18.生放送の日(2)
「えー、それでは最後に黒嶋さんです。改めてご紹介しますと、黒嶋さんはかの有名な黒嶋グループの会長で、今ではビリオネアの一人だとか······?」
MCが僕のことを軽く紹介した。
「ええ、改めて自己紹介を。僕が黒嶋御崎です。黒嶋グループの会長を務めています。あと、既婚者ですからね」
さらっと流したけど、みんなかなり既婚者であるところに反応を示していた。
まあ、その辺りもVTRで触れるだろうし、何より寺島さんは既に知っている情報だ。
「ええっ!黒嶋さんって結婚してたんですか!?」
「ええはい。丁度先月に結婚式を挙げたんですよ。まあ、籍はそれより前に入れてるんですけどね」
「その、おめでとうございます」
「ありがとうございます。何か質問があれば今のうちにどうぞ」
僕がそう言うと、みんな気になる点があったのか、まだVTRも見ていないのに殆ど全員の手が上がった。
それをMCが当てて、僕が答える感じだ。
「あの、不躾な質問ですが、収入はお幾ら位なんですか?」
「別に構いませんよ。そうですね······ざっと数百億くらいだと言っておきます」
『「ええっーーーー!!!!」』
スタジオが騒然となった。まあ、他の出演者にも収入の話を聞いていたけど、こんな桁外れな回答じゃなかったし。月収3000万でも驚かれてたんだからね。
「あ、あの、一応聞いておきますけど、それって年収······ですよね?」
さっき質問してくれた女優の人が恐る恐るといった風に聞いてくる。
「そんなわけ無いじゃないですか。勿論月収ですよ」
今度こそスタジオは悲鳴に包まれた。もはや桁が違いすぎて感覚が掴めてない人すらいる。
「あはは、何というか、桁違いですね······」
なんか、さっきまで和気あいあいとしていたスタジオの雰囲気が微妙な空気となってしまった。まあ、それもこれも僕が暴露したせいなんだろうけどね
「それじゃあ、なんだか締まらないけどVTRをどうぞ!」
と、いささか強引に進行し、僕のVTRが始まった。
VTRの内容は編集やカットはされているものの、大体殆どは紹介されていた。
初めに別荘の外環道とか大きさを見たときにどよめきが起こり、その後、玄関を紹介しただけでもっとどよめきが起こったので、これ以上にヤバいものがあると考えると耳を塞ぎたくなる。
ちょくちょく、解説とかが入っているが、皆そっちには目もくれず、VTRを食い入るように見ていた。
特に、リビングで例の三億円のペルシャ絨毯の話になったときにはもうスタジオ中が驚愕で満たされた。付近に座っている共演者には質問攻めにされ、スタジオ中から質問攻めにされた。
ペルシャ絨毯でこれなんだから、ライカンを紹介したときにどうなるんだろうと、不覚ながら思ってしまった。
だって、日本に住んでいて本物のライカンを見る機会なんてある筈が無いだろうからね。まあ、正確に言うと純粋なライカンではないが·······
それで、やっぱりライカンが紹介されるともはや悲鳴すら沸き起こらなかった。スタジオは静まり返った。
もう、あまりにも凄すぎて驚愕を通り越して反って冷静になってしまったのだろう。
やがて、再起動を果たしたMCさんがライカンの解説をしていた。人気の洋画にも登場していたことを熱く語っていた。
「えーと、黒嶋さん。あのライカン、ちょっと普通の····と言ったらおかしいですけど、他のライカンと比べて何か違いませんか?」
と、思いがけない質問が飛んできた。まさか、このスタジオに自動車好きが居るのか!?
「中村さんは自動車に詳しいんですか?」
中村さんとは、今回出演している俳優の一人だ。数多くのドラマにも出演している人気俳優の一人と聞いている。
「はい!昔から特にスーパーカーには目がなくてですね!それでなんですけど、具体的に言えばヘッドライトの形とか、ですかね」
「そうなんですね。確かにこれはライカンではありますが、オリジナルと比べると少しですけど差異があります。実は僕がライカンを買ったときに、既にライカンは生産台数分全て売れておりましたので、Wモーターズ社に頼んで、僕の為だけにもう一台を限定生産させたんですよ。そのときに向こう側がオリジナリティを加えてくれましたから、この車は正真正銘ライカンではありますけど、同時に世界で一台しかないスーパーカーなんですよ」
ここまで言ったけど、もう何が何だか分かっていない様子の人が多かった。
唯一、質問してくれた中村さんだけはスゴい!!スゴい!!と言っていたが·······
ともあれ、今日の生放送は無事、成功で終わるが、ネットでの反響で、僕の知名度がまた一気に上がってしまった。主にライカンのせいでね。




