表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
兄弟  作者: なさ
3/3

 僕は隣の弟の部屋に入った。弟はいつものように机に向かい、何かを書いている。おそらく勉強しているのだろう。小さい頃から遊び呆けていた僕とは違い、弟は生まれてこのかた勉強ばかりしている。

「二郎、ここに置いとく。」

そう言って僕が部屋の中央に置いたのは、弟宛に届いた荷物だった。差出人は祖母。祖母は弟のことを溺愛している。長男の僕には何故か目もくれず、弟には毎月いろいろなものを送ってくる。本や望遠鏡、世界地図など、その内容の殆どは教育のためのものだった。僕よりも弟の方が勉強好きで、将来が有望だから応援しがいがあるのだろう、と僕は勝手に思っている。なにせ祖母には僕が生まれたその日しか会ったことがないし、ましてやそんなに昔の記憶が僕にあるわけがないので、特に弟を羨ましいとも思わない。

 いつも幸せに暮らして来た僕だったが、一つだけ、時々不満に思うことがある。それは、一言で言えば僕の体格と顔つきだ。弟は、よく学校の行事で親が集まる機会があった時、友達やその親に、「お母さんに似ているね。」と言われる。これは誰でも1度は言われたことがあるような台詞だろう。しかし僕は、生まれてこのかた一度も、その言葉を言われたことがないのだ。弟と母は、彫りが浅くて黒髪で、背が高い。対して僕は、彫りが深めで茶髪で、背は低い。しかし僕は、自分が母親に似ていると言われないのは僕が父親似であるからだろうと確信している。自分は間違いなく母から生まれたのだから、そうで無いはずがない。父親は、弟が生まれた翌年に亡くなった。父の写真がなぜか一枚も残っていないのがとても惜しい。僕には父がいた頃の記憶も、亡くなったという実感もない。勿論、父親の顔など覚えていない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ