第9話〜最後の街で最後の買い物〜
次の日
「いやぁ、皆さん本当にありがとうございました」
パピラスは深々とお辞儀する
「それでは報酬を受け取ってください」
「いや、やっぱりいらねぇわ」
アリシアの口からそんな台詞が出てきた
「えぇ!自分から言っといてやっぱり要らないとか自分勝手すぎない?」
アリシアは円を組み、コソコソと話をする
「どうせ、俺らはこの世界には残らないんだ、だったら持ってたって意味ないじゃんか」
「それとこれとは話が違うと思うけど⋯⋯」
「とにかく報酬は貰わないって言っとけ、あの時はお人好し過ぎただけだ」
ギルはアリシアに背中を押され、パピラスに説明する
「な、なんと!本当に要らないと言うんですね!
これ程までにお優しい方だとは、思いませんでした!」
「じゃあ、俺たちは行くからな!その報酬は、下水の整備にでも使えばいいさ」
アリシアは10年後の下水を重んじてパピラスに忠告しておく
「分かりました、この街の下水に魔物を入れないように
資金を使わせていただきます」
2時間後
「んで、ダラス山に戻ってきたけど」
「ここに誰も来ないように塞ごうよ、あの人間の墓でもあるしね」
昨日戦った人間の墓でもある山頂には魔物も、この惨状を目にする人も来れないように山頂付近を塞ぐ物を探し
ていた
「これならどうアルか?」
ゴロゴロとどでかい石を押してきた
「大きいね、これなら誰も倒れそうにないね」
「ならその傾斜のあたりで抑えてて、魔法で動かなくするから」
その大きな石にデジャヴを感じるアリシア
「なんか、どっかで見た事ある石だな」
それもそのはずである
10年後の行く手を阻んだあの石なのだから
「リンそのまま抑えてて、『ロック』!」
ターリットはロックを唱えた!
リンは手を離すと石は傾斜なのにもかかわらずその場に留まる
「私の魔法は協力よ、無理に退かそうとしても滅多な事じゃ退かせないわ」
試しにアリシアが蹴ってみてもビクともしなかった
「んー、まぁいいか。それじゃあとは、この先のピリオドタウンを挟んで魔王城だな」
「もう少しだね」
一行はダラス山を滑るように降りていく
ヒューリーの効き目が残っていたからだ
「スリルがあり過ぎるよ、道から外れかけたし」
「俺なんて道から外れてそのまま尻から落ちたぞ」
「楽しかったアル!また今度やるアル!」
「「「やらない!!」」」
馬車が壊れてないかを確認し、全員を乗せてから再び走らせる
ピリオドタウンに着く
この時代のピリオドタウンは魔王城に近いため街中には武装した民間人やいかにも強そうな戦士などが歩いていた
武器や防具も、これまでの街とは比べ物にならないほど、頑丈で殺傷力の高い物が揃っている
「俺たちの時代と違ってこっちの方が物騒だな」
「目つきだけで殺されそうな勢いです」
「アリシアも睨み返してみるアル、挨拶の可能性もアルかも」
「んな訳あるかい!」
とりあえず、魔王に挑むため殺傷力の高そうな武器を選ぶ
ここにある物でも、トゲ付きハンマー、ギザギザの歯が特徴の剣、鎌と槍が一対になった槍、骨を砕く様なグローブと本当に殺意が篭った武器ばかりだ
防具は魔法が込められている鎧、女戦士用の防御、魔法防御が異様に高い露出が派手なビキニアーマー、賢者の服に動きの邪魔にならない様作られた武闘家の服と我々の着れるものも揃っている
「みんなが装備できるものは買っていこうよ、魔物も倒してお金が手に入ってるし」
店員に会計を求める
全ての計算を済ませると、「合計160000Gだ」と言われた
魔王城の目の前の街のため、物価が異様に高くなるのは仕方のない事だった
「一気にお金が減っちゃったよ」
「気にするなよ、俺たちの時代じゃこの金は使いもんにならんだろ」
「いいわねこの服、魔力が溜まる感じがゾクゾクする」
「凄いアル!めちゃ動きやすいアル!」
一行は、自分達の新たな装備にはしゃいでいた
〜その頃、魔王城では〜
『フッフッフッ、感じるぞ!忌まわしき勇者の気配が』
『⋯⋯⋯⋯⋯⋯』
『フッ、お前は魔王でありながら勇者と共に冒険したそうだな、ルビスよ』
『⋯⋯⋯⋯⋯⋯』
『もうすぐお友達に逢えるぞ、そのお友達をお前は自分の手で殺すのだ、奴らは友を前にしてどう叫ぶか、楽しみだな』
『⋯⋯⋯⋯⋯⋯』
『では、ルビスよ。お前はここで勇者と戦うが良い、この存分に広い玉座の間でな、仮にお前が倒されたとしても、この我が直々に殺すまでだがな』
勇者と魔王との距離は刻々と近づいている
果たしてギルはルビスを元に戻すことは可能なのか──