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一期一会  作者: 綿花音和
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祈り

 南君や詩織ちゃん、優しい双子の姉妹さんはたぶんクラスでもアッパーな階級だったのだろう。皆とても思いやりがあった。また同時に自身に対してプライドを持っていたように今は思う。


 素晴らしい出会いのあった藤棚小学校。

 それでも異質な者に対して、どれだけごく普通の子供が罪悪感を待たずに残酷になれるのかを痛いほど感じた。

 幼稚園時代も結構ひどい目にあってはいたが、自尊心が育ち自分を多少好きになってからの方がずっと辛かった。

 それでも私は人生の初期にそういう目に遭って良かったと思っている。そしてもしあの頃に還れるのであれば私は同級生達とただ手を繋ぎたかったと強く願うのだ。なぜか恨む気持ちはあんまり湧いてこないのだ。ただ友達になりたかったと、蔑み以外の感情をみたかったと今でも思っている。


 私には寝る前に祈るという妙な習慣があった。家に居場所もなく、周囲からの拒絶が激しい頃、自分の中の誰かと会話していたのだ。

 自分の心の中の何と会話していたのか詳細は思い出せなくなってしまった。いつも相談したり感謝したり、明日は南君と沢山話せたらいいななど他愛もないことから、世界の平和まで多岐にわたることを祈っていた。

 振り返るとちょっと笑ってしまうが幼い私には必要な行為だった。


 私の好きな作家さんが『その日の天使』というエッセイを書いている。まとめると、もう八方塞だと落ち込んでいたら陽気な焼き芋の呼び込みが聞こえて救われたという話だ。


 私も生まれてから、命を投げ出そうとしたことが何度かあったが、その日の天使にずいぶん助けてもらった気がする。

 人を好きになることを学んだ私は、つらいこともあったが、それ以上に幸せを感じられるようになった。

 いつまでも、ここに藤棚小学校にいたいと私は思っていた。














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