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勇者くんと女戦士さん+β  作者: えむえむ
10/10

第10話〜神様のいいとこ取り〜

馬車を引いて歩く一行

魔王城への道では魔物がうじゃうじゃいるため、流石に馬車で突っ切るわけにも行かなかった


岩がゴロゴロと転がっており、その影から魔物が飛び出してくる


「クソ!量が多いな、でも数は減ってきているはずだ」


襲ってくる魔物を切り裂いていくアリシア

だが、これだけの数を相手にしている体力はほとんど残っていない


「こいつら無駄に湧いて出てくるわね!」


「少しずつ前に進むアル!」


ターリットとリンも大量に沸く魔物と応戦している


かなりの数を倒していると親玉のような風格の大きな首無し鎧が歩いてくる


鎧には闇のオーラが漂っている


鎧の中で呻き声が共鳴する


「ゔゔゔぅぅぅ」


「コイツを倒せば!」


アリシアは首無し鎧めがけ剣を振る


ガキィン!


剣は鎧に弾かれる


「かってぇ!なんだこの馬鹿みてぇな硬さは!」


「あの鎧の周りを漂うオーラが鎧を固くしてるのかも!」


「なら聖なる魔法ならどうよ!『ホーリー』!」


ターリットはホーリーを唱えた!


「ゔゔゔぅぅぅ!!!」


「効いてるみてぇだな!」


ホーリーの聖なる力により、鎧に掛かっていた魔法の効果が薄れる


「ここだぁ!」


アリシアは踏み込みながら、剣で横に切り裂いた


「ゔゔゔぅおおぉ!!」


首無し鎧は力なく倒れる

首無し鎧が倒れ、その時生じた砂煙がギル達を包む


「うわ!目に砂が!」


「全員目を塞げ!」


ある程度収まり、周りを見渡すと魔物達が綺麗さっぱり居なくなっていた


どうやら、首無し鎧が魔物達の発生源の役割をしていたらしい


「ふぅ、これで先に進めるな」


「えぇそうね、馬車は待機させることにしましょう」


馬車を魔王城からちょっと離れた場所に避難させ、一行は魔王城に入っていく


「なんだか、胸が苦しいような」


「大丈夫ですか?その胸についてるもの外せばいいんじゃないですか?」


「バカヤロー!そうじゃねぇ!なんかこう、気分が悪りぃんだ」


そう言われればどことなく気分が悪い

なんとも言えない、不思議な感覚だ


「それは魔王の魔力のせいよ、魔王の魔力に触れている時はその人の気分が悪くなるだけじゃなく、怒りや憎しみが増していくのよ」


「でも僕たちの友達の魔王はそんな魔力出てなかったけど⋯⋯」


ルビスは魔王だが、ギルやアリシア、町の住民などが怒りや憎しみが増したことはなかった


「だって彼女は自分から魔力を抑えてるんだもん、それは貴方達を敵だと思ってないからよ」


そんな話を交わしながら、魔物とエンカウントを繰り返して、数十分後


「やっぱり僕たちの世界の時と変わらないね、この扉」


「あぁ、この先が玉座の間だな」


大きな扉の目の前に立つギル

ギィーと音を立てながら開く扉


玉座の間には見覚えのある人が後ろを向いていた


「ルビス!!」


「なんだ、無事だったか!」


ギルとアリシアは背を向けるルビスに駆け寄る


ターリットとリンは警戒する


「ねぇ、様子がおかしくない?」


「ワタシもそう思うアル、油断しないように」


ギルとアリシアは再び声をかける


「どうしたのルビス!心配だったんだよ!」


「おいおい、久しぶりの再会だってのに返事もなしか?」


『⋯⋯⋯⋯⋯⋯!』


「ッ!ギル、アリシア!避けて!」


ルビスは顔一つ変えずギルとアリシアを攻撃してくる


間一髪、飛び退けて交わす


「どうしたの!ルビス!」


「⋯⋯⋯⋯⋯⋯!」


「ダメだ、通じないみてぇだ」


ルビスは重たい一撃でギル達を殴りつけてくる


「操られてる可能性もあるわ!とりあえず大人しくさせましょう!」


「とは言ってもどうすれば!」


ギルは考える

今はアリシアがルビスと対峙している

ルビスは前方のアリシアに夢中になっている


あとは、動きを止めれれば

すなわち、あれが可能だ!


「アリシアさん!そのまま、ルビスの注意を引きつけて!」


「お、おう!任せろ」


アリシアはルビスの注意を引きつけ、攻撃をかわしていく


「ターリットさんはなんか拘束できる魔法を用意して!」


「ふーん?なんか思いついたわけね!良いわよ!」


ターリットは魔法の詠唱を始める


「ギルくん!ワタシは何をすればいいアルか?」


「えっとー、頑張って!」


「ワタシの扱いが⋯⋯」


リンはションボリとしている


「魔法の準備出来たわよ!」


「アリシアさん、避けて!」


アリシアは大きく後ろに下がる

ターリットの魔法がルビスに当たる


「⋯⋯⋯⋯⋯⋯!?」


動きが封じられたルビスの後ろにギルが指を構えた状態で現れる


「これでどうだ!」


ドスッ!


『⋯⋯⋯⋯⋯⋯!!』


ルビスは足から崩れ落ちる


「ルビス!」


ギルはルビスを抱き抱える


ルビスの瞼がゆっくりと開き、


『ふっ、まさかこんな事で催眠が解けるとはな』


「良かったー!」


「いや、まだのようだ」


空中を見上げると厳ついお爺さんのような風格の魔族が浮いていた


『なんと見苦しい感動の再会だ』


「なんだと!」


「テメェが魔王か!」


ゆっくりと魔族が降りてくる

城に入った時のなんとも言えない気分の悪い感じがさらに強まる


『ほう、勇者がこんな小さく、そしてこんなにも大きな希望で満ち溢れているとはな』


「お前がルビスを連れてきたのか?」


『あぁそうだ、儂は本来ならば勇者に殺され次の魔王であるルビスがこの城を収めるはずだった』


『だが、儂はある時不思議に思った。勇者に殺されずに魔物が世界を征服した世界はどんなに素晴らしいものかとな』


魔王の話は続く


『勿論、儂一人では流石に成熟した勇者達には勝てないだろう。だが若く力の衰えを感じない魔王が居たら話は別だ』


『儂は時空を歪め、ルビスをここに連れてきた。共に世界を征服しようとしたが、魔族の癖に人間と共存などと抜かしおる』


『だから、催眠をかけ手始めに勇者を殺させたのだよ。これで儂を脅かす者はいないと思ったが、まさかルビスの『親友』である、勇者が時空を超えやってくるとは思わなかったが』


「ゴタゴタ思い出話なんてすんな!気が短いんだ、俺は!」


アリシアはキレた


「テメェの野望なんてまっぴらだ!悪いが魔王には死んでもらうぜ」


「ルビスを使って人を殺させるなんて許さない!」


ギル達は構える


『ハッハッハッ!面白い、言っておくがルビスから拝借した魔力で儂の全盛期の力に戻っているが後悔はするなよ』


『グラビティダークネス!』


闇の魔力が重力の塊となりギル達を押しつぶす


「ぐっ!動けない!」


「こんな、魔力の力が強いとは⋯⋯」


魔王の魔力により、瞬く間にピンチになってしまったギル達


『あーあー、テステス、ただいまマイクのテスト中』


突然ひょうきんな聞いたことのある声が聞こえてきた


「この声って⋯⋯たしか⋯⋯」


『おっと!今大ピンチって感じだね!ギル君達』


声の主は創世神アルバレートだった

このシリアスな雰囲気ぶち壊しのムードのトーンで声をかけてくるなんて、誰が想像できただろう


『いや〜、探すのに手間取ったよ。なんだってタイムトラベルしてるとは思わないもん』


『なんだ、このふざけた声は!』


アルバレートはマイク越しにまた話しかけてくる


『あちゃ〜、ダメだよ?魔王ドミルスさん、この世界のタイムラインを捻じ曲げちゃ』


『なんだと!儂が死ぬことが初めから決まっていたと言うのか!』


アルバレートはその問いに軽く答える


『決まってないよ、むしろ魔王が世界を征服するタイムラインも存在している』


『ただし、自分の本来のタイムラインを書き換えて別のタイムラインと同じにしてしまうともう一つのタイムラインとゴチャゴチャになってしまうのさ』


『ふん、タイムラインなぞ恐るるに足りん。儂はこの勇者供を始末する、ただそれだけだ』


ドミルスはさらに力を加える


『全く老人は頑固なんだから、仕方ない僕が直々に天罰を下そう』


ドミルスの目の前にアルバレートが出現する


『何ッ!?』


『悪いけど老後の面倒は見れないんだ、大人しく寝ててよ』


ドミルスの体が徐々に消滅していく

足先から少しずつ


『ぐぉぉぉぉ!儂の苦労が!世界制服の野望が!』


『だから、この世界のドミルスさんは死ぬ運命なの。世界征服は他のタイムラインのドミルスさんがしてるから』


ドミルスの体は完全に消滅した


「倒した、のか?」


「これで帰れるな」


『すまない、私のために』


ルビスは体を起こし、助けに来た親友に感謝する

そこに急かすようにアルバレートが喋ってくる


『はいはい、感謝しているところ悪いけどこの世界も元のタイムラインに戻ろうとしてるから早く脱出しないと消えて無くなっちゃうよ!』


「えぇ!どうするの!」


『僕に捕まって!さぁ、早く!』


「ターリット、リンも手を!」


ターリットとリンは駆け寄ってくる


「なんかずっと話についていけなかったわね」


「タイムラインとか知らないアルよ、早く帰りたいアル」


アルバレートに触れ、元の世界のアルエ城に着いた


『さ、着いたよ』


周りでは、魔物と人間が楽しく喋ったりしている光景が広がっていた


「護れたんだね、この世界を」


「まぁそういっても、神様のおかげだけどな」


「あれ?そういえばターリットも付いてきてよかったの?」


ターリットも一緒に来ていたことに気づく三人


『あぁ、ターリットなら心配ないよ、僕たちと同じ神様だから一応』


「「「ここに来てとんでも発言!!」」」


「黙ってたけど、私には『監視の役割を持つ神様なの』流石に最初にあった時はおっとりした感じ出してたけど、まぁいいかと思ってね」


「あ、そうか、神様だから簡単な魔法の詠唱も省いたり、名前を適当につけても発動したのか」


ターリットの不思議な謎が解けた所でアルバレートは自然と姿を消していた


「じゃあ私はあの森に帰るから、またね」


ターリットはワープを使って行ってしまった


「リンはどうするの?」


「ワタシはアルエ王に会ってくるアル」


「行ってらっしゃい、リン」


リンはダッシュでアルエ城に向かって行った


「アリシアさんは?」


「俺は適当にブラブラ旅を続けるさ、魔物なんて魔王がいる限り湧いて出てくんだ、少しぐらい悪い奴らがいてもおかしくないからな」


まだ旅続けるのかと呆れた感じに、どこか寂しい感じの表情を浮かべるギル


「じゃあね、アリシアさん」


「なんだよ、しみったれたツラしやがって。んじゃ、俺は行くからな、たまには親孝行でもしたらどうだ?」


「い、言われなくてもそれぐらいするよ!おりゃ!」


プスッ!


「痛ッ!くねぇぞ?」


ギルは走って行ってしまった

アリシアはこれが彼なりの別れの挨拶なんだなと思い、再び旅に出た


その後、リンは武闘家の顧問としてアルエ城に留まり、ギルは長い旅を終え、再び両親との生活が始まった


これにて、勇者ギルの冒険は幕を閉じる












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