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救世主は救わない  作者: nauji
第二章
21/60

第14話 樹海

この作品はフィクションです。


重要語句は【】、能力使用時は≪≫で記載しております。

 テレビでしか見た事の無いような、否、テレビですら見た事の無い程の、巨木が乱立している。


 前後左右は勿論、上を仰ぎ見ても、枝葉が雲の如く空を覆っており、日光すら遮られている。


 周りが巨大過ぎると、逆に、俺が縮んでしまったような錯覚を覚えてしまう。


 むせかえるような緑の中に、俺は居た。

 より正確には、木の中に。



 今現在、俺は木に食われかけていた。



 地球にも食虫植物が居たのは知っている。

 見た事は終ぞ無かったが。


 だが、今、俺を食っているのは、樹木、だった。

 ゲームに出てくる動く木と言えば、トレントを想像する。

 木の幹に顔があって、根や枝を動かし襲ってくる奴だ。


 まずこいつは、見た目が違った。


 そもそもが高層ビルのような大きさを誇っているのだ。

 その太いというより、壁のような幹から、触手のような枝が無数に伸ばされた。


 当然、周囲は木々だらけ。

 襲ってきた木は、一本ではなく、無数。

 そして、伸ばされた枝は、更にその数十倍。


 目下、周囲から枝に(まと)わりつかれた俺は、枝が合わさり(まゆ)状になった中に取り込まれていた。




 別段、木々に対し、危害を加えた訳ではない。


 流石に、根を踏まないように注意したりはしなかったが、木の幹に触れたりもせず、木に蹴りをかましたり、小水を掛けたりなんか断じてしていない。

 ただ、普通に木々の間の地面を歩いていただけだ。

 この扱いには納得がいかない。


 もっとも、人間と植物では、様々なモノが異なる。

 人間には植物の行動原理など、理解の及ぶ筈もない。


 木に対するならば、火が基本だろう。

 しかし、残念ながら俺に火起こしの芸当は無理だ。

 いっそ、魔法が使えれば……。

 ……いや、異世界なんだし、魔法ぐらいあってもおかしくはない。

 というか、森と言えば、エルフ!

 エルフは魔法も使えるし、美男美女だと地球では、最早常識だった!



 そうだ、エルフに会いに行こう!



 ……とりあえず、現実逃避してみたが、状況に進展はない。


 俺は仕方なしに繭の外へと【転移(てんい)】を行う。

 すると(たちま)ち、新たな枝が伸びてきて、再び繭に取り込まれてしまう。


 (らち)が明かない、とはこのことか。


 こうなれば、力技で突破するしかない。

【転移】直後、再び【転移】をする。

 更に、1回の【転移】毎に、視界の先限界まで【転移】するように心がける。

 これで行ってみよう。


 ……無理だった。

 そもそもが、整備された林道などではなく、木が無秩序に生えている。

 しかも、一本一本が巨大な訳だ。

 結果的に、視界の大半は木が占めてしまい、遠くに【転移】すること自体無理だった。


 これは地道に近場の【転移】を繰り返すしかないのか……。

 いや、いっそ樹上に【転移】して周囲を探ってみるか。


 ……待てよ。

 よくよく考えてみれば、【リング】の力は【転移】だけじゃない。

 俺は宙を浮ける筈だ。

 樹上を浮いて移動しすれば良いのだ!




 今までの道程が嘘だったかのように、平穏な移動が可能となった。

 この世界の樹木は、地上の生物に対し容赦が無いが、樹上を飛ぶ生物に対しては寛容(かんよう)らしい。

 この世界で地上を歩くのは無謀だということが、良く解った。


 そうなると、この世界の植物以外の生き物はどの様に生きているのかと、疑問が浮かぶ。

 鳥なんかは空を飛べるだろうが、とはいえ、羽を休める場所が必要の筈だ。

 かといって、木に近づくと食われるだろう。

 木が無い場所が何処かにあるのかもしれない。


 陸上生物はどうだろうか。

 あの枝を避けられる程の素早さを備えているか、または、樹木に察知されないような特性でも無い限り、生存する道はないのではなかろうか。

 ……どちらにせよ、この世界で陸上生物を見かけたら、樹木以上に用心する必要がある訳だ。

 何せ、あの樹木をして捕食出来ない相手という証左(しょうさ)に他ならないのだから。


 眼下には、相変わらず、木々の葉が鬱蒼(うっそう)と生い茂っている。

 ともすれば、一面の葉が海のようにすら見えてくる程だ。

 ……成程、これなら樹海って表現があるのも頷ける。

 まぁ、地球でこれ程の景色を見た人間が居たかは分からないが。

 きっと、感性が豊かな人物だったのだろう。



 と、その時、視界の遥か先に文字通り天まで伸びる何かを捉えた。



 薄っすらと見えるそれは、しかし、一向に近づく気配がない。

 一体、どれ程遠くにあるというのだろうか。

 (しばら)くの間、その何かを目標として飛んでみたが、近づいている気配が微塵も無い。

【リング】の重力制御の出力を強める事にする。

 勿論(もちろん)、操作する様な物は備わっていないが、要はイメージだ。

 今までよりも、目の前に向かって、落ちてゆく速度が上がるイメージを抱く。


 おぉ、これは速い!


 景色が凄い速さで流れてゆく。

 目標物も徐々にその姿を(あら)わにしてゆく。



 木だ。



 眼下の木々とは比べ物にならない、天に届く巨大樹。

 その威容は、幹の部分ですら雲を貫き、枝葉に至っては、視認出来ない。

 木の周辺に影が差していることから、雲の上に広がった枝葉が日の光を遮っているのだろう。

 いやいや、これ、マジで宇宙まで届いてるんじゃ!?

 ……いや、流石にそれは無いか。

 地球ですら、そんな高さを誇る建造物はおろか、世界一の標高を誇る山ですら、宇宙なんて届く訳も無かった。

 確か、火星になら、地球の3倍位の山が存在する、みたいな話を聞いた覚えがあったが、それでも宇宙には届かなかっただろう。


 ゲームでいうところの世界樹ってやつか。


 まさか、このクラスの木がこの世界に沢山あったりしないだろうな……。

 それか、これ以上の巨大樹があったりとか……。

 考えるだに恐ろしい。


 まさしく、この世界を統べているのは、植物、それも樹木に相違ないのだろう。


 思考する間にも、距離は縮まってゆく。

 (ようや)く、巨大樹の周辺が見え始めた。

 巨大樹の枝葉により日が差さない事が原因なのか、はたまた、栄養が巨大樹に摂られてしまうが故かは不明だが、巨大樹の周辺、影の差す辺りには、木々は生えていなかった。

 巨大樹が作る影をなぞる様に、森が隙間を開けている。

 それでも、とんでもない規模だ。

 例によって、東京ドーム何個分みたいな脳内ナレーションでも再生されそうなやつだ。




 すると、その木々の無い空間に、集落が見受けられた。

 成程、ここに地上の生物は暮らしている訳か。

 確かに、この広い空間なら、不用意に近づきさえしなければ、周囲の木々から捕食されることは無いのだろう。


 そこでふと、疑問が浮かぶ。

 この目前の巨大樹は、捕食しないのだろうか、と。

 集落の位置的に、仮に、あの巨大樹が捕食するならば、存在してはいない筈だ。

 何せ、木々の無い空間は、同時に、巨大樹の枝葉が作る影の面積に等しいのだから。

 幹から伸ばされる枝が、それより短いということは無いだろう。


 であれば、俺が現状考えられる可能性は二つ。

 一つは、巨大樹は捕食を行わない。

 もう一つは、巨大樹も捕食を行うが、あの集落の住民は、それを何らかの方法で防いでいる。



 その答えは、衝撃を伴って行われた。



 まだ、巨大樹の影にすら入っていない俺に対し、巨大樹の幹から枝が伸ばされていた。


 ……この距離ですら届くとは!?

 しかも、枝が伸びる光景を視認出来なかった。

 異世界は、俺に視認出来ない出来事が多過ぎて困る。


 巨大樹から伸ばされた枝は、俺を捕食するのではなく、弾き飛ばす事を選択したようだった。

 鞭のように(しな)った枝が、上から下へと俺に振り下ろされる。

 俺の体が樹海へと撃ち出された。


 衝撃波を伴って撃ち出される俺。

 音速を超えたようだ。


聖衣(せいい)】の加護により、無論痛みは無いが、受けた力が強過ぎるのか、体を宙に留め置けない。

 樹海の枝葉を突き破り、地面へと激突した。

 息をつく暇も無く、周囲の木々から枝が伸びてくる。


「またこの展開かよ!?」


 思わず、独り言を叫んでいた。

 繭に包まれながら、俺は視界に捉えていた集落をイメージする。

 住民だけは襲わないのか、集落自体を襲わないのか。

 前者だと、俺だけ襲われる筈。

 後者だと、俺も襲われない筈。



≪転移≫



 集落に【転移】した。


「……………………」


 (しばら)く身構えていたが、どうやら集落自体襲わないらしい。

 毎度毎度、異世界は死ぬ目に遭い過ぎではなかろうか。

【聖衣】と【リング】が無いと、一体何度死んでいることやら。

 勿論、【リング】が無ければ異世界に来ることもないが。


 ともあれ、だ。

 (ようや)く、集落に辿り着けた。

 これで、住人に、少なくとも、文明を有する知的生命体には会えるだろう。

 目を(つむ)り、念じる。


 ……出来ればエルフ、エルフ来い!


 量子力学的観点から、事象は観測されるまでは可能性は等分、だったようなうろ覚えの知識を引っ張り出し自己肯定する。

 目を瞑っている限り、可能性は50%もある!

 これは久々のガチャだ、神引きを期待したいところだ。


 集落のただ中に突然現れた全身真っ白の見慣れぬ人物。

 何やら一心不乱に念じている様は、異様と言う他あるまい。


 そんな客観的事実からは目を逸らし……実際は目を瞑っているが、第一村人との遭遇に備える。


 ……そしてその時は来た。



「……あの、どうかされましたか?」



 掛けられた言葉は女性の声色だった。


 頼む、ゴブリンとかいうオチは止めてくれ!

 目を見開く前に、一際強く念じておく。

 意を決して、遂に目を見開く。






「よっしゃー!」


 俺は、思わずガッツポーズをしていた。


 想像していたよりも、全体的に緑っぽい。

 服装も、どこか農民の衣装を思わせる。

 故に、最初はシュッとしたゴブリンかと思った。


 だが、見紛う事なき、エルフがそこに居た。

 特徴的な尖った耳。

 |水浅葱(みずあさぎ)の髪に常盤色(ときわいろ)の瞳。

 白緑(びゃくろく)の肌をしたスレンダーな肢体(したい)


 俺のその様を見た女性は、ギョッとした表情を浮かべていたが。


「……あの、本当に大丈夫ですか?」


「えぇ、大丈夫です。何も問題ありません」


「……そう、ですか?」


「無論です。心配していただき、ありがとうございます」

「ところで、つかぬ事をお伺いしますが、この集落の住人の方でしょうか?」


「はい、そうですけど。……それが何か?」


「実は、少し事情があって、遠いところから、此処に来たばかりの身でして」

「出来れば、色々とお話を伺わせていただけないかな、と」


「はぁ?……確かに、見かけた事の無い恰好でいらっしゃいますね」


「でしょう? 木々に襲われながらも、命辛々(いのちからがら)、この集落を見つけて辿り着いた次第でして」


「……………………」


「……ん? どうかされましたか?」


 何故だろうか、突然、黙ってしまわれたのだが。

 先程までの奇行はともかく、今は普通に接している。

 ……もしかして、違う種族だと訝しいがられているのだろうか。


 俺が口を開くよりも早く、言葉が掛けられる。



「あなた、【神樹(しんじゅ)】の加護を受けていないわね!?」

「誰かー!! 誰か来てー!! 侵入者よー!!」



 おおっと、木に襲われた(くだり)が不味かったのか!?

 また投獄ですか!?


 女性の悲鳴を聞きつけてやって来たのだろう、周囲を男性エルフ達に囲まれてしまった。


 ふむ、今のところ、エルフは美男美女揃いのようだ。

 まだ子供や老人には出会っていないが、きっと見目麗しいのだろう。


 少し感慨に(ふけ)ってみたが、当然ながら状況は改善されていない。

 事を荒立てても仕方がないし、大人しく従っておこう。


「何者だ貴様!? 見るからに怪しい奴め!」

「その恰好は何だ!?」

「先ずはその服を脱げ!!」


 ……大人しく従うのは難しそうだった。

【聖衣】を解除すれば全裸になってしまう。

 どうしてもと言うならば、致し方ないが、流石に集落のただ中で、衆目の面前での全裸は勘弁願いたい。

 これは、はしゃぎ過ぎた俺への罰なのだろうか……。


「……危害を加えるつもりはありませんし、抵抗するつもりもありません」

「出来得る限り、要求には従いましょう」

「ですが、この服を脱ぐ事には従いかねます」


「何!? 何故、服を脱げないというのだ!?」

「やはり、何か隠し持っているのではないのか!?」

「素性も知れぬ、怪しげな恰好の輩を捨て置く訳にはいかん!」


「この服の下には何もありません」


「貴様の言う事なぞ、信じられるか!」

「そう言って、何を忍ばせている!?」


「いえ、ですから、服の下には何も身に着けていません……」


 仕方が無しに、続きを口にした。


「……全裸なんです」



「「「……………………」」」



 場に沈黙が降りた。

 皆、一様に目が(すが)められている。


 いや、俺もこんな事言いたくはなかったよ!

 強要しておいて、その反応はどうなんだよ!?

 俺を変態扱いするなよ!!!


「……それを証明出来るのか?」


 一人のエルフが問うてくる。

 俺は頷き、家屋の裏、人気のない場所を指し示す。


「逃げも隠れもしません。ですが、確認するならば、お一人で願います」


 エルフも頷き返し、二人でそちらへと向かう。




「何とも面妖な。何処に衣服が消えてしまったのか」

「それに、お主の髪色まで変わっておったし」

「異邦人とは、皆、そのようになるのか?」


 何か、色々と衝撃的だったらしい。

 取り合ず、納得は得られたようだ。

 同時に、俺への嫌疑――何かを持ち込んでいる疑惑は晴れたようだ。


「いえ、少し特殊な事情がありまして」


 そんな言葉を返しておく。

 流石に、この世界に他の人間が居るかは分からないが、要らぬ先入観は持たれない方がいいだろう。

 変に思われるのは俺だけで十分だ。


「ふむ、とはいえ、お主の身元を確かめねばならん」

「この村の長達に判断を仰ぐとしよう」


 そう言って、先のエルフは周囲の者達を解散させ、俺を(ともな)って集落の奥へと歩いてゆく。

 一応は信用を得られたのか、特に拘束はされなかった。


 周囲は木で出来た家々が並んでいる。

 どれも平屋、つまりは一階建ての造りだ。

 日本家屋的なものではなく、筒に三角錐の屋根を付けたような見た目をしている。

 それこそ、小さな木のようだ。

 そして、主要な道に沿うように、かがり火が焚かれていた。

 確かに、巨大樹の影にある為、日の光が差さず、全体的に薄暗い。

 明かりは必要だろう。



 集落の一番奥まった場所、巨大樹の一番近くに建てられていたのは、神殿だった。

 日本的なやつではなく、ヨーロッパ辺りにあったようなやつだ。

 これも木製のようだ。


 神殿の周りには、柵が端から端まで延々と設置されている。

 恐らく、巨大樹を囲むようにしており、目の前の神殿からしか、巨大樹に近づけないようにしているのだろう。


「さぁ、この中だ。……くれぐれも失礼のないようにな」

「特に、全裸にはなるなよ」


 ならんわ!

 俺の趣味嗜好じゃないわ!


 憤慨(ふんがい)しつつ、木製の神殿の中へと足を踏み入れた。






エルフ!

みんな大好きエルフ!


いやー某指輪な物語の映画は、凄かったなぁ。

やっぱりエルフは外人顔の方がシックリくる。


因みに、本文の色に関してはウィキより下記説明を載せておきます。

・水浅葱:緑みの淡い青色

・常盤色:や杉などの常緑樹の葉の色のように茶みを含んだ濃い緑色

・白緑:白みを帯びた淡い緑色


次回は、世界の説明回になりそうです。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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