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救世主は救わない  作者: nauji
第二章
35/60

第25話 路銀

この作品はフィクションです。


重要語句は【】、能力使用時は≪≫で記載しております。

 天界に戻った俺の目に、在り得ないモノが映った。

 俺はその場で硬直する。


 硬直の原因が声を発する。


「……何? キミ、ちょっと感じ悪くない?」


 見間違いではなく、【色欲(しきよく)魔神(まじん)】がそこに居た。

 目新しいのは金色に光る首輪――【リング】ぐらいか。

 訳が分からない。


「何でここに……」


 思わず口から言葉が漏れ出る。

 それに対し、答えが返る。


「屈伏させました」


 一文だった。

 メイドさんはそれで説明を終了した。

 いやそんな、倒したら起き上がって仲間になるような展開、どこのドラゴンを倒すゲームなんだよ。


「……えっ!?」


「ごちゃごちゃ、ウルサイなぁー。キミ、黙らせたげよっか?」


「…………」


 今度は強制的に黙らされた。

 疑問も質問も俺には許されませんか?


「彼女は快く私達に協力してくれることになったのです」


 そこに女神が口添える。


「ココロヨク……ネェ……」


 そんな呟きも聞こえてきたが。


「……えぇっと、それって大丈夫なんですか? 色々と」


「出歩かなければ問題ありません」


「えっ? ボク出歩けないの?」


 本人がそもそも了承してないみたいだが。

 ともあれ、これで【魔神】が二体、この部屋には居る事になる訳か。

 そもそも、メイドさんにしても、【執行者(しっこうしゃ)】とかにどう認識されているのか、よく分からない。


 ……ホント、何を企んでいるのやら。

 そして、俺は何に巻き込まれているのか。



 なるべく少女には近づかないようにしつつ、【水晶球(すいしょうきゅう)】の元へ向かう。


 既にメイドさんが操作したのか、そこには中世を思わせる城や街並み、騎士といったものが映し出されていた。

 異世界の王道?とも言える中世ファンタジー世界だろうか。

【執行者】の漆黒の甲冑に比べれば、もっと汎用的で性能が低そうな騎士鎧が見て取れる。


「こちらは【強欲(ごうよく)】が潜む世界となります」


 メイドさんが補足してくれる。

 中世世界で【強欲】と言われ連想するのは、王族、貴族、聖職者辺りだろうか。

 もしくは盗賊とかも在り得るかもしれない。


 例によって、何が【大罪(たいざい)】保有者かは教えてくれないらしい。

 これで、【色欲】を含めると六つ目の【大罪】となる訳か。

 実は、俺に全ての【大罪】が備わっていた、とかいう展開ではないだろうな!?

 まぁ、これは無いわな。

 俺、弱いし。


「何々? どっか行く感じぃ? ボクも行く行く!」


「駄目です。ステイ、ハウス」


「……ちぇっ」


 いや、そんな犬みたいな扱いなの?

 でもまぁ、来て貰っても困るけどね。

 俺では止められないんだし。


 でも、そろそろヒロインというか、紅一点みたいなの居ても良いんですよ?

 俺も、潤いのある人生を送ってみたいというか。

 俺の命を脅かさない感じの存在で一つ。


 そんな益体も無い事を考えながら、【転移(てんい)】先をイメージする。


 またどうせ、何か厄介毎に巻き込まれるんだろうけどな。



≪転移≫



 諦念を携え、また新たな異世界へと辿り着く。


 しかし、出現した先は、城でも町並みでもなく、森だった。


 あれ?

 こんな場所、イメージしてないんだけどな。

 また、【色欲】の時みたいに、別の世界とかじゃなかろうな。


 木々の間からは、城も町並みも見えない。

 これではどこに行けばいいかも分からない。

 ひとまずは、空から探すことにしよう。


 森を上へと抜けると、周辺を見回してみる。

 随分、緑豊かな景色だ。

 近場で人工的なものは、畑が見て取れた。

 そちらに向かってみる。


 穀倉地帯というのか、ここら辺は先程までとは違い、小麦のような植物で金色の景観を作っている。


 恐らくは近場に農家があると思うのだが。

 高度を上げつつ、捜索する。

 すると、川沿いに建つ風車が見えてきた。

 流石に、風車に人は住んでいないとは思うが、とりあえず、風車へと向かってみる。


 風車の周辺を見回してみるが、やはり、誰の姿も見えない。



「あんた、どうやって浮いとるんだ!?」


 突然、人の声がした。

 辺りを見回すが、声の主を見つけられない。


 風車の周りには、やはり、誰も見当たらない。


「どこ見とる、こっちじゃ、こっち」


 果たして、声の主は風車の中に居た。

 風車の窓からこちらに声を掛けていたのだ。


 それにしても、また爺さんか。

 そこは村娘とかでも良くない?


「あぁ、どうも。つかぬ事をお聞きしますが、最寄りの大きな街はどちらの方向でしょうか?」


 俺は、内心の不満はおくびにも出さず尋ねる。


「いやいや、あんた、得体の知れない相手に話してやることなんてないぞ」


「んー」


 何か、相手するのも面倒臭くなってきた。

 これが村娘相手だったら、話は違っていたんだろうが。


「じゃあ、自分で探します」


 そう言って、その場を後にする。


「あ? いや、待て。分かった分かった。教えてやるわい」


「…………」


 引き留められた。


 既に気持ちは離れてしまっているのだが、無駄な労力は省くか。

 大人しく、お爺さんへと近寄っていく。


「……ほんとに浮いとるんじゃな」


「えぇまぁ、そうですね。それで方向は?」


「せっかちだな、あんた。……まぁえぇ、ほれ、この川の上流に向かえば見えてくるて」


「成程、わざわざありがとうございました。それでは失礼します」


「あぁ、精々捕まらんようにな!」


 そう言われ、気が付く。

 確かに、このまま街まで飛んでいけば、また不審者だ何だと捕まるのがオチだろう。

 となると、程よい距離で歩きに変えた方がいいだろう。


 いやー、お爺さんの話を聞いておくのも大事だね!



 暫く、川に沿って上流へと飛んでゆく。

 気が付けば、日も傾いてきていた。


 当然の如く、金の持ち合わせなんて無い。

 これは、寝る場所も、食事も期待出来そうに無いか。


 都合良く、俺が倒せる程度の盗賊とか居たりしないだろうか。

 或いは、俺が倒せる程度のお金を落とすモンスターでもいい。


 俺は、街を探すのを止め、お金を探し始めた。



 さて、そんなに都合のいい話がある筈がない。

 既に、日も落ちてしまっていた。


 平和か!


 思わずそうツッコミを入れたくなる程に、騒動も、魔物も見当たらなかった。


 既に目印となる川からは随分と離れてしまっていた。

 だが、代わりに、街道を見つけていた。


 いや、都合よく荷馬車が襲われたりしないかな、とか、ね。


 だがそこに、一台の馬車が走って来るのが見えた。


 何か、見るからに怪しい。

 扉や窓には覆いが掛けられており、御者も顔を隠すように顔を半分覆う仮面を着けている。


 流石に、怪しいからといって、襲撃する訳にもいかない。

 見るともなしに、その馬車を目で追っていく。

 すると、今度は待っていた光景が訪れた。


 盗賊だ。

 何か決まりでもあるのか、一見しただけで盗賊と分かる風貌をしている。


 誤解を招かないならば、別に好きにしたらいいが。

 ともあれ、後は、盗賊が俺よりも弱い事に期待したい。

 もっとも、【聖衣(せいい)】があれば、負ける事だけは無いだろうが。


 馬車の行く手を遮り、盗賊達が囲んでゆく。


 そのすぐ上空に俺は移動する。

 そして、念の為、確認もしておく。


「一応、確認はしておくけど、あなた方は盗賊で間違いないんだよね?」


「「「あぁん!?」」」


 異口同音に言葉が発せられる。

 盗賊と見られる集団は、声の主を探して、周囲を見回している。


 俺はサクッと【転移】でその内の一人を掴み上げ、そのまま上空へ。


「な、なんだ!? 誰だてめぇ!!」


 ジタバタ暴れる体を、適度な高さに到達した後に、離す。


「ぐはっ!」


 よしよし、死んではいない。


 俺が殴っても大して痛くもないだろうが、これならば通用する。

 フフフッ、君達は重力を敵に回してしまったのだよ。


 暗くなり、眠たくなってきたのか、何か良く分からないテンションになってきた。

 その間にも、次々と同じ手口で撃退してゆく。


 左程の時間もかけず、一掃し終える事が出来た。

 辺りが暗かったのも功を奏したのだろう。

 明るかったら、もっと抵抗を受けていたと思う。


 さて、ゲームとは違い、自ら懐を漁らなければならないのか。

 俺は渋々、盗賊達の服や荷物を漁っていく。


 すると、目当ての物を無事見つける事が出来た。

 これまた何処かで見た事のある布袋に硬貨が包まれていた。

 重量は大した事無いが、なにせ、俺は無一文なのだ。

 俺よりも盗賊達の方が、余程金持ちという皮肉。


 目的を達成し、改めて街へと向かおうとする。


 そこに声が掛けられた。


「もし、そこの御仁。何処の何方かは存じあげませんが、助けていただきありがとう御座います」


 声を掛けて来たのは、御者だった。


「つきましては、我が主が、貴方に礼を申し上げたいと仰っておりまして、どうか来てはいだだけませんでしょうか」


 ほほぅ、お礼ですか。

 俺の目的は盗賊達の持ち金だったのだが、結果的に助けた形になる馬車の人物からもお礼を貰って損は無い。


 俺は促されるまま、馬車へと近づいた。


 そこで、ふと思い至る。

 これは、助けた相手がヒロインのパターンでは!?

 思いがけず、一石三鳥ぐらいのハイリターンだったか!


 俺の思惑を余所に、御者が馬車の扉を開ける。


「貴殿が私の救い主か。まずは感謝を。お蔭で助かりました」

「失礼でなければ、此度の礼をさせていただきたい。御同乗願えまいか?」


 現れたのは、こちらもやはり顔の上半分を仮面で覆い、身なりの整ったオジサンだった。




 またオッサンじゃねぇかよ!!

 俺は心の中で叫んだ。






主人公、こんなキャラだったかなぁー、とか思いつつ書いてます。

面白ければそれでいい。


あと、この世界の話は他よりも長くなりそうです。


21/07/12 誤字修正


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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