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救世主は救わない  作者: nauji
第二章
32/60

インタールード B-2

この作品はフィクションです。


重要語句は【】、能力使用時は≪≫で記載しております。

 二人が【転移(てんい)】した先は、以前【色欲(しきよく)】が居た、巨人の神殿だった。


 私は少女の手を離し、距離を取る。

 すぐさま【色欲の魔神(まじん)】の少女の蹴りが空を切った。


「ハッ、おあつらえ向きに、この場所を選んだ訳か! いいぜ、今度こそ殺してやる!」


 少女は喜悦の表情を浮かべている。

 それに対する私は、さて、どうしたものでしょうか。


 本気を出せば、少女を殺すのは容易い。

 ですが、それでは私達の目的からは遠のいてしまいます。

 もう随分長い事、待っているのです。


 前回は【救世主(きゅうせいしゅ)】の保護を優先させましたが、今回はこちらを優先出来ます。

 この機をみすみす逃し、次の機会を待つのは、流石に骨が折れます。

 何とか、この少女を殺さずに屈伏させなくてはなりません。


 本気を出して、力量差を思い知らしめることで、少女が屈伏するでしょうか?


 いえ、恐らく、本気を出せば、【水晶球(すいしょうきゅう)】に私の【憤怒(ふんど)】が検知されてしまう事でしょう。

 まだ、今は、時期尚早に過ぎますか。

 事を構えるのは、少女を引き入れ、彼の成果を確かめてから、が妥当ですね。


 私は、方針を決定する。




「もういいよな? もう待ちきれない、もう待てない、もう殺す!!!」


 そう叫ぶやいなや、少女が正面から殴りかかって来る。

 私は軽くバックステップすることで、それを躱す。


 ……よりも早く、少女の拳が迫り来る。

 予想よりも、少女が早い。

 下がり続けながらも、迫る拳を手で払いのける。

 一度、二度、三度、連続して、途切れない。


 下がるのを止め、足を踏みしめる。

 拳を左右に払いのけ、両の掌底で空いた少女の胸を突く。


 少女が吹き飛ばされて…………いなかった。


 少女もまた、足を踏ん張って、衝撃に耐えてみせた。

 距離は開かず、至近。

 左右に流された両手は使わず、上体を前傾に戻す勢いのままに、頭突きを見舞ってくる。


 手を相手の顎に添え、下半身を落とす。

 相手の懐に潜り込むように縮めた身を反転させ、片膝をつき、顎を支点として背負い投げる。


 今度こそ、少女は投げ飛ばされた。


 が、衝突はせず、両足で着地してみせた。

 その地面が踏み砕かれる。


 凄まじい勢いで飛び上がる。

 と見せかけて、地面に這うようにこちらへと迫る。


 一瞬で足元まで接近し、胴体に向けて貫き手を放ってくる。

 それを半身で躱し、顔に掌底を叩き込む。


 少女の首があらぬ方向へと曲がる。

 構わず、腕を振り抜いた。


 少女の体が、顔を支点としたバク宙をするような状態になる。

 そこに、腕を振り抜いた力を利用して体を回転させ、後ろ回し蹴りを叩きこむ。


 少女の体がくの字に曲がり吹き飛ばされた。

 壁面へと衝突する。


 少女が再起する前に接近を果たす。

 突き出した足を力強く地面へと踏み込み、正拳突きを叩きこむ。


 激震。


 少女が壁に深くめり込む。


 更に足を踏み込み、正拳突きを叩きこむ。

 踏み込み、叩く、踏み込み、叩く、踏み込み、叩く、踏み込み、叩く。


 と、そこで、ふと我に返った。

 殴る事に没頭してしまっていた。


 その場から飛び退き、少女の様子を窺う。

 だが、壁にめり込み過ぎて、姿は見えない。


 倒すことが目的ではない。

 相手の牙をへし折り、膝をつかせ、自身の敗北を認めさせる必要がある。


 故に、出来るだけ相手に攻撃をさせ、それを全て捌き、いなし、躱し、反撃を叩きこむ。

 相手の攻撃は通用しないのだと、力の差を認識させる。



 少女の埋もれた箇所から、周囲の壁へと亀裂が走る。

 直後、壁が破砕した。


 そこに少女の姿は…………無い。


 背後に気配。

 咄嗟に攻撃しそうになるが、ここは堪えて、相手の攻撃に備える。



溺惑(できわく)



 少女の気配が変わる。

 悪寒に従い、全力で回避を行う。


 その場を飛び退いた直後、地面が爆ぜた。

 大量の土砂が宙に吐き出される。

 一瞬、視界が奪われた。


 隣から殺気。


 回避より防御を選択。

 両腕を盾に、攻撃に備える。


 構えたのとは反対側、背後から攻撃が繰り出された。

 恐らく殴られたであろう衝撃に対し、あえて逆らわず、押された側へと身を投げる。


 地面に片手をついて宙で姿勢を正し、少女の居る方向へと向き直る。


 背後に殺気。


 こちらの想定を上回る速度。

 今度は迎撃を選択。

 背後へ足を振り抜く。


 すると、その足を掴まれ、投げ飛ばされた。


 (ひるがえ)るスカートを押さえつつ、少女の居場所を捉えようと視線を周囲へと這わす。


 地面に辿り着く前に、その地面から殺気。


 今度は相手の攻撃を視認してからの迎撃を狙う。

 下方に目をやり、相手の攻撃を見逃さぬように目を凝らず。


 少女の姿が掻き消える。

 遅れて、少女の立っていた地面が陥没する。


 顔面へと迫る貫き手を、しかし、当たる寸前で両手で掴み取る。

 今度は見失わず、捕まえてみせた。


 自身の落ちる勢いのままに、少女を掴んだまま地面へと落下する。

 地面に着く間際、少女を自身の下側へ移動させ、仰向けの状態で下敷きにする。

 そして、両足で体を踏み抜く。


 地面に激突。


 少女から飛びのき、着地。

 瞬間、少女が足元へと迫っていた。


 突き出される貫き手。

 それを手で払う。


 貫き手が連続する。

 それを連続して払いのける。


 隙をみて、相手の両手を自分の両手で掴む。

 体を引き寄せて、腹に膝を叩きこむ。

 浮きあがる体に、両手を離し、少女の顔面に拳を合わせる。


 振り抜く。


 地面を削りながら吹き飛ぶが、少女は四つん這いの姿勢を取り、四肢で衝撃を殺してゆく。

 少女がこちらに向かって駆け出す。

 姿が掻き消える。


 気配は……上。


 両腕を交差させ掲げる。

 そこに足が降って来た。

 かかと落としを両腕で受け止める。


 加えられた衝撃に対し、受け止めた足元の地面は沈まない。

 全身をバネに、衝撃を吸収し切る。

 その力を打ち消さず、そして、反転。

 今度は、吸収した衝撃を腕に、手に伝わらせる。

 少女の足を払いのけ、両の掌底を、先の衝撃を上乗せして放つ。


 少女が天井へと射出された。


 天井に叩きつけられるも、すぐに這い出してくる。

 天井から地面へと降りて来た。


 攻防は続く。






 どれ程の間、繰り返しただろうか。


 且つて、巨人の神殿だったこの場所は、最早、見る影も無い程に破壊されている。

 地面も壁も天井も、罅が入っていない箇所はなく、クレーターがいくつも出来上がっていた。


 私にダメージは無く、少女は満身創痍だ。

 少女の攻撃の(ことごと)くを(しの)いでみせ、そこに攻撃を加えていった。


 しかし、まだ少女の気勢は削がれていない。



 そろそろ、終幕といたしましょう。


【憤怒】は使用を控えたいが、【純潔(じゅんけつ)】ならば問題無い。


清浄(せいじょう)


 怪我はないものの、身体や服についた塵や埃を取り除く。


静謐(せいひつ)


 世を静かしめる。


≪純潔≫


 この身も世界も清く保たれた今、【純潔】が真価を発揮する。



 最早、少女は反応することも出来ない。

 こちらから一方的に攻撃を加えてゆく。


 拳による乱打で、少女の体が宙に張り付けになる。

 浮いた体を、拳で縫い留め続けている。

 吹き飛ばすことなく、ダメージを蓄積させてゆく。


 少女の反応が無くなった頃、拳に()る拘束を解いた。


 少女の体が地面に落ちる。

 動きはない。


 だが、死んではいない。


「……さて、これで理解出来ましたか?」


「…………」


 少女からの返答はない。


「貴方では、私には勝てません」


「…………」


 依然、返答はない。


「貴方も解っているとは思いますが、私は【憤怒】を使用していません」

「その私に、貴方は【色欲】を使用しても尚、敵わなかった……」


「…………っ!?」


 少女が反応を示す。


「貴方に問います。ここで死ぬか、私に従い生き延びるか」

「さぁ、どうしますか?」


 少女は長い沈黙の後、答えを出した。






21/07/09 誤字修正


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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『勇者は転職して魔王になりました』
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