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プロローグ.拾った日




都内某所。

いかにも格安物件であることを誇示するような、昭和チックで寂れたアパートから一人の男が出てきた。

彼は黒嶋御崎(くろしまみさき)24歳。高卒の現在フリーターで貧しい暮らしをしていた。勿論日本基準でのことだが、月の収入が十万円位なのでたまの贅沢すら出来ないでいた。

だからこそこのようなボロいアパートに住んでいるのであるが。


彼は今日も限られた軍資金で必要な食料と日用品を買いに行く途中だった。


いつものように、すでに何年も乗っていて所々錆びて、ペダルの重くなった自転車を漕いで近所のスーパーに向かう途中。ふと、道端にキラキラ光るカードを見つけた。

それは、不自然なほどに光を放っていた。日陰にあるというのに、それはまるで自らが光を放っているようだった。


「何だこれ?」


不思議に思った御崎は思わずそれを拾い上げる。


「うーん、クレジットカードか何かなのか?」


そのカードをよく見てみれば、アルファベットや数字を用いた文字の羅列がある。他にも模様があり、基本的な色は黒ベースだ。


「うーんと、どうしようかこれ······」


「やっぱり買い物終わったら交番でも届けるかな」


と、落とし物を拾ったらほとんどの人がそうするであろう行動を、御崎もすることを決めた。





一時間後、御崎の姿は地域の交番にあった。決めたとおりに買い物が終わって例のクレジットカードを届けに来たのだ。


「あのーすいません」


「どうされましたか?」


御崎が交番に入り声を掛けると、そこにいた警察官がすぐに反応した。


「これ、落とし物なんですけど······」


そう言いながらクレジットカードを差し出した。それを警察官が受け取ってまじまじと見る。


「うーん·······これ、クレジットカードじゃないな。多分、何かのレプリカかな」


「君、このクレジットカードを拾ったとき近くに誰かいたかな?」


「いえ、僕以外に居なかったんですけど」


「それじゃあもうこれ、引き取る人は居ないかな。これは君の所有物ね。それじゃ、私は忙しいから!!」


警察官はそれだけ言うと、クレジットカードを強引に御崎に押し付けてさっさと奥に戻っていってしまった。


その後、クレジットカードを押し付けられてしまった御崎はアパートに戻り、クレジットカードとにらめっこしていた。


「うーん、やっぱりクレジットカードにしか見えないんだけどなぁ······」


と、そう言いながら、ふと裏面をまだ見ていなかったことを思い出し、名前が書いているかもと淡い期待を持ちながら面を裏に返してみた。


「は?」


御崎の口から間抜けな声が出た。


「何で、僕の名前が?」


そのクレジットカードの裏面には、所有者:黒嶋御崎 と表記されていた。

更にそのクレジットカードの裏に印字されている内容には言葉を失った。


「なに、これ·······あり得ないでしょ。()()()()()()()()()()()()だって······?」


試しにと、クレジットカードにある不自然なQRコードを何世代か前のスマホで読み取るととあるサイトに移動した。


すると、いきなりスマホから音声が流れ出した。


『おめでとうございまーす!!黒嶋御崎様!あなたはこのカードの所有者に選ばれました!えー、いきなり何がなんだかわからないと思うので、取り敢えずこのクレジットカードのことだけを説明しておきます。あっ!それと一つ注意事項ね』


『それじゃ、説明しますね。まず、このクレジットカードは裏面にも書いてあるとおり、無限にお金を引き出せる。金の出所は内緒だけど、法律的にも問題ないようになってるから安心してね。それと、各国のお金を引き出せるから。これでこのカードのことは説明終わり。次に注意事項ね。注意事項はたった一つ!このカードの存在を他の人に知られないこと!知られたその瞬間にこのカードは消えるよ』


「そっ────」


『ああ、ハイハイ。君の不安も分かるよ。だからおすすめの使い方を教えてあげる。まず、このサイトから幾らでもいいからお金を引き出す。その後、ネットで株式投資をする。ね、簡単でしょ。ああ、それと良い機能があるんだよ。このサイトでは今後の株価の変動が各会社ごとに全て見れる。だからそれをうまく活用してもうけてね。もし、面倒くさいと感じたらオートモードで自動的に株式の売買をしてくれるから、もし不安ならばそうすると良いよ。これなら株式投資初心者でも簡単に資産家になれるからね』


「·······至れり尽くせりだけど、どうしてそんな機能まであるの?僕に何をさせたいの?」


『いいや、特に何も。強いて言えば君にはお金持ちの気分を味わってもらうって事かな』


『おっと、それじゃ、そろそろ時間だからバイバイね!最後に!また私のことを呼び出したいならサイトにコールボタンがあるからそれからよろしくね!』


それを最後に音声は終了して、僕は暫し呆然としたまま部屋に立ち尽くした。




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