26.スウェーデンな日
フィンランドには一泊しかしないので、翌日昼にヘルシンキを飛び立ちストックホルムへと向かった。
ヨーロッパは国々を転々とするときに一々入国審査なんて面倒くさいものがなくて助かる。EUに加盟していないスウェーデンだってそんなものはなかった。
まあ、そんなことができるのもヨーロッパの親密な関係があってこそなんだろうけどね。
「へぇ、ここがストックホルム······フィンランドとは全然違うね。なんだか歴史ある町って感じがするよ」
「まあね。ガムラスタンはほとんど昔のまま残っているようだし。王宮では衛兵の交代式なんてことが毎日正午に行われてるらしいし、それを見るのも一興だと思うよ」
「そんなのもあるんだね」
「うん。その王宮、ストックホルム宮殿っていうんだけど、その大きさが欧州でも有数の規模らしいからね。多分壮観だよ」
「それは楽しみだね」
「うん、ストックホルムだけでかなり観光名所が多いからね。国会議事堂も見られるよ」
「そうなんだ!!それは見ておかなきゃね」
「はは、そうだね。他にもスウェーデンには時間問わずティータイムをするって文化もあるよ。だから、そこら中にカフェとかあるしね」
「それは是非やってみたい」
「うん、スウェーデンは時間がたっぷりあるからゆっくりできるよ。今日は今からどこか遠くに観光しに行くような時間が無いから、地下鉄使ってガムラスタンまで行こうか。そこなら色々な店が集まってると思うし」
「じゃあそうしよう!」
夏希の了解も得られたので、今居るストックホルム中央駅から地下鉄でガムラスタン駅まで向かう。
車内は日本の電車とは比べ物にならないくらい空いている。もちろん、首都の地下鉄としてはだけどね。それでも空席が幾らでもあるのだからやはり日本とは大違いだ。そもそも、ストックホルムの人口が90万人位だからね。1000万人以上の東京と比べてはいけない。
「っ、結構発車が急なんだね」
「そうだね·····立ってたら転けてたかも」
あと、この地下鉄の行き先も分かりにくかった。同じような駅の名前もあるし、何より中々目的の駅に止まる電車が来なかった。
でも、時間には結構正確なのには助かった。
しかし、仮にも首都の地下鉄なのに電車が来るまでの間隔が10分以上あったりするのはどうかと思う。
数分電車に揺られると直ぐにガムラスタン駅まで着いた。実は、中央駅から歩いても十数分で行ける距離なのだ。
「ここがガムラスタン······」
「細い路地があってロマンチックでしょ?」
「うん、とても。日本にいたらこんなのは見られないだろうし······」
「そうだね。ヨーロッパでもかなり古いまま残ってる街だから観光客は世界中から来るからかなり人が多いね。主に中国人を多く見かけるけど」
「あはは。中国人はどこの国に行っても観光地なら見かけるよ!」
「ま、それもそうか。ね、夏希。ちょっと着いてきて」
「ん?どうしたの」
「ちょっとした名所があってね。こっち」
そう言って夏希の手を取って目的の路地まで向かった。
「ねぇ、ここって?」
「んっとね、ストックホルム市内で一番細い路地だよ。人一人通るのがやっとだし、この雰囲気からかなり人気のスポット何だけど·······ラッキーだね。今ちょうど人が居ないから写真撮り放題だよ。人がいたら迷惑になるけど、これなら邪魔にならないしね。今のうちに撮っておこう」
「そうなんだね。じゃあ一緒に写る?」
「勿論。そのあとまだ誰も来なかったらこの路地と一緒に一人ずつ写ろうか」
「そうしよう」
僕は鞄から自撮り棒とスマホを取り出してセットする。
「それじゃあ撮るよ、カメラ見てね」
パシャッ
「うん。バッチリ。どうする?もう何枚か撮る?」
「そうだね、あと二、三枚だけ撮ろう」
「分かった」
そのあと、僕と夏希の写真それぞれも撮り終えたころ、他の観光客も来たので、写真撮影はそこまでにして、その細い路地を通り抜けた。




