索

この作品はフィクションです。


重要語句は【】、能力使用時は≪≫で記載しております。

 結局、心の中で文句を言いつつも、馬車に同乗し、ついて行くことにした。


 お礼として、食事と寝床を与えてくれると言う話だったからだ。

 これで不審者として捕まる事も無いと信じたい。

 まさか、このまま騙されていて収監されるとかは勘弁して欲しい。


 見るからに人目を忍ぶような、怪しい馬車と、顔を仮面で隠している御者(ぎょしゃ)とその主人。

 抵抗が無い訳ではなかったが、折角発生したイベントだし、これで何かしらのフラグでも立つことだろう。

 そんなゲーム脳で方針を決定した。



 馬車は街道を進み、程なく街へと到着したようだ。

 馬車に掛かる覆いの所為で、外の様子は伺えないが、街の奥の方まで進んでいるようだった。


 (しばら)くして、馬車が停車した。

 御者が扉を開いてくれる。


 この馬車の主人が降りるのに続いて、俺も降りる。

 そこは、所謂(いわゆる)馬屋(うまや)といわれる馬を休める場所のようだった。


 馬車の片づけを行う御者の代わりに、使用人らしき青年が出迎えに来ていた。


「お帰りなさいませ、旦那様」


「あぁ、客人を連れて来た。食事と部屋を用意してくれ」

「私の恩人だ。くれぐれも粗相のないようにな」


「はい、(かしこ)まりました。それでは、お客様を客間へとご案内致します」


「あぁ、頼む」

「それでは、私はひとまずここで失礼します。貴方は存分に(くつろ)いでいって下さい」


「えぇ、お言葉に甘えさせていただきます。それでは」


 そう言って、主人とは別れた。

 残された俺を、使用人が案内してくれる。


「それではご案内致します。どうぞこちらへ」


「はい、お願いします」


 やはりと言うべきか、先程の馬車の中に居た人は、身分の高い人物のようだ。

 屋内の様子や調度品などが、明らかに一般的な物とは格が違う。


 それ故に、お忍びで何処かに出かけていたのは、人目をはばかるような事だったということか。

 帰りに遭遇したのではなく、主人の目的地で遭遇していた場合、この展開にはならなかったように思える。

 大方、貴族の良からぬ趣味というやつなのだろう。

 深入りすると、藪蛇になりかねない。

 今は、食事と寝床にありつこう。



 案内された室内もやはり豪華だった。

 とはいえ、(きら)びやかという訳では無い。

 ただ、高級ホテルの紹介映像とかで見たような、独特の雰囲気があった。


 (しわ)一つ無いシーツとか、使うのも躊躇(ためら)われる程に、整った室内。

 何とも、緊張して落ち着かない感覚だ。

 所詮(しょせん)、俺は庶民といったところか。


 食事はわざわざ部屋に持ってきてくれた。

 この世界の食事がどういった形式かは不明だが、フランス料理のフルコースが出てくるといったことはなく、パンとスープに、高そうな肉と野菜が一緒に出された。


 マナーとかも分からないし、会食という訳でもない。

 特に片意地はらず、好きに食べさせてもらった。


「お風呂はいかがなさいますか?」


「あ、じゃあ入りたいです」


「畏まりました。それではご案内致します」


 再び部屋を出て、案内につき従ってゆく。


「こちらのお部屋が、浴室となっております」


「ありがとうございます」


「私はここで待機しておりますので、お帰りの際、またお部屋までご案内させていただきます」


「すみません、助かります」


 それは正直ありがたい。

 初見で大きな屋敷、しかも、似たような造りの部屋が並んでいるのだ。

 迷うなと言う方が無理だろう。


「いえ、お気になさらないで下さい」

「ご入浴中に、お召し物はこちらで洗濯させていただきますので、室内のお召し物を代わりにお使い下さい」


「あー、すみません。それは遠慮させて下さい」


「……これは、失礼致しました。それでは、お召し物はそのままということでよろしいでしょうか?」


「はい、お願いします」


 まぁ、洗うも何も、【聖衣(せいい)】は解除すると消えてしまうのだが。


「それでは、ごゆっくりとお寛ぎ下さい」


「はい、それではまた後で」


 そう言って、俺は風呂を堪能した。



 風呂から上がり、また部屋へと戻って来た。

【聖衣】を解除することなく、着衣のままベッドへ倒れ込む。

 シーツに皺が入る事に、若干引け目があったが、ベッドの吸引力には逆らえなかった。


 ベッドに身を預け、暫し考える。

 現状、この世界の異変は見受けられない。

 それどころか、この世界について、まだ何も知らないに等しい。

 街には入れたみたいだが、この屋敷が街の何処に建っているかも分からない。


 流石に、この屋敷に居座る訳にもいかないし、明日は宿を探さねばなるまい。

 盗賊達の金で足りれば良いが、足りなければ、また、何か金策を講じなければ。

 あの盗賊達は捕縛もしていないし、また、街道に現れてくれれば楽なんだが。


 ともかく、明日は情報収集と宿探しをするとしよう。

 俺はそこで考えるのを止め、眠りについた。






 腹に衝撃。


 流石にびっくりした。

 例え、何か起こるだろうと予想していたとはいえ、だ。

 流石に、今回は全裸で寝ずに【聖衣】を着ていて正解だった。


 目を開けると、案内してくれていた青年がベット脇に居た。

 その手に先程、俺の腹を刺したであろうナイフを握って。


 お忍びの種類にもよるとは思ったが、予想よりもバレると不味い類のものだったらしい。

 目撃者を口封じするつもりで、屋敷へと招いたようだ。


 襲撃者は驚きの表情を浮かべている。

 俺にナイフが刺さらなかった事が、余程予想外だったのだろうか。

 これまで被害者が居るのか居ないのか不明だが、あまり手慣れてはいない様子だ。


 窓の外を確認すると、まだ朝焼けも迎えてはいない。

 こんな時間から活動を開始しなければならない事に憂鬱(ゆううつ)になる。

 俺は昼まで寝る体質なんですが……。


 俺は、驚愕(きょうがく)に固まったままの襲撃者、もとい、使用人を余所(よそ)に、窓辺へと近寄る。

 窓を開け放ち、身を乗り出す。


「じゃあ、お世話になりました」


 そう捨て台詞を吐いて、窓の外へと身を(おど)らせる。

 己の姿が窓からは見えなくなった位置で【転移(てんい)】を行う。


≪転移≫


 俺は屋敷内の浴室に姿を現していた。


 流石に、成功しなかったとはいえ、暗殺までされたのだ。

 これからも一方的に付け狙われたのではたまったものではない。

 相手の弱みを握っておくべきだろう。

 差し当たっては、この屋敷の主人が夜に何をしに出掛けていたのか、だ。


 街道で見た限りでは、どこから来たのかは何となくしか分からない。

 それこそ、途中で街道から()れていれば、元を辿る事も出来はしまい。

 当然、目的地を知っているのは、主人と御者だ。

 ならば、御者の身柄を押さえよう。


 ……ラッキースケベには恵まれなかったか。

 無人の浴室内を見渡し、そんな事を思った。



 室外に耳を澄ませば、俺の逃亡を知らせたのか、慌ただしい様子が伝わって来る。

 こういう時は、透明化とか出来るとありがたいのだが。

 十二分に便利な【リング】にも、そんな機能は備わっていない。

 こんなズブの素人がスニーキングミッションとか、無理ゲー過ぎるんですが。

 俺はアクションゲームは苦手なのだ。

 もっぱらRPG専門、リアルタイムな操作を要求されるものとか、特に苦手だ。

 しかも、それをリアルにやらねばならないとか、人生何が起こるか分からんね。


 暫く浴室内で待機していると、室外の様子が落ち着いてきた。

 ……そろそろ行きますか。


 俺がこの屋敷内でイメージ出来るのは、今のところ、馬屋、浴室、客間の三つだ。

 後は廊下とかもいけるかもしれないが、どこに行けばいいか分からないだろう。


 さて、使用人とかは、普通どこの部屋になるんだろうか。

 俺が案内された客間は、二階だった。

 まさか、同じ二階には割り当てないだろう。

 となれば、一階か、もしくは地下か。


 一階は、浴室もあるし、共用スペースが多いのかもしれない。

 第一候補は地下だろうか。

 まぁ、この屋敷に地下があるかは知らないが。

 後は、隣接した別の使用人用の家屋が用意されている場合か。

 ひとまずは、この屋敷を探索して、その後でそちらの可能性をあたるとしよう。



 一階の廊下に人の気配は無い。

 この世界の常識とかは分からないが、一階の廊下の明かりは保たれたままだ。

 夜に消す習慣が無いのか、身分的なもので贅沢の一種なのか。

 まぁ、暗がりで探すよりは楽だと考えよう。

 見つかる可能性も高まるが、どうせ捕まらないし。

 これはワンサイドゲームなのだ!


 一旦、各部屋の物色は控えて、大人しく地下への入口を探す。

 広い空間、エントランスに出た。

 ここも無人だ。


 二階に上がる階段が、左右に弧を描くように備え付けられている。

 一番ありそうなのは、ここなんだが。

 一見しただけでは、見当たらない。

 もっとも、地下があるとは限らないのだが。


 エントランスでは何も見つけられず、一階の反対側の廊下へと向かう。

 この屋敷はエントランスを中央に構え、左右対称の造りをしているようだ。

 似たような廊下を進んでゆくが、廊下にもそれらしき場所は見当たらない。


 こうなったら各部屋を虱潰(しらみつぶ)しに当たるべきか。


 と、そういえば、馬屋で別れた主人は、俺達とは違う扉を使用していた。

 あの扉の先はどこに繋がっていたのだろうか。


≪転移≫


 馬屋に来てみた。

 主人の使用していた扉を見つける。


 流石に、主人の部屋に直通はしていない筈だ。

 だが、そもそもこの扉の位置はおかしい。

 屋敷の方向とは異なっている。

 では、一体どこに繋がっているのか。


 扉に手を掛ける。

 鍵は……掛かっていない。

 扉を慎重に開けてみる。


 真っ暗闇。


 俺は身を横に避け、馬屋の明かりで中を見ようとする。

 そこは室内ではなかった。

 下り階段だ。


 屋敷の主人が地下に直接行く要件とは?

 これは御者を探すまでもなく、何か見つけられそうだ。

 俺は階段へと踏み出し、扉を内側から閉める。

 そして、暫しその場で暗闇に目が慣れるのを待つ。


 うっすらと周囲を確認出来るようになったのを確認し、階段を下りてゆく。


 狭い。

 人一人通るのが限界といった細さ。


 そして、結構長い。

 これは一階層分どころではない深さのようだ。


 果ての見通せぬ階段を慎重に下りてゆく。

 ここの空気は埃っぽくは無いし、カビ臭くも無い。

 つまり、空気を定期的に入れ替えているのか、余程、使用頻度が高いのか。


 ようやく階段の一番下に辿り着いた。

 ここからは通路になっているようだ。

 地下室ではない。

 どこか別の場所に繋がっているのか。


 どこぞの屋敷の地下に謎の研究施設があって、みたいなのは勘弁願いたい。

 ゾンビとかは嫌だ。

 中世にゾンビってあっただろうか。

 そもそも文化圏というか、違う地域だったように思う。


 そんな取り留めもない事を考えながらも、歩を進めて行く。

 分岐も無い、一本道。


 こうなってくると、ここから出た場所こそが問題になりそうだ。

 ここまで遠くに地下室という訳もあるまい。

 何処か別の場所への通路だと考えるべきだろう。


 屋敷の馬屋から伸びる地下通路。

 金持ちの道楽にしては手が込み過ぎている気がする。


 屋敷を建ててから通路が造られたのか、あるいは、この通路の先に屋敷を造ったのか。

 前者ならば、目的地はこの通路の先にある筈だが、後者ならば、屋敷こそが目的地になる。

 さて、何処に繋がっていることか。


 これまた暫く歩き続け、今度は上り階段につき当たった。

 行き先は地下では無く、地上な訳か。


 階段を上って行く。


 やはり、下りと同じ距離があったのだろう、随分かかったが、ようやく上り終えた。

 目の前には扉。

 外の様子は伺えない。

 耳をそばだててみるが、特に何も聞こえない。


 ここまで来て、外を確認しない訳にもいくまい。

 意を決して、しかし、慎重に扉を開けてゆく。


 そこは石造りの室内だった。

 だが、何もない。

 寝具も無く、調度品も無い。


 用途不明な一室だった。

 あるいは、この通路の為だけの部屋なのかもしれない。


 室内にはもう一つの扉があるのみ。

 さぁ、何処に繋がっている。


 俺は扉を開いた。






後半の展開は、作者がホラーゲーム実況を見ていた影響があるかもしれません。

書く間際まで見ていたので、影響されたかも。

まぁ、ホラー要素までは反映されませんでしたが。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただき有難うございます!

『勇者は転職して魔王になりました』
連載中です!

気に入ってくれた方はブックマーク評価感想をいただけると嬉しいです

小説家になろう 勝手にランキング

ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ