第8話〜前線基地を叩き潰せ!〜
山頂には魔物達の住居があり、様々な種類の魔物が歩いている
「うわ、かなりの魔物が居るね」
「これだけの数を相手にするのか、ゾクゾクするぜ」
ギル達はバレないよう住居を見下ろせる位置に身を潜める
スライムにオーク、ゴブリンなどが確認できた
「これだけいると一気に攻めてもやられそうだよ」
「誰かが囮になるアルか⋯⋯」
「「「ジッー」」」
三人はアリシアをじっと見つめる
「なんだよ!こっちを見て⋯⋯まさか、俺が囮か!」
「アリシアさんなら、囮になっても大丈夫でしょ?」
「いや、戦士だからと言ってもだなぁ」
そんなアリシアの背後にいつもの如くギルが指を構える
「問答無用!突撃ぃー!」
ドスッ!
「うがあああ!」
アリシアは住居の中に真っ逆さまに落ちていく
一瞬魔物の動きが止まるが、焦ったようにアリシアを追いかける
「うわぁぁ!覚えとけよ、ギルー!」
「ターリットさん!アリシアさんの援護をお願い!」
「はいはい、囮を追いかけてる所をまとめてドカンね!」
ターリットはアリシアと追跡している魔物達を追いかける
「僕とリンさんは魔物達の指揮をしている者を探して倒そう」
「了解アル!でも指揮してる魔物なんて⋯⋯」
「居るよ、きっと。これだけの魔物を操るには必ず長の役割を持つ魔物がいるはずだからね」
ギルとリンは住居の中を隈なく探した
「見つけたぞ!お前がここの魔物達を統率していた魔物か!」
かがり火に照らされた横顔はまるで人の様ではあるが、ただれている
人が魂を魔物に売り、魔力で醜い姿になった人の成れの果ての存在がそこにはいた
「なんだ、貴様らは。我らが魔王に楯突こうと言う馬鹿な人間か?」
「そうだ、僕たちは魔王を倒すために旅をしている馬鹿だ。それがどうした!」
「否定しないアルか⋯⋯」
『魔王を倒す』と言うワードに反応し、立ち上がる魔物
持っている杖をかざすと室内で強い突風が吹く
「ぐぁ!」
「きゃあ!」
ギルとリンは突風に弾き飛ばされ、外に出されてしまう
魔物は住居から出てくると、周りを見渡した
「ほう、他の魔物は貴様の仲間を追いかけたか。それはそれで好都合だ、邪魔をされずに済む」
「なんだと!」
「コイツ、強いアルな!」
魔物は力を溜め始める
「悪いが貴様らと相手している暇などないのでな、最初から本気で行かせてもらおう」
魔物の体がみるみる大きくなる
筋肉は太く、身長も見上げるほどに
「そんなのありアルか!」
「これだけでかいと、足から狙うしかないか!」
「死ねぃ!小僧!」
大きな鉤爪がギルに向かってくる
ギルは飛び退けてそれを交わす
大きな鉤爪が地面に突き刺さる
魔物は鉤爪を抜くのに少し手こずらせている
「もしかして、アイツの腕を伝ってけば、目とか攻撃出来そうだな」
「それなら任せるアル、ワタシが注意を引くから、攻撃は任せたアルよ!」
魔物は鉤爪を抜くと、自分の周りを走っているリンにターゲットを向けた
「小娘が!目障りだ!」
「当ててみるアル!」
魔物の鉤爪が迫り来る
リンは華麗に避け、またも地面に刺さってしまう
「クソ、またか!⋯⋯なに!」
魔物が目にしたのは自分の腕を伝ってくるギルの姿
ギルを叩き落とそうともう一つの腕を振り下ろす
「よっと!」
ギルはもう一つの腕に飛び乗り、さらに魔物の顔に近づいていく
「ッ!」
「せやぁ!」
ズシュ!
「ウオオオオオオ!!」
魔物の右目に剣を突き刺す
あまりの痛さに遠くでも聞こえそうな大きな雄叫びを上げる
すかさずギルは左目にも剣を突き刺す
ズシュ!
「ガアアアアアアア!!」
両目を失った魔物は片方の腕で顔を覆う
「な、なにも見えない!光も、忌まわしき勇者も!」
「トドメだぁー!」
地面に降りていたギルは剣を魔物の眉間に投げる
スッと刺さると魔物は剣を抜こうとする
「まだだ!まだこの命、尽きてはおらぬぞ!」
「ドリャー!」
リンは体を伝って、剣の柄頭に蹴りを加える
ゴスッ!
剣は眉間に深く突き刺さると、魔物の動きは止まってしまった
魔物は倒れこみ、魔力で得た体は元に戻る
人間の姿に戻ったが、瀕死の状態だ
「これが本当の姿⋯⋯」
「うぅ⋯⋯き、君は確か、俺が襲っていた。」
「喋らないで!傷口が開いてしまいます」
元に戻っても、戦いの傷はそのまま残っているため、生身の体じゃ地獄のような痛みだろう
「ど、どうせ、死ぬさ。でも、冥土の土産に君の名前を聞かせてほしいな」
「僕はギル、これからこの世界を救うんだ!」
「ギルくん⋯⋯無事に世界を⋯⋯取り戻すん⋯⋯だよ⋯⋯」
「最後の最後で、心を取り戻したアルね。この人の為にも、早く魔王を倒すアルよ!」
ギルは男の遺体を見つめ、手を合わせる
目を瞑り、死者を出来る限りのことで弔うことにした
「あ、ギルくん。アリシア達はどうなったアルか?」
「いけない!すっかり忘れてたよ」
燃え広がる魔物の住居は男の遺体を飲み込んでしまった
一方、アリシア達は
「ターリット!早くしろ!体力が持たねぇんだよ!」
「チャチャっと終わらせてあげますよっと、『メドロイア!』」
ターリットはメドロイアを唱えた!
アリシアの後ろを走る魔物の大群に、炎と氷が入り混じった説明のつかない大きな球体が直撃する
「うお!なんて爆風だ、魔物もこれじゃひとたまりもねぇな」
アリシアの後ろを追いかけていた魔物達は跡形もなく消え去った
「さてと、ギル達と合流しねぇとな」
「さっさと帰りましょう、もう夜中よ」
辺りも暗くなっている
アルバドの街明かりがぼんやりと暗闇を照らしていた
「お待たせー!降りてくるのに時間かかっちゃったよ」
「もう夜になったアルから、早く休みたいアル」
「さっさとアルバドの街に戻るぞ、パピラスさんに会うのは明日だな」
一行は、アルバドの街に再度戻り、先ほどの戦いの疲れを癒すことにした
最近気づいたのですが、タイトル分けなくて良かったんじゃね?と思ってきました