第7話〜ダラス山の前線基地〜
「昨日は散々な目にあったぜ」
アリシアは尻をさすりながら言う
お尻に関しては女戦士は全身に防具をつけない為攻撃を受けた際は悲惨なことになる
「でも、珍しいタイプだったね。あんなスライムは、元の時代だと居ないのに」
「魔王が2人に居るからな、魔力を多く吸収した魔物は突然変異する事はあるさ」
ターリットによれば魔物の能力は体内の魔力によって上限する様だ
魔力が低く、序盤に出会う普通のスライムは弱いが
仮に魔力を増幅させると桁違いの強さを持つ個体になったりする
「まぁ、スライムは所詮スライムさ。でも質より量とも言うし、スライムでも数で押されたら一瞬だ」
宿屋の前でそんな話をしていると、老人が声をかけてくる
「おぉ、良かった。まだ出ていかれてなかったのですね。私はこの街の町長をしているパピラスでございます」
パピラスと名乗る老人は丁寧に挨拶をしてくる
「これはご親切にどうも。それで俺たちに何か用か?」
「はい。スライムを倒した旅人を見込んでの話でございます」
パピラスは曇った顔をしている
困り事があるに違いない!
「何か困ってるの?僕たちで良ければ、許容できる範囲なら力を貸すけど」
「本当ですか!なら、立って話すのもなんですから私の家に案内します」
パピラスについて行き、『町長の家』と書かれた分かりやすい看板が立ててある家に入る
ギル達は広いテーブルの椅子に座り、パピラスは客用にと人数分のお茶を持ってくる
「分かりやすいですね、あの看板」
「えぇ、そうでしょう。何しろ家の作りがほとんど同じなものですから、判別が付きにくくて⋯⋯」
「そんな事より、困った事ってなんだ?」
些細な会話に割って入る様にアリシアは聞く
パピラスはコホンと咳払いをし、改まって口を開く
「えー、困った事なんですが、その前にこの街の先にあるダラス山はご存知で?」
「もちろんご存知ですよ、それが何か?」
「実は以前からダラス山の山頂で煙が上がっているのを目撃した住民がいまして、旅商人によれば山頂には魔物が前線基地なる住処を作り、攻撃を目論んでいる様です」
パピラスは、深く気を落とす
「それで、あのスライム達を倒せた俺らならもしかしたらって所か」
「はい。勿論タダでとは言えません、ちゃんと報酬も用意しますよ」
「よぅし!乗った!」
「気が早いね、アリシアさんは」
「でも、ダラス山は結構高いわよ。3000mもある山なんて何日掛かるか」
「修行が出来て私は嬉しいアルよ!」
「まだ修行する気なのか、リン」
パピラスはそんな会話に顔がパッー!と明るくなる
「本当にありがとうございます!皆様の吉報をお待ちして待ってますよ!」
そんなパピラスの家から出て、街の外
一行は馬車でダラス山まで向かう
山は遠目で見ても大きいのに、近くで見るとさらに大きく見える
登山道は道とは言えず、少々凸凹が目立つ
馬車では斜面を上がらない為、馬車から降りて歩いて登る
山を登ってかなり経つ
街を出た時の太陽は真上だったのに今じゃ西寄りに傾いている
「あーん、疲れたー!足パンパンよー!」
「俺たちの知るターリットはどこにいったのやら」
「口調なんて、おっとりしてないもんね。アルナさんみたくなってるよね」
「足腰鍛えられるアル!」
リンの修行狂は平常運転だ
ターリットは以前にも増して、口調が子供っぽくなっている
「こんな状態じゃ戦った時、体力持たないでしょ!」
「仮にも魔法使いなんだから、浮かべる魔法でも使ってみたらどうだ?」
「ちょっと待ってね⋯⋯あった!『ヒューリー!』」
ターリットはヒューリーを唱えた!
「うお!体が浮いたぞ!」
「しかも行きたい方に進むね!」
「これで楽できるわ!さすが天才魔法少女ね!」
「せっかく鍛えられると思ってたのに」
一行は斜面をを滑る様な形で山を登る
あっという間に、山頂に着いた