第5話〜馬車の調達〜
ドルテス城〜城下町〜
「あまり変わってないようにも見えるが⋯⋯」
「うーん、ちょっと物騒な感じ」
「若い頃のドルテス王はどんな人アルかなー」
城下町では、そこかしこに兵士が警備をしている
魔王がいた攻めてくるか分からない世の中な為警備体制を怠らない様にしているらしい
「さてと、ドルテス王に会いに行くわよ」
「何か用でもあるのか?」
「えぇ、馬車を手配してみるわ。私が先祖代々の城主と縁があるのは知ってるはずだしね」
ターリットは意外にも王族と関わりを持っていた
なんで教えてくれなかったのだろうか
門の前に行くと、門兵が槍で道を塞ぐ
「何奴だ!王に無断で近づこうとする怪しい奴め!」
門兵の怒号を軽くあしらうように答える
「私はターリットよ、城主であるドルテス王と縁のある魔女よ。魔王を倒すために馬車を用意したいの槍をどけてくれる?」
「は!申し訳ありません!」
門兵は槍を引っ込め、門を開ける
「さ、行くわよ」
ターリットはスタスタと歩いていく
「本当に縁のある魔女だったのか」
「敵にだけは回したくないアル」
城に入り、玉座の間に入る
玉座の間では、若い頃のドルテス王が眉を細め考え事をしていた
「む、何奴だ」
「私よ、ターリット」
「なんだ、そなたか」
一瞬こちらを睨みつけたが、ターリットの声でまた考え込むドルテス王
「何を考えてるの?」
ギルはドルテス王に問いかける
「なんだ、この小さいのと大きい女に武闘家は」
「気にしないで問いに答えて」
ドルテス王は威圧され口を開く
「まぁ、なんだ。魔王が一人だけならまだしも二人となった以上こちらも守りの姿勢だけでは歯が立たないのでな、本当なら誰か強い者が居れば頼みたいところなのだが」
「それなら僕がやるよ」
ドルテス王はカッ!と目を開き、ギルを見る
「ワッハッハッハ!お前みたいな子供に何が出来る!
子供は楽しく外で遊ぶのが幸せってものだ!」
「ドルテス王、笑ってるところ悪いけどこの子勇者よ」
「何ぃ!」
ドルテス王はさらに目を見開く
「バカな、ありえん。たしかに勇者が亡くなったのは知らされ、しかも情報ではもう少し大きい様な」
「それはですね」
カクカクシカジカ
「なるほど、ターリットが言うには信じるしかなさそうだな」
「この子は未来の勇者なの、だから私はこの子について行って魔王を倒してくるって訳」
ドルテス王は立ち上がり、喜びに打ち震える
「いやぁ〜なんと喜ばしいことだ!私たちの希望が残っていたとは!馬車を用意するのは容易いことだ、しばし待っておれ!」
ドルテス王は玉座の間を飛び出し、城中の物に一番いい馬車を用意する様に呼びかけた
少し待っているとドルテス王は嬉しそうに歩いてくる
「お前たち最高級の馬車を用意したぞ、馬も我が国の一級品だ」
「ありがとう、ドルテス王」
「さすが!頼りになるわ、ドルテス王!」
「ふっふっふっ、魔王討伐の知らせを期待して待っておるぞ、小さき希望よ」
「任せてよ、王様」
ドルテス王は手を振りながら見送ってくれた
ギルたちは黒い馬が引くかなり内装がしっかりした馬車に乗り込み、発進させる
「ブルルヒヒィーン!!」
黒い馬は馬車を物ともせずにかなりのスピードで進んでいった
「そういえば、この時代の勇者が着てた伝説の装備はどうなったの?」
「そうだな、着たまんまルビスにやられたから、もしかしたらそのままになってるんじゃないか?」
「そうすると、今着てるこの伝説の装備はどこで手に入れることになるんだろうね」
「パラドックスが起きない限りは大丈夫よ」
ターリットが口を開く
「パラドックス?」
「タイムパラドックスと言ってその時代で本来怒らないはずの出来事が起きるのよ、実際この時代の勇者達が魔王を倒せず、やられた時点で発生はしてるんだけどね」
「え、じゃあ」
「でも、ギルの装備は消えてないから、恐らくは魔王は倒されるわ。倒して元の時間に戻れば後は創世神あたりに頼めば修復してくれるわよ」
「なんと、便利な」
全く揺れを感じない馬車の中で哲学的な話をするギル達であった