13.ドラゴンは、ハロウィンに舞い降りた
13. ドラゴンは、ハロウィンに舞い降りた
…… オレンジ色の空飛ぶ巨体。
地上めがけて口からほとばしる炎。
TRICK or TREAT! ハッピー ハロウィン!
見てくれないなら、丸焼きだ!!
ハロウィン、いえ、イベント用につくった過去最大クラスです。
(バルーンアーチ除く)
写真の背景は、公共施設の吹き抜け。
ぶっつけ本番でしたが、ドラゴンは無事に完成し、屋内会場に飛びました。見上げるとなかなかの迫力……
お気づきでしょうが(マスクの有無で)過去作品です。
このサイズになると、自宅では作業も運び出しもほぼ不可能。これまでに一度だけ、会場近くに作業場を確保できたこのイベントでつくりました。
コロナ禍が今後、完全終息したとしても、また作る機会があるかどうかりません。
「巨大バルーンアート」をつくり、広々とした空間に展示すること。── ある意味、ボランティアでイベントに加わる、最大目的が果たされた作品でした。
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ドラゴンは「二度目」のハロウィンイベント参加がありました。
さすがに来場者の頭上を飛んだのは最初の一度だけ。二度目は全く別のイベント会場で、置かれたのは「撮影スポット」でした。ハロウィンの仮装の子供が舞台に上がれました。
── 長持ちは想定外でした。
この大きさのバルーンアートは初挑戦。
二度目の利用も、完成状態での移動もまったく考えておらず。しかも、制作から二週間近くたった後、まだドラゴンが(写真のように)かたちをたもっていたことに、なぜだ? と、むしろ驚きました。
(炎柱がちょっと、しなっ、としているくらいはご愛嬌)
もっとも、忘れたころ。のちの別のハロウィン・イベントで、似た出来事に遭うのですが──
このオレンジ・ドラゴンは、ある意味、小説「蜘蛛の意吐」のファンアートです。
しかし製作時、ファンアートという認識は、まったく、ありませんでした。
ドラゴンの製作時期は、アルケニーの蜘蛛姫ゼラよりも前でしたが、後に述べる理由で、作者のNOMARさまに何も連絡せず、写真も見せていませんでした。
また、ドラゴンが小説「蜘蛛の意吐」の本編に登場するシーンはありません。
「蜘蛛の意吐」第1話は,── 城塞都市の聖堂でひらかれた、騎士と商人の娘の結婚式 。
誓いがかわされようとしたとき、ステンドグラスをぶち破った何か(だれか)が花婿めがけて降ってきます。
蜘蛛の魔獣が人間の青年に恋して。
魔獣の樹海で「力」を集め、最後に灰龍を倒して人間の娘に変身しますが、蜘蛛の姫の下半身は、それでもなおも巨大な蟲のまま。
しかし、何か察したのか半人半獣のまま街へ駆け出し── 第1話の乱入へつながります。
ドラゴン殺しの描写はありません。
── それでは、あらためてバルーン・ドラゴンの、とくに「はら」を見てください。
黒い大蜘蛛が食らいつき、しがみついていますよね?
黒蜘蛛は、 作り手が二度と作る機会が無いかもしれない大型ドラゴンを── ひとりで── つくっている最中、思わず加えたものです。
かなり目立つはずですが ── 意識しないとからだの模様にしかし見ないようです。なぜ、ドラゴンが黒蜘蛛に襲われているのか? と、不思議がる見物人はいませんでした。
実のところドラゴンが空を飛んだ、との描写はありません。
灰龍なのにオレンジ色なのは、正直なところ、ハロウィン・イベントにあわせたカラーリングです。
ファンアートの意識が強くなかったためか、ハロウィンに寄せつつも、どっちつかずといえばどっちつかず。
あえて、脳内設定で理屈づけるなら。
……… ドラゴンは、襲って来た巨大蜘蛛との死闘の果て、灰色のからだを夕陽に染めて宙に舞い上がる。
バルーンアートの光景は、地上を火の海にした上で強行着陸し、頑丈で執拗な蜘蛛のからだを引き剥がそうとする、直前、と?
なお、この時期、K John・Smithの認識では、ファンアートといえばイラストであり、工作物なら粘土や布の〈バルーンじゃない〉素材のもの。言いかえると、バルーンアートで何をつくってもファンアートではない、と捉えていました。
バルーンアートの「なろう」ファンアートを見たことがなかったのです。
アルケニーのヒロインをバルーンアート化したのは、ある人にすすめられたからこそ。そこであらためて、あれ?思い込み?? と、このドラゴンを作者NOMARさまへ伝えたのでした。