5.蜘蛛の乙女は、空の下を駆ける!
今回ご紹介するバルーンアートは、アルケニー(アラクネ)の美人──、小説『蜘蛛の意吐』のヒロインです。
名前はゼラ。赤紫の花の色の瞳に由来します。
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【再現ドラマ】とある製作者と小説家の対話
作者NOMAR様[ 第一のファンアートを見た後]
↓
N ̄ O ̄)ノ___「つぎの娘のおっぱいは、
もっと大きくしてください」
K John・Smith
↙︎
N  ̄ v ̄)____冫(° o ° ;K
「 ⁉︎ は、はい。胸を大きく、と」
N ̄ O ̄)シ __
「目はもっと大きく、少女マンガみたいにキラキラさせて。ニッコリ笑顔でむふん」
N ̄ O ̄))┘ぐッ __
「そして、おっぱいを大きくしてください(天下一!)」
:⚡︎:ビビッ
[ 開眼せり!]
_____ _ (° 言 °〃K
「── 二回言った!!」
「そうか、作家がヒロインに込めた想いとは ⁉︎」
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「なろう小説」ヒロインの、オリジナル・バルーンアートはいかにして完成したか?
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■ はじめてのファンアート
『アルケニーのゼラ』とはどんなキャラクターで、どこにひかれて、どうしてファンアートにしたのか。
最初に小説「蜘蛛の意吐」とそのヒロインを紹介します。
蜘蛛の意吐〜 あなたの為ならドラゴンも食い殺すの 〜
https://ncode.syosetu.com/n4757eu/
この小説は書籍化作品ではありません。
ジャンル異世界恋愛の中で、知名度は低い方だと思いますが(…悪役令嬢と婚約破棄が上位席巻⁉︎)、連載中、一定の人気と評価を集めて『今月の一冊(第66回)』に取り上げられていました。
私が読み始めたのは連載途中からでしたが、アルケニーのヒロインを珍しく思いました。
(以下ネタバレあり)
作者・NOMAR様が描いた「アルケニー」は、そのこけ定石。元気で陽射しの似合うキャラクターでした。
アルケニー(アラクネ)といえば、美しい女の上半身が、怪物的な大蜘蛛のからだと合わさった魔物です。
イメージは悪と闇。
キャラクターはたいてい、妖艶な毒婦や冷酷な悪女で、ときに人食いです。狡猾で残忍で、糸罠や毒を巧みにつかう危険な相手に描かれてきました。
では、小説「蜘蛛の意吐」は?
── 初登場は白昼堂々、街中の教会でした。
いきなり全裸でステンドグラスをぶち破り、後先考えず、結婚式場から新郎をさらってゆくなんて。
そんな蜘蛛の娘、ありえない(笑)
妖しい笑みをうかべた残酷な魔性?
いいえ、純愛無双のターザン少女です。
[ 空から落ちてきた少女 ]からはじまる物語は多くとも、婚約破棄ならぬ、結婚式襲撃からの開幕。
いきなりクライマックスの勢いです。
裸のアルケニー娘は陽射しの下、八艘飛びに街の屋根上を跳び、領都を駆けます。おびただしい目撃者たちの大騒ぎなど、知ったことなし。
一方、だきかかえられた青年(新郎)といえば、魔獣討伐で名の知れた騎士。かれはかれで、伝説の魔獣に掻っ攫われるという異常事態に混乱しつつ、なぜか『奇妙な既視感』に襲われます。
無茶と無謀の片想い、拉致から始めた逃避行はどうなるのか ──
目が離せないでしょう?
◇◇◇◇
アルケニーのゼラの物語は、本編の終幕に明るく華やかな大団円を迎えました。無鉄砲な蜘蛛の娘は、そのとき「聖獣」と呼ばれて人間社会で広く尊崇される存在でした。
── しかし、私にとって『アルケニーのゼラ』というキャラクターは野生の少女。陽射しの下を駆け、屋根を翔ぶイメージと共にあります。
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■ 第1のゼラ(サプライズ!の試作品)
作者NOMAR様を驚かせるべくつくった、初のファンアートです。
──スレンダーで真剣な目、真顔。冒頭の人形とだいぶちがう感じがします。これは製作した自分がいだいた、スポーティなイメージ、『疾走感』によるものでした。
制作時期は、本編の連載途中です。
丸風船は、氷や水の球体を操る魔法をイメージしています。
サプライズ!
作者NOMAR様へ、意気揚々とこれらの写真を披露しましたが、結論を言えば、作者のイメージを逸脱していました(汗)
■ファンアートにしたきっかけ
時を戻して。
バルーンアート化のきっかけにふれます。加瀬優妃 様です。
NOMAR様の活動報告で出会った『なろう』の大先輩 、アルケニーのゼラのイラストを描いていた『蜘蛛の意吐』のファンアートの先駆者(?)でした。
ある時、提案されたのでした。
✳︎ バルーンアートのゼラ(写真)を、作者 NOMAR様へサプライズプレゼント !
── はぁ?
と、いうのが最初の気持ちでした。
バルーンアートでファンアート?
まったくそんな発想はなく、言われてもピンと来なかったのです。バルーンアートと「なろう」は、わたしの中では完全に別の趣味。ましてや、なろう小説のキャラクターの『立体造形ファンアート』…… 見たことも聞いたこともありませんでした。
(( キャラクターのファンアート=イラストでしょう? ))
ちなみにこちらが先行の↑ ファンアート。
「アルケニーのゼラ」のサンタコスチューム(加瀬優妃)です!
その後、おもしろそうだ、と。アルケニー娘のファンアートに着手しました。どことなく、イラスト似に仕上がり… 披露した結果は、本文冒頭。
作者から「ちがぁう(意訳)」、もっと○○○○!とリクエストが、、、
■リクエストを受けた、第二のゼラ
「アルケニーのゼラ」はこれまでに十点以上つくりました。しかし、実のところ、第二作目が代表作です。
NOMAR様のリクエストを受けた直後で── 小説イメージに準じた表情、プロポーション、ポーズ、衣装(…の少なさ)などなど。完成サイズも程よく、以降の作品の祖型になりました。
──再確認です。
N ̄ O ̄)ノ「この娘のおっぱいを、もっと大きくしてください」
[一番目のゼラ]⤵︎
[二番目のゼラ]
── ご覧下さい! 作者、NOMAR様からの要請に応えた【至上最胸】の巨峰を! 胸影の大きさ、闇の濃さが違います。
(と、いうか。お腹がみえない)
── 大きな瞳は、星シールやラメ入りのグリッターグルーでキラキラ!
── ボリュームアップした黒髪は、丸いシルエットにととのえて(アフロではない)、とにかく丸い輪郭。ほわっ、と、笑み(スマイル)!
( じつは髪が命? ボリュームが無いとイメージがかわる…? )
◇ ♢ ♢ ♢ ◇ ♢ ♢ ♢ ◇ ♢ ♢ ♢ ◇ ♢ ♢ ♢ ◇
すらりとした蜘蛛脚(なまめかしい?)にご注目を。
バージョン2とも言えるゼラは、じつは、この写真のようにはじめは黒い脚でした。
バルーンの黒はほぼ単一です。蜘蛛の胴の黒、脚の黒、そして黒髪が重なると『かたまり』に見えてしまいます。そこで、長い蜘蛛脚を原作設定にない青や紫系にしたのが以下──、
紫の脚はいわば『バージョン2.5』。アルケニーのゼラの二作目は、これをもって完成品としました。
… 実のところ『バージョン2』から『2.5』の変更箇所はほかにも有り。ボリュームある髪の毛は、黒一色を止めて濃茶を少し混ぜてみています。さらに、、、
◇ビフォー◇
◇アフター◇
── お分かりでしょうか。より一層、せり出た胸!
大概だった胸囲は『バージョン2』から『2.5』で、さらにさらにアップグレード !
【再度掲載】なお、このポーズ──上半身の片手を上げた「しゅぴっ‼︎」── は、作中の得意のあいさつです。
蜘蛛体の脚が前一本、欠けているのも、アルケニーのヒロイン・ゼラの小説内設定。過去にまつわる重要なポイントです。
小説で「一本ない」とされていましたが、バルーンアートは欠損が目につくよう、脚関節の途中で絶たれたかたちにしました。
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── 今回の記事は、はじめて「なろう小説」のファンアートを取り上げました。しかも、はしめてバルーンアート化したキャラクターです。
前回のバルーンアートの『鬼』は、既存の漫画、アニメやイラストのイメージを思うままにアレンジしましたが、これは作者(キャラクターの創作者)の言葉を聞き、大切なキャラクターを形にするものでした。
初の取り組みでしたが、さいわいなことに作者NOMAR様とのやりとりは楽しく。「アルケニーのゼラ」の明るくパワルルなイメージは、かたちにしていて達成感がありました。
はじめの一体から早、三年目。
途中、変わりダネをつくるうち『ハロウィンファッション= 蜘蛛の魔女』が誕生。ボランティアで関わりのあった仮装イベントの会場や、ハロウィンシーズンの文化施設の玄関ホールに置かせてもらえました。
堂々、一般公開です。大勢の目に触れました。
◇写真◇蜘蛛魔女のゼラ
(……2020年は残念ながら、ハロウィンに限らず関わりのあったイベントの中止、施設の閉館が相次ぎ、機会を失いました)
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また、原作者のNOMAR様との間に、意外な出来事も生じました。小説とバルーンアートが刺激し合い、互いに新作を生む展開です。原作者のNOMAR様は『創作スパイラル』と名付けて、エッセイを記しました。
『私の書いた小説の? ヒロインが? 某施設のリアル受付嬢になりました? 』(https://ncode.syosetu.com/n0161ft/)
ファンアート『アルケニーのゼラ』。その三作目以降のバルーンアートや関係するエピソードは、いずれ詳しくご紹介したいと思います。