第23話 憤怒
この作品はフィクションです。
重要語句は【】、能力使用時は≪≫で記載しております。
光が収まった後、館は跡形も無くなっていた。
それどころか、地面すら抉り取られていた。
その中心に居た筈の【鬼神】の姿は…………無い。
よもや、先の雷で消滅した訳ではあるまい。
俺は、ようやく風が収まった事で、その状況を確認する事が出来た。
位置的には、館を挟んで、集落とは反対側へと飛ばされてしまっていた。
すると、視界の奥の方で、落雷が起きた。
集落のある辺りだ。
≪転移≫
【転移】でその場へと急ぐ。
館に落ちた雷よりも威力が弱かったのか、被害はそれ程出てはいないようだ。
だが、被害が無い訳ではないのだ。
数軒規模で焼失している。
【鬼神】はその場には居なかった。
だが、すぐ近くに現れていた。
まるで、【鬼神】を狙うかのように、再び雷が落ちる。
光、次いで、轟音。
光が収まったその場には、焼失した家屋と、消失してしまった【鬼神】。
するとすぐに、【鬼神】が他の場所へ現れていた。
それを追う落雷。
焼失する家屋と、消失する【鬼神】。
一体、何が起こっているのか。
相も変わらず、理解が出来ぬままに、集落の破壊が続く。
理由は二の次にして、とにかく【鬼神】に接触して【転移】させなくては、このままでは集落全てが焼失してしまう。
また突然姿を現した【鬼神】の直近へと【転移】する。
≪転移≫
また落雷や姿を消される前に、【鬼神】へと接触を図る。
その直前、またも、突風に見舞われる。
やはり、この【鬼神】が雷と風を操っているのだろう。
【鬼神】の方へと加重をかけるも、風の抵抗が強く、近づけない。
≪転移≫
今度は反対側、且つ、すぐそばに【転移】し、【鬼神】に触れる。
この機を逃さず、すかさず【転移】…………は発動しなかった。
「っ!?」
思わず絶句する俺の元に雷が落ちた。
【聖衣】により耐えるも、視界が雷光により眩んでしまう。
眩む視界が戻る間に、今起きた出来事について考える。
【鬼神】もまた【神樹】と同様に、何かしらの方法で【転移】を阻害出来るらしい。
これでは俺に出来る【鬼神】の排除は叶わない。
「そなた、何故此処に! そこで何をしておる!?」
ようやく戻って来た視界に、お館様とそれに従う鬼達の姿を捉える。
その周囲は落雷により焼失している。
【鬼神】による被害は広がるばかりだ。
「【鬼神】が件の【憤怒】です! もう元の状態に戻ることはありません」
「何だと!? そなた【鬼神】様のお姿を勝手に……」
「……これは鬼族の問題だ。そなたは手を出すな! 良いな!」
「…………」
手を出したくても、もう打てる手立てが無い。
相も変わらずの無力感に、臍を噛む思いが去来する。
俺の返事を待たず、お館様は鬼達を引き連れて、【鬼神】の元へ向かい走り去る。
それを見送る俺は、その場を動かず【鬼神】の力を分析する。
今現在、判明している能力は四つ。
一つは、風を操る能力。
予備動作無しで行使可能。
一つは、雷を操る能力。
現状は、自身を目標として、直下へと落としている。
一つは、【転移】のような能力。
落雷直後、もしくは、直前に瞬間移動している様に見受けられる。
一つは、【転移】の無効。
効果範囲は不明だが、少なくとも、接触による【転移】は無効となる。
これらに加えて、まだ【憤怒】の力が未知数と言える。
【眷属】ならば、周囲に影響を及ぼさない筈だが、気になるのは天界での会話だ。
確か、反応が強い、とか言っていた。
それはつまり、【眷属】から【魔王】に成りかけているという事ではないだろうか。
だとすれば、ここからの展開は、【魔王】化を起点として更に悪化する事になるだろう。
ただ、光明が無い訳でもない。
【魔王】化する事により、【執行者】に察知される公算が高い。
そうすれば、【嫉妬】や【暴食】と同様に、確実に【鬼神】は消滅させられるだろう。
それにしても、あの無表情は一体何だというのだろうか。
怒りを抑えているのか、はたまた、怒りが膨大過ぎて、表現すら出来ないとでも言うのか。
同じ【憤怒】を持つ、メイドさんを思い出してみる。
そういえば、彼女も感情を表に出さない印象がある。
【大罪】は自動的に発動する力だった筈だ。
であれば、常にその力に苛まれている事になる。
怒りを抑え込んでいるからこその無表情なのかもしれない。
【鬼神】も同じだとすれば、あの姿は、嵐の前の静けさに過ぎないのか。
すぐそばを、何か巨大なモノが凄まじい勢いで通り過ぎて行った。
思わず、通り過ぎた方向へと振り返る。
そこにあったのは、地面にめり込んでいる、横倒しになった【鬼神】の姿だった。
状況が上手く飲み込めない。
【鬼神】が誰かに吹き飛ばされたとでも言うのだろうか。
一体誰に?
鬼達だろうか?
いや、彼らは【鬼神】への手出しを躊躇っていた。
その【鬼神】を吹き飛ばし、あまつさえ、周囲の家屋をも巻き込んでいる。
到底、そうとは思えない。
では、一体誰がこれを成し得るというのか。
答えは空から、声の形でもたらされた。
「なぁーんだ。【憤怒】の気配を【水晶眼】で探って来てみれば、全然違う奴じゃん」
それは少女の声だった。
それも聞き覚えのある声だ。
言葉は続けられる。
「……でもまぁ、同じ【憤怒】な訳だしぃ。憂さ晴らしには丁度いっかぁ」
声の主を、視線が捉える。
赤黒い髪、細身の体、赤いキャミソール、黒の長い手袋と靴下。
あの【色欲の魔神】がそこに居た。
少女の姿が掻き消え、次の瞬間には、【鬼神】へと蹴りが突き刺さっていた。
その衝撃に地面が沈んでゆく。
周囲の家屋が巻き込まれ、崩れてゆく。
蹴りは一度では終わらない。
続けざまに蹴りが放たれる。
その度に、地面が沈んでゆく。
遂には、亀裂からマグマが滲み出て来た。
倒壊した家屋に引火したのか、辺りに火災が広がってゆく。
少女が現れて、僅か数瞬で、最早【鬼神】は死に体だった。
俺が行動に移れずにいる間にも、【鬼神】は死へと誘われていく。
蹴るのに飽きたのか、少女は【鬼神】の巨体を片手で掴み上げると、水平に投げ放った。
クレーターと化していた地面の端にぶつかり、【鬼神】が錐揉みしながら、宙に舞い上がる。
そのすぐ傍に少女が現れ、大きく弧を描いた拳が【鬼神】に向かって振り抜かれた。
【鬼神】の着弾点に、また新たなクレーターが誕生する。
すぐさま少女が【鬼神】の上に現れ、拳の弾幕を浴びせる。
連続する打撃音。
それに呼応して伝わる衝撃と振動。
先程よりも早くマグマまで辿り着いたのか、【鬼神】を中心に、今度はマグマが噴き出した。
少女はそれを軽く飛びのき、避ける。
マグマに覆われてゆく【鬼神】。
やがて、その姿が完全に見えなくなってしまった。
改めて見ても、【魔神】の力は圧倒的だ。
以前は、メイドさんに終始押されていた【色欲の魔神】だが、流石に格下相手では力の差は歴然だった。
すると、何処からか見ていたのであろう、お館様を含む鬼達が現場へと駆け付けて来た。
【鬼神】がマグマに沈んだ様を見て、皆一様に顔色を変えている。
「貴様! ただではおかぬぞ!!!」
お館様が、少女に対し叫び声を上げる。
少女がそちらを見やる。
不味い、非常に不味い。
一瞬で肉片と化してしまう。
≪転移≫
俺は少女の前、お館様達を背にする形で【転移】した。
少女の目が俺を捉える。
「……あれぇ? キミ、見た事あるよねぇ?」
「どこでだっけぇ?」
これ程特徴的な人物もそうは居ないだろうと、無駄な自負すらあるのだが、すぐには思い出されていないようだ。
とはいえ、目論み通りに興味は俺へと逸れたようだ。
「うーん、どこだったっけ? キミ、知らない?」
「………………」
正直に答えたら、俺が殺されそうな気がしてならない。
今は、好きなだけ悩んでもらう方がいいだろうか。
俺は沈黙を返す。
「んんんー、絶対、見たことあるんだけどなぁー」
怖い。
処刑のカウントダウンを待つ身のように、生きた心地がしない。
だが、時間を稼げば、前回と同じく、メイドさんがやって来るかもしれない。
出来れば呼びに行きたいところだが、今、ここを後にすれば、鬼達が蹂躙されてしまうだろう。
【鬼神】がサンドバッグになっている内に、呼びに行ければ良かったのだが、思考が状況に追いつけなかったのが悔やまれる。
「あ! 思い出した! アイツが連れて行った奴じゃんか!」
と、その時、カウントダウンが終わってしまったようだ。
「キミ、アイツの居場所、知ってるよね? 何処? 何処なの? 言えよ! 早く早く早く!!!」
尻上がりに怒気が高まってゆく。
≪転移≫
俺は、最初にこの世界に降り立った場所へ【転移】した。
完全に俺がターゲットにされた以上、あの場を離れても大丈夫な筈だ。
ただ、咄嗟過ぎて、天界に向かうのを忘れていた。
「逃げるなんて酷いなぁー、でも今度は置いてかれないよぉ」
すぐ耳元で声がした。
不味い、と思う間もなく吹き飛ばされた。
背後から吹き飛ばされ、正面の岩場へと衝突する。
すぐさま追撃が俺を襲う。
片足を掴まれ、周囲に叩きつけられる。
何度も、何度も、何度も、何度も。
掴まれた状態で【転移】すれば、一緒に天界に連れて行けるだろうか。
だが、イメージする間もなく、頭が叩きつけられている。
徐々に、頭の中が真っ白になってゆく。
次いで、体が浮いた。
すぐに、地表へと叩きつけられる。
周囲にはクレーターや火災が起きているのが見える。
どうやら、この一瞬で集落まで飛ばされて来たらしい。
「ねぇねぇ、意地悪しないで教えてよぉー。アイツは何処にいるのさぁ」
「ボクの【水晶眼】で見つけられないんだよねぇー。アイツ、【憤怒】を隠してるみたいでさぁ」
やっぱり、メイドさんは【憤怒】を抑え込んでいるようだ。
理由までは分からないが。
「キミが答えてくれるまで、ボク、止めないよ?」
ゾッとする声色で、そう囁かれた。
背筋に氷柱が突き立ったような錯覚。
ガキン!
金属が打ち付けられた音が響いた。
少女の背後にお館様の姿が見える。
無謀にも、斬りかかったらしい。
少女は、そちらを見もせず、後ろへ足を払った。
瞬間、お館様の姿が掻き消える。
遠くで衝突音がした。
次いで、爆発したような音が響き渡る。
これは、お館様の場所からではない。
音の発信源に視線を向けると、黒い巨体の姿があった。
マグマに沈んだ筈の【鬼神】だ。
どうやら、死んではおらず、再起したらしい。
≪赫怒≫
【鬼神】が吼えた。
全身から赤黒いオーラが滲みだしている。
まるで、【神樹】が赤龍へと変じた様を彷彿とさせる。
あの時と異なるのは、体色は黒のままだというところか。
【鬼神】が仰向けの俺の直上の中空に現出する。
そのまま、俺ごと少女を潰すべく、拳を振り下ろされる。
潰されると思った瞬間、俺に馬乗りになっていた少女が片手を上げて受け止めていた。
しかし、【鬼神】の攻撃はまだ終わらない。
館を吹き飛ばした、極大の雷が、間を置かず落ちて来た。
空気が裂ける音、凄まじい閃光と衝撃。
然しもの少女も、雷までは相殺出来なかったのか、俺と共に直撃を受けていた。
俺は、炭化していた。
【聖衣】を突破されており、先程受けた落雷とは威力が段違いだった。
もしも、少女が俺の上で、雷のほとんどを受けてくれて居なければ、即死していただろう。
徐々に【聖衣】により復元されていく俺。
一方、少女はというと、受け止めていた拳ごと、【鬼神】の腕を引きちぎっていた。
少女に目立った外傷はない。
早くこの場を離脱しなければ、巻き添えで確実に死ぬ。
だが、あくまで標的は俺なのか、少女の足に俺の腹が踏み抜かれた。
貫通する。
遅れて痛みが伝わってくる。
「ギイィッ!?」
思わず口から声が漏れる。
片腕を失った【鬼神】が、今度は風で少女を襲う。
少女を抑えつけるように、全方位から暴風が壁となって襲いかかる。
次いで、巨大な足裏で踏み潰そうとする。
少女は無造作に体を動かしただけで、風の戒めを解く。
迫る足裏に、しかし、少女は動かない。
≪眩惑≫
瞬間、【鬼神】動きが明らかに鈍る。
少女が片足を俺の腹から引き抜き、代わりというように片手で俺の頭を掴む。
軽く跳躍し、【鬼神】の頭へ回し蹴りを放つ。
【鬼神】が横っ飛びに吹っ飛んだ。
「あれぇ? 頭潰すつもりだったのにぃ。アハハッ、石頭過ぎぃ」
その様を見やった少女は、可笑しそうに笑っている。
何時までも続きそうな地獄に、遂に転機が訪れる。
空を覆う黒雲に光が差す。
不思議そうに少女も天を仰ぐ。
そこから【天使】の群れが溢れて出て来た。
即座に無数に放たれる光。
少女は俺の頭を掴んだまま、それを軽く避けてみせる。
「んー? 何あれ? 頭んとこ、おかしくない?」
どうやら、【天使】の容姿の事を言っているようだ。
確かに、【天使】は頭部の代わりに天使の輪を正面に向けているという、悪趣味な造形をしてるのだ。
なおも光は少女へと追い縋る。
その都度、少女はそれを避けてみせる。
その間も、俺は頭を掴まれたままだ。
突然、少女の首に刀が振り抜かれる。
少女の首が浅く切り裂かれた。
「いったぁー、何!?」
首に生じた切り傷に、少女は痛みと困惑を訴える。
「……【執行】を用いてもこの程度ですか」
それに答えるように、漆黒の鎧を纏った襲撃者は言葉を返す。
【執行者】だった。
【鬼神】の【憤怒】か、少女の【色欲】か、もしくは両方を、ようやく捕捉したのか【天使】と【執行者】がこの場に現れていた。
突然現れた【執行者】が、少女の首に斬撃を仕掛けたのだ。
少女の追撃を許さぬとばかりに、【天使】からの光線が迫る。
それらを避けながら、少女は先の【執行者】へと視線を向ける。
≪情欲≫
【執行者】の動きが鈍り、息が荒くなる。
己の体を押さえ、この場を脱しようとする。
少女が離脱を図る【執行者】へと迫る。
今度は別方向から攻撃が来た。
別の【執行者】が少女へと攻撃を仕掛けて来たのだ。
少女は煩わしそうに、腕を振るう。
否、腕の先の俺を振るって、払い落した。
横槍を仕掛けた【執行者】が吹き飛ぶ。
だがその隙に、離脱しようとしていた【執行者】は【転移】してしまったようだった。
「もぅ、逃げちゃったじゃない!」
腹立たし気に、声を発する。
遂には、俺から手を離し、【天使】の軍勢へと向かう。
見る間に、【天使】の数が減じていく。
あっという間に、【天使】が殲滅されてしまった。
【魔王】を消滅してみせた【天使】は、【魔神】には歯牙にもかけられない存在に過ぎなかったようだ。
俺はその間何をしていたかというと、天界へ戻る事を迷っていた。
【魔神】に対して、【天使】も【執行者】も赤子同然だった。
俺が天界へと【転移】し、もし【魔神】が天界に追ってきたら、天界の【執行者】達が全滅する恐れがあった。
無論、メイドさんが対処してくれるかもしれないが、メイドさんが居ない可能性もあり得る。
前回、俺が色々と画策、奔走したことにより、かえって状況は悪化していた。
そのせいもあり、無暗に動くことが躊躇われてしまったのだった。
【天使】を殲滅し終えた少女が、俺の元へと戻って来る。
「今度は逃げなかったみたいだねぇ。まぁ、逃げても追っかけたけどねぇ」
「で? いい加減、アイツの居場所、言う気になったぁ?」
「……俺は言わない」
「へぇー、何で? もしかして殺されないとか思ってないよねぇ?」
「それは……」
「? それは?」
≪転移≫
辺りは、無明の闇が広がっている。
【暴食】が消滅させた世界だ。
果たして、【魔神】が【転移】についてこれるのか。
また、【魔神】はこの消滅後の世界で生存可能なのか。
それらを確かめようと、ここに【転移】してみせたのだ。
暫く待ってみるも、少女が追ってくる様子は無い。
もっとも、周囲を見る事は叶わないのだが。
しまった、追ってこない場合を想定していなかった。
俺に執着している様子だったので、追ってこない事態を失念していた。
≪転移≫
灼熱の世界へと戻る。
集落の上空へ現れた。
眼下に少女の姿は…………見えた。
状況は悪い方向へと進んでしまったようだ。
少女は生き残りの鬼達を一か所に集めていた。
【鬼神】の姿は無い。
もしかしたら、先の【天使】達によって消滅させられてしまったのかもしれない。
少女はすぐに俺を見つけたのか、こちらを見て、微笑を浮かべていた。
「おかえりぃー。意外と早かったねぇ。もう少し遅かったら、全員殺しちゃってたけどねぇ」
そばへと降り立った俺に向かい、そんな言葉が掛けられた。
「それで? 言う気になってくれたぁ? それとも、誰か殺しちゃおうか?」
「……分かった、教えるから、彼らには手を出さないでくれ」
「ホント? いやぁー、殺さないでおいてよかったよぉー」
……未だにメイドさんは現れてはくれないようだ。
もう、こうなったら天界に連れて行くしかないかもしれない。
「……その場所に【転移】する。手を繋いでくれ」
「いいよぉー。でも、また何かされるのも面倒だしぃー」
そう言って、少女は、見覚えのある子供の鬼を掴み上げる。
掴み上げられた子鬼は顔色を失っている。
「この子も連れて行こっかなぁ」
こうなってしまうと、さっきの世界に【転移】する事も無理か。
そんな事をすれば、子鬼は死んでしまう。
「さぁ、早く早くぅー。ボク、もう待ちきれないよぉー」
掴んだ子鬼ごと、腕をブンブンと振り回している。
子鬼は既に、失神してしまったようだ。
俺の手を掴もうとする少女の手。
その手が横合いから掴み上げられた。
少女のもう片方の腕が、子鬼を掴んだまま斬り飛ばされる。
俺も、少女も、驚愕から立ち直れず、反応出来ない。
だが、少女の復帰は早かった。
相手を認識するなり、激高する。
「てめぇーーーー!!!!!」
いきなり現れたメイドさんに対し、蹴りを繰り出す。
が、次の瞬間には、二人共消えてしまった。
暫くの間、誰もが固唾を飲んで、周囲の状況を警戒したが、何も起きる気配は無い。
どうやら、メイドさんが少女ごと、何処かへと【転移】したようだ。
皆も危機は去ったと悟ったのか、徐々に生気を取り戻す。
その顔触れの中には、先の子鬼やお館様の顔もあった。
どちらも無事だったようだ。
怒涛の展開は、ここにきてようやく終わりを迎えたようだった。
次回は2話程、インタールードとなる予定です。
21/07/08 誤字修正
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。




