第3話〜過去の世界を正すため〜
「ふぅー、ようやく撒いたか」
ゴブリン達から逃げ切れた3人は一息つく
「でも、なんで急に魔物が?」
「もしかしたら、まだ本来の魔物の心を持つ奴らが残ってたのかもな」
3人はアルエ城の方角に歩く
馬車もない為かなり遠く感じてしまう
「おかしいな、あまり街らしきものを見かけないな」
「一つや二つあっても不思議じゃないのに」
「二人ともファイトアルよ!」
程なくして一つの村を見つける
随分と寂れた村だ
まるで何かの襲撃にあった様な
「お!村だ、ちょうどいい話を聞きに行くぞ」
「あっ、ちょっと待ってよ!」
アリシアは村に近づく
家屋はボロボロになっている
住人らしき人も見当たらない
「おーい!誰かいないか!」
「誰もいないアルか⋯⋯」
アリシアは大きな声で叫んでも人が出てくる気配はなかった
「変だな、家はまぁボロボロだが、人がいないなんてな」
「誰か⋯⋯誰⋯⋯か⋯⋯」
か細い声がする
声が聞こえてくる方に近づくと家が潰れている中に人を見つける
「だ、大丈夫か!アンタ!」
「今すぐどかすアル!」
と、言っても人の力では重すぎてビクともしない
「アンタらも⋯⋯魔物になんて⋯⋯手を出そうと⋯⋯するなよ⋯⋯」
「お前知ってるのか?魔物が襲ってくる理由を」
アリシアは聞き返す
男は力なく答える
「なんだ⋯⋯知らんのか⋯⋯魔王バリバルドの仕業さ」
「!?」
「奴ともう一人の⋯⋯魔王のせいで村は!⋯⋯ガハッ」
男は生き絶えた
2人の顔は曇る
アリシアはどこか青ざめていた
「アリシアさん、どうしたの?」
「なんて事だ、そんなバカな」
ギルはアリシアの豹変ぶりに危機感を覚えた
ただ事じゃないと
「魔王バリバルドって誰アル?」
アリシアはハッとした感じで質問に答えた
「魔王バリバルド、かつて世界を滅ぼそうとした先代魔王の名前さ」
「先代?って事は」
アリシアは答える
「ここはもしかしたら過去の世界かも知れない」
「え!」
二人は驚きを隠せなかった
「驚きたいのは俺も同じさ、だけどそれ以外考えられない」
「そういえばさっき、奴ともう一人の魔王って言ってたアル」
「きっとそのもう一人の魔王がルビスだ」
3人は村を後にした
確証は持てないが他に人が住んでいそうな場所を探してみる
勇者が旅立ったアルエ城なら魔物に侵略されていない可能性もある
その可能性を信じ、3人はまた歩き出した
途中、乗り捨てられた馬車が放置されていた
馬と馬車は無事だったが馬車を操作する人がいない
悪い事だが馬車を拝借する
一気にアルエ城に向けて馬車を走らせる
「勝手に借りて良かったの?」
「あぁ、持ち主が居ないんだ。ちょっとくらい借りても平気だろ」
思ったよりもすぐにアルエ城に着いた
城下町では当たり前の様に生活する人達が居た
しかし、魔物の姿は無かった
「やはりな、魔物の姿が見当たらない。それに」
アリシアは一人の女の子を見つける
「ねぇ!勇者様はいつ帰ってくるの?」
「それは、分からないなー。魔王を倒したら帰って来るだろうさ、もしかしたらアリシアちゃんがいい子にしてたらすぐに帰って来るかもよ?」
「うん!分かった、良い子にする!」
アリシアは小さなアリシアを見て確信する
「昔の俺がいるしな、ここは過去の世界に間違いはねぇみてえだ」
「なんであんな可愛い子がこんなガサツ女に」
「真逆に育ったアルな」
「聞こえてるぞ」
ギルとリンは背後からの気配で青ざめた
「とにかく、魔王城に向かう前にアルエ王に会いに行く、この時代の勇者のところに行って手助けしてやるんだ」
「通してくれるかな〜」
アルエ城の門番に話しかける
「すまないが、アルエ王に会いたい。通してくれないか?」
「なんだなんだ、こんな忙しい時に。こっちは魔物の相手でうんざりだってのに人の相手までしてられるか!帰んな」
口の悪い門番にそう言われ、アリシアはカチンと来る
「お前みたいなやつにアルエ城の門番をさせるたぁ、この時代のアルエ王はいい加減だな」
「なっ!?コイツ、反逆罪で牢に入れてやろうか!」
「何事だ、騒々しい」
少し若いアルエ王が出てくる
やや白髪より黒髪の方が多い気もする
「はっ、怪しい輩が王に会わせろと申してきたので引き返せと命じたのですが」
「俺たちは怪しくない!勇者の居場所を聞きにきただけだ」
アルエ王はあまり浮かばない顔をする
「すまないが、勇者のことに関しては残念に思う。勇者の一行は旅立ってすぐに魔王に出くわした様だ」
「えぇ!」
アルエ王は話を続ける
「魔王に出くわした勇者一行は呆気なくやられてしまった、ただ妙な事に我々の知る魔王とは姿が違ったのだ」
「それはどんな」
「羽の生えた美しい女性の姿だったのだ、本来魔王には羽が生えておらんし、性別は男だ」
「なるほどご協力ありがとうございます、アルエ王」
アルエ王は顔を元に戻す
「よいよい、だが世界が滅びるのも時間の問題だな。わしらでは到底太刀打ちできん、ゆっくり余生を過ごす事だな」
アルエ王は城に戻って行った
「用は済んだか?さぁ、帰んな、俺たちには未来なんてもうないのさ」
3人はアルエ城下町を出る
「ルビスで間違いないみたいだね」
「なんで奴がこんな事をしているかは不明だが、魔王城に向かう事は確かだな」
「正気を失ってるだけなら正気に戻すだけアル!」
「ルビスがこの時代に介入した事によって勇者一行が倒されてしまったからな、このままだと俺たちの時代も危ねぇな」
3人は馬車に乗り込み、魔王城へ向かった