表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一期一会  作者: 綿花音和
2/9

真理子ちゃん

 私は少し発達が遅い子供だったという。生まれたとき、泣き声を上げず看護師さんがパチパチと叩いても反応がなかった。慌てた病院のスタッフが酸素吸入器を持ってきてやっと呼吸を開始したと母から聞いたことがある。その不気味な静けさがとても長く感じられたと。


 同級生に比べると動きも遅く、会話のスピードもゆっくりだった私は幼少から仲間はずれにされることが多かった。

 幼い子の中にも序列は存在していた。リーダー格の女子に目を付けられた私は、いつも騙され無視され物を隠されたりもした……。当時はわかっていなかったが、今同じ目に遭えばかなり辛い状況だった。


 ある日、石を投げられて運悪く左目にヒット。私の目は内出血した。父は激怒し、烈火の如く相手方の家に次々と怒鳴り込んで行った。このときの父は、私のことが心配だったというより、自分の子供がそういった目にあったのが許せないというていだった。だからそれで気持ちが落ち着くことはなかった。

 母と弟の方が冷やしてくれたり心配してくれた様子が心に残っている。

 自分の沽券やプライドに固執した行動というのは幼心に醜く感じてしまった。


 しかし、年長の夏、転機は訪れる。リーダーが引越し№2の真理子まりこちゃんが繰り上がり、リーダーになったのだ。


 真理子ちゃんは振り返ると、とても大人びた子だった。私への弱いものいじめも止めさせて、女子グループがみんな仲良く出来るようにしていた。

 友達はいなかったが卒園式のとき『思い出のアルバム』と『ありがとうさよなら』を歌いながら、私は恥ずかしいくらい泣いた。

 毎日通った教室、優しく慰めてくれた園内の植物。

 友達にはなれなかったけれど顔は良く見知った同級生との別れがとても辛かったのだ。その様子をみた母は

「この子は感受性が強い子なのかもしれない」

 と思ったそうだ。


  鳥取県では、大篠津小学校に入学。各学年一クラスしかない小さな田舎の学校であった。

  相変わらずマイペースな私は対人関係で躓き続け、父の転勤でその夏に愛知県の藤棚小学校に転入することになった。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ