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11.パーティーの日




僕は今、非常に不味い状況下にある。それは何かと言うと、今度中央区で行われるパーティーの招待状が届いてしまった訳なのだが······

そこに出席する人たちが問題だった。どうやらそのパーティーは僕が想像していたような和気あいあいとしたパーティーではなく、資産家や政治家等、政界や財界に君臨するお歴々の方々が多く出席されるようで、僕みたいな若者はこのパーティーでは非常に少ない。

でも、呼ばれてしまったものは仕方がない。僕だって既に日本で第三位の資産家なのだから、呼ばれないはずは無かったのだ。で、どうやら夏希が以前に付き人として参加したことがあるらしく、つくづく経歴の気になってしまう人だ。


ともあれ、夏希が参加したことがあるらしいので、僕は夏希から最低限のマナーと作法をレクチャーしてもらい、パーティーに出席される中でも大物の名前と顔は頭に叩き込んでおいた。

特に政治家連中は頭が固そうなので僕のストレスがマッハで増えそうだ。もしかしたらストレスで胃に穴が空いてしまうかもしれない。




「これで大丈夫かなぁ······」


「ええ、身なりはバッチリです。後は本番あるのみ!と言ってもそんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。このパーティーに参加される方は基本的に人となりのいい人ばかりですから」


「夏希がそう言うならそうなんだろうけどね······」


でもどうにも不安なんだよなぁ。やっぱり政治家にあんまり良いイメージが無いからね。

こればっかりは実際に会ってみないと分からないなぁ。


「それでは今日の予定の再確認をします」


夏希が仕事モードに入る。


「このあと18:00にここを出発し、18:30に会場に到着します。それから30分後の19:00からパーティーの開始です」


「うん」


「続けます。その後パーティーは22:00まで続きます。そのあとは基本的には各自解散となりますが、会場の最終退場時間は23:00になります。黒嶋会長が退場される時間に合わせて車を手配しますので、帰りの足の心配は不要です」


「ありがとう。それじゃあ22:30には退場するから、そのつもりで手配しておいてね」


「畏まりました。それで、会場までですが一応、個人として呼ばれておりますのでお車の方はベンツを用意しておりますがそれで宜しいでしょうか?」


「あー、うん。それで良いよ」


フェラーリとかランボルギーニだと目立ちそうだしベンツが妥当なところかな。


「それではそろそろお時間ですので向かいましょうか」


「分かった」



1時間後


僕の姿はパーティー会場にあった。既に会場には多くの資産家や政治家がいた。

この中でも僕は注目されているようで、知らない人たちが僕に挨拶をしてきた。

僕はそれに当たり障りのない返答をしておいた。初めてのパーティーで行きなり話しかけられてもまだどうして良いか分からないので、しどろもどろな対応になってしまったが、僕の当初の予想に反して優しい人が多く、僕も全然孤立することなくパーティーに臨むことができた。


「おぉ!あなたは今資産家の間でも非常に有名な黒嶋会長ではありませんか!?」


僕がパーティーで挨拶回りをしていると、その移動中に話しかけてきた人物がいた。その人はこの会場では珍しい二十代と思われる風貌の男だった。


「ええ、私が黒嶋ですが、貴方は?」


「おっと、これは失礼しました。私は柴田辰徳(しばたたつのり)と申します。若輩ながらIT系の会社の代表取締役社長を務めております」


「そうなんですか。どうやら私の事はご存知のようですが、改めて自己紹介します。黒嶋御崎と申します。私は黒嶋グループの会長を務めております───それにしても、私の名前をよくご存知ですね」


「ええ。今、我々資産家の間で貴方を知らない人なんて居ませんよ。何せここ一年で日本でも五指に入る資産家にまで成り上がったのですからね······私ですら、周りからは一目置かれていたというのに······貴方と比べてしまえば比べることすら烏滸がましいですね」


「ははっ。そう言っていただけると有り難いです。私もまだまだこの世界に踏み入れたばかりで、色々と手探りなんですよ」


「ほう······それなのにその経営手腕·······いえ、貴方は投資手腕の方が凄まじいものがありましたね。羨ましい限りです」


「ええまあ。金持ちなんて言われますけど、そんなの時の運で成り上がったようなものですからね······」


僕の場合はズルだけどね。と、心の中だけで呟いた。


「本当にその通りですね。言われれば運ありきで今の立場に居るようなものですし······と、話しすぎましたね。他の方を待たせてしまいました。どうやら黒嶋会長と話したい方は多いらしい。それでは失礼します」


そう言って柴田さんは新しい相手を見つけに去っていった。そして、フリーになった僕は、既に周りにできていた人だかりからまた新たに一人がやって来るのだった。




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