爆走中~彼らの世界はあんなこんなで出来ている~
「か~なっこちゃあああんっ、俺のお小遣いはぁっ?」
半べそ気味の大男がセーラー服の女性に抱き付いた。
「朝から五月蝿いっ。この変態爺わぁっ」
茶髪のショート、170ちょっとのスレンダーな高校二年生、本編主人公の関口加奈子、長女です。
「ガバッ、あ、朝からナイスなエルボーだよ我が娘…って無視ぃっ?」
「おはよぉ~あ、お父さん邪魔―。お姉ちゃんおはよう」
「おはよ美奈子。髪の毛やろうか?」
「ううん、明良君がやってくれるって言うからいい―」
「うぅ、美奈子までつれな~い…ぐはぁっ」
「あ、ごめん父さん踏みつけた。姉さんおはよう。ほら美奈子、髪やってやるからこっち来い」
「おはよう明良。じゃあ二人とも、用意出来たらご飯食べなよ」
「はーい」
「ああ」
ロングの髪の毛をボサボサにしながら、二階から寝ぼけ眼で降りてくるのは妹美奈子、次女。その後ろから眼鏡をかけ櫛を持ちながら降りてくるのは長男の明良。ちなみに双子の小学六年生。
「みんなひどい~、実の父に向かって…」
「…清二さん、隣へ来て」
「…多香子さぁぁ~ん、やっぱり俺には君だけだよ~って…?」
「…ああ、良い枕…五月蝿くしたら、怒るからね」
「はいお父さんお小遣い、ここに置いておくから」
「………」
眼鏡を外して隣の夫に寄りかかるのが関口家最強の低血圧者、母多香子。隣で項垂れているのが家族中のやられキャラ、父の清二。さて話はどこへ転がるのか。
「おはよーやー、今日もやっぱり麗しいねぇ」
「おはよ。いつも通りの朝だから」
「あ、ちょっと待って…ありゃ~、また変形している。あたしの髪ってそんなに剛毛なのかしらん?」
「いや、ただ美紀の握力が強すぎるだけだと思うけど」
「そう?日常生活に支障はないけど。シャーペンの芯がよく折れるとか、とっさに人の腕を掴むと赤く跡が残るぐらいで」
「そのとっさの時が痛いのっ、あほっ」
「いやん華の女子高生がそんな言葉使っちゃ。腕に残る赤き跡、それはあたしの所有の証、ららら~なーんてっ。今日もせかいは美しいわっ」
「…今気付いたけれど、これは深刻な事態だわ…」
「どうしたの加奈子。さ、親友の美紀ちゃんに話してごらん?」
「あたしの周りって…まともな人がいない。普通の人がいない」
「それは深刻な事態ね…普通の人は何にでも使えるから一人や二人近くにいないと大変よ?使える人がいなくなっちゃうじゃない」
「美紀さん、自分が普通でないことを自覚しているのは良いんですが…」
「え、あたし?あたしは普通なんてレベルじゃないわよ、もっとハイレベルの一般人よっ」
「十分変人の仲間入りじゃあっ」
登校中、親友の美紀と一緒になる。確かに彼女の髪は「かたい」が、髪止めやピンがことごとく変形するのは彼女の握力のせいだ。朝は何時でもハイテンション、そしてとっても意味不明。こんな会話を繰り広げながら、二人は仲良く学校へ。
迎えた放課後、学園祭間近なせいもあり、クラスは必死、部活は悶死。何故かと言うと…。
「あっのさ~あ~?何で出来ないと言うかなぁ~。…こちとら不眠で脚本あげたんだから死ぬ気でやりやがれてめぇらっ」
「美紀さん美紀さん、一年生退いているからもうちょっとソフトに言っておやり」
「無理。そんなこと言うなら加奈子やれば」
「う~ん…一年生ちょっとこっち来て、ね?」
美紀の言動にやられ、ステージに見立てた壇上隅に震えて固まっている一年生を苦笑しながら手招きして呼ぶ。冒頭で申しましたとおり、彼女は170ちょっとのスレンダーな高校生。演劇部に所属しておりますと、当然配役は男役。救いの王子様よろしく鶴の一声にピヨピヨつぶらな瞳達は素早く集合。
「せ、関口先輩~」
「いつもは変人止まりなんだけど、演劇が絡むと狂人になるから、出来ないなら最初からやらない方が良いよ?気付くと校舎裏に磔られていました、何てことよくあるから」
顔が青ざめていく一年生。出来ないって言っちゃった…。
「でもね、これから頑張って練習して出来るようにするんなら、これ、教室とってあるから練習しておいで。二、三年生で見てあげるからさ」
「はいっ、ありがとうございますっ。わ、私達やりますっ、頑張りますっ。行こっ」
感動しながら去っていく一年生。しかしこの時「無理です」何て言っていたなら、加奈子の怖さが味わえただろう。
「良かったねぇ~、今年の外部一年生素直で」
おっとり衣装を扱いながら、鴇が声をかけてきた。
「ふんっ、張り合いないのよ張り合い。ちょっとそこのエキストラ、こっち来なさいっ見るからっ」
「はいっ、お願いしますっ」
「最後に演技見て修正していくのは監督と顧問でしょ、脚本の美紀が仕切ってどうするの」
「二人とも捕まらないんじゃあたしがやるしかないじゃない。いっそのこと外部生取るの止めてくれれば良いのに。…それより入らなきゃ良いのに、何で演劇選ぶんだか」
「有名だからしょうがないよねぇ~、加奈子ちゃん」
「まあね。でもあたしが入ったのって、人数が足りなくて廃部寸前だったからなんだけど」
「そう言ってたわね、加奈子は。…もう良いわよっ、なかなか良いから台詞増やして良い?」
「本当ですかっ、ありがとうございますっ」
「おいおいまた勝手に…」
「鴇は何で?服作るなら被服部に入れば良かったのに」
「今流行の、じゃなくて伝統衣装?長く愛されてきた服を作りたかったからぁ。それに皆でわいわいやった方が、一人で作ってお披露目するより楽しかったのです~」
「なるほどね。…よし、次っ、そこの女中役、会話の場面やってっ」
「「はいっ」」
「美紀ちゃんは~?」
「そういえばあたしも聞いたことがない。何で?作品書くの得意なんだから、文芸部でも入れば良かったのに」
「それをあんたが言うのかっ」
「は、あたし?」
「中等部入って仮入部の最初の日、あんたがあたしの目の前を通り過ぎなかったら、あたしはくっついてここに入らなかった…。ああっ、あの時のあたしはさながら悲劇のヒロイン風っ」
「ヒロイン風、風?」
「ええぃ、突っ込むんじゃないっ、女々しい奴めっ。…女中二人、意識をこっちに向けるんじゃないっ。会話中は二人きりの世界を作れって言ったでしょうっ。外出て打合せして来いっ」
「「は、はいっ」」
「つまり美紀ちゃんは~加奈子ちゃんの容姿に釣られちゃったって事~?」
「うう、痛い、痛いわ鴇。あたしのハートはブロウクンッ。よしっ、10分休憩の後場面23やるわよっ。外や上の子達にも伝言っ」
「今時ブロウクン・ハートで分かるか?」
「その言いぐさは何っ、もっと紳士的に出来ないの貴方っ」
「だってワタクシ、女の子ナンダモンッ」
「ひいっ、虫酸が、鳥肌が、ささくれが走るぅーっ」
「ささくれが走ったら怖いね~」
…お分かり頂けなくても、お察し頂けましたか?いつもこんな様子ですから加奈子所属の演劇部は悶死状態なのです。意味はお好みでお取り下さいね。蛇足でございますが、加奈子達が通っている高校は私立、3分の2が同名中等部からの繰り上がり、3分の1が外部生からなっております。中でも演劇部は注目の的でございまして、外部生の何割かは必ず入荷、失礼、入部してくるのでございます。
私立ですが成績にも厳しく、一年毎でも数十人は入れ替わり入れ替わりがあるそうで…なかなか、辛い世界でございます、はい。
「…あー眠い…閣下、休憩って言ったよな、じゃあ加奈子借りる。…眠」
何処から入って来たのか何時の間にやらいた男子生徒は加奈子を引っ張って教室の隅に座らせ、寄りかかるとそのまま寝てしまう。
「重い。それに美紀は閣下じゃない」
眉を寄せてぼそりと呟く。
「す―っ…」
「あたしだって休みたい」
「く―っ…」
「皆見て見ぬ振りして、笑い方が気持ち悪い」
「う―っ…」
「ていうか、本当に誰も助けないね?」
「うん~だって名物だもん」
「良いじゃないの、顔良し頭良し、堅実な生活が待っているんだもの。あたしも欲しいわぁ、忠犬が」
「欲しいならあげるわよ、熨斗付けて」
「却下。そんな図体でかいものいらないわよ」
普通に話していても隣の彼は起きず、何だかまったりした雰囲気が流れる。さっきの喧騒が嘘のよう。
「これじゃあ右肩だけ痛くなる…奥の手。あっ、10分経ったっ」
「…」
「何回もやっているから効かないんじゃないのかな~」
「馬鹿の一つ覚えね」
「勘弁して本当に…」
「彼ほど体内時計狂わない人も珍しいわよね」
「長く加奈子ちゃんの側にいたいのかな~きゃっ、あたしったら臭い台紙言っちゃった~」
「…仮眠取れたわ。やっぱり加奈子の側が一番寝心地が良い。…また後で来るから、じゃな」
のっそり立ち上がりながら彼は言うと、加奈子の頭を一撫でしてカメラ片手に教室を出て行く。まるで一昔前の…。
「ちっ、今日は撮らないのか。良い宣伝になるから楽出来るのに。加奈子あんた旦那使いなさいよっ。休憩終わり、位置ついて皆、始めるわよっ」
「旦那じゃないっ」
「そんな台詞はないっ」
「あったら可笑しいでしょっ、男役なのにっ」
「は~い、皆さん入って~見学もどうぞ~」
「それじゃ学園祭前のマル秘練習意味無いでしょ鴇っ」
「黙んなさいっ。あたしが許可するわっ」
「だから美紀に権限無いってさっきから言ってるでしょっ」
…こうして演劇部の熱い一日は過ぎていく。
「っあー、終わった終わった」
「中年親父臭い台詞ね。どうせ狙うならセレブおじ様を狙いなさいよ」
「別に狙っていないし」
「でもどうすれば良いの~?美紀ちゃん」
「簡単な事よ鴇。まず、加奈子みたいに肩や腰を揉みながら言うのを止める事から始めなきゃね」
「なるほど~」
「納得しなくて良いから」
「大丈夫、俺は加奈子が親父臭くても好きだから」
「…あんたどっから出てきたの」
「馬鹿ねあんた、康平君ここで待っていたわよ。あんたの目に入っていなかっただけでしょ」
「それって康平君の存在がアウト・オブ・眼中ってこと~?」
「違うわよ、そんな言い方はもう古いわ。これからはシンプルに分かりやすく簡潔に、よ。そうね、例えば問題外、存在無視、ううん…良い言葉がないわね。あたしももっと勉強しなくちゃ」
「…狙って言ってるでしょ」
「「まさか」」
「別にそれならそれで、俺の存在植え付けるだけだし。今日はまっすぐ帰ろうかと思っていたけれど、しょうがない、俺ん家に連れて行くか」
「ちゃんと分かっているから、行かないわよ」
「ふふ、おいたも良いけれど明日に響かないように程々にしてね、康平君」
「ほら、閣下のお許しも得た事だし」
「美紀は閣下でもないし許可なんていらないわよっ」
「仲が良いって良い事だよね~、でもそれを掻き回すのってもっと良いよね~。じゃあ二人とも明日ね~、あたし達も帰ろ~美紀ちゃん」
「そうね、じゃあまた明日ね」
「ばいば~い」
「おいそこの悪友っ、言い逃げ、言い逃げなのっ?責任取ってけーっ」
「「無理」」
遠くから微かに聞こえたような気がした。
「じゃあ帰るぞ」
「…一応お聞きしまずが、ちゃんと家に帰してくれるんだよね」
「今さら何を。こうやって手をしっかり握り合って逃げられるつもりか。心配しなくても、ちゃんと連絡は入れてやる」
「いや、あのね、わざと無視していたわけじゃないし…」
「当たり前。そんな事されたら軟禁する。あいつらが言っていた事なんて、、加奈子とくっついているための言い訳だし」
「そうっ、じゃあちゃんと帰してくれるのね」
「誰がそんな事言った、往生際が悪いぞ」
「やっぱりあたしの周りってまともな人がいない」
「何で自分だけ普通発言なんだ。表現力も激しくも《きら》びやかでもないな。激しさと煌びやかさを具現化した俺の撮った写真いるか?なかなか良いぞ、美少年と言われている彼等の寝顔っ」
「いらないわよっ、せいぜい売り捌いて小遣いに回すと良いわっ」
「よし、愛妻の許可が出たっ、これでお前も同伴者だっ」
「それを言うなら共犯者っ、古典的ボケしないでよっ」
「…姉さん五月蝿いよ、しかも公共の場で」
「あ、お帰り明良、遅かったのね」
「ちょっとね。今晩は康平さん、俺、馬鹿兄貴と変人兄貴は嫌ですからね」
「今晩は明良君。そんな事にはならないよ、公私は分けているから」
「ついでに二重人格兄貴は紹介しません」
「明良…お前本当に加奈子の弟か?俺、こんな加奈子だったら嫌だなぁ」
「ご心配なく。俺は関口多香子の息子ですから。ちなみに姉は関口清二の娘です」
「おおっ、そう考えれば変じゃないな」
「そのいかにも再婚しました的な言い方は止めなさい。で、本当にどうしたの、外に一人なのに鞄もないし、買い物行った帰りでもなさそうだし」
「…同じクラスの女子に告白された」
「おおっ、それはすごいなっ」
「今時の子って進んでいるのねぇ」
「加奈子、言い方が婆くさい」
「それと外にいるのと何の関係が?」
「流した、酷い、最愛の彼氏の言葉を」
「気持ち悪いし自分で言わない、うっとうしい。ちょっと消滅していて」
「ごめんなさい、もう語尾にハートマーク付けません」
「…断ったんだけど、美奈子が俺の様子が違うってしつこく聞いてきたから話したんだよ。そしたら泣かれて怒られて、口は聞かないし家から締め出されて、中に入れてくれないから散歩していた」
「仲良きことは美しき哉、良い兄妹愛だねぇ」
「俺だってお互いが一番じゃないと嫌ですから、不安になったのかなと思うけど」
「それってほんのり話題になった、あの…」
「思い過ぎなのか、それこそ路上で話すことじゃないわね。父さんの店で話そう、分かった?明良」
「…うん」
「俺も俺もー」
「邪魔だから帰りなよ」
「力ずくで口悪いの黙らせるぞっ!?」
「康平はしない、信じてるから。明良は聞かれても良いの?」
「別に気にならないよ」
「だって」
「…俺の彼女だよな」
「憐れな事にね」
「おいっ」
帰り道を何だかんだと言いつつ歩いていた二人、加奈子の家に近づきましたならば、弟の明良くんが浮かない顔でご挨拶。何やら少々重たい内容の様子、取り敢えず三人は清治さんが営んでおります喫茶店に向かわれました。
からんからん…
「すみませーん、もう閉店なんですけどーって、加奈子ちゃんに明良君、それに康平君までどうしたんだい?」
「外や家ではまだ話せないからこっち来たの。母さんは?」
「姉さん隣にいるよ」
「うわっ…寝ていてくれて良かった、じゃないとちくちく言うし」
「うん、仕事一段落ついてほっとしたみたいだよ。多香子さんも気にするって事は、俺達にも関係ある事?」
「一応知っていて欲しいから明良連れ来たの。康平は付き添い、かな。ココア欲しい。やっぱり嫌なら帰るけど、明良」
「相談はしようと思っていたから良いよ。俺は何か食べたい。あと父さん…美奈子どうしているか知っている?」
「美奈子なら部屋に閉じこもっていたわよ。声かけたのに清二さんのお菓子を要らないって…もったいない。お帰りなさい、清二さんコーヒー頂戴」
「お邪魔してます、俺は興味あったんで付いてきました。俺もコーヒーお願いします」
「はいよっと。…それで何を教えてくれるのかな」
「どうする?」
「自分で言うよ…話は俺が今日告白されて」
「明良はやっぱりもてるのね」
「うわ~お」
「父さん何その反応…それで断ったんだけど」
「え~何で何で」
「家族枠を除いても、美奈子より大事な奴じゃないから」
「ふ~ん、そっか~…明良の中で美奈子一番か~…ってぇえ?」
「父さん良い反応」
「褒めても夕食あるからココアだけだよっ。というか、それはlikeじゃなくて…という?」
「likeより重い気がする。でもお互いが一番じゃなきゃ嫌だっていう気持ちが、これからどうなるか分からないから表現出来ない」
「あろ~は~」
「清二さん壊れても良いから俺のコーヒーちゃんと下さいね」
「それは困るわ、枕がなくなるじゃない」
「母さんいつから聞いてたのか知らないけれど、親として二人はどう思った?」
「明良の戸惑いを同じように美奈子も感じている筈、それが表現出来ないならまだ時期じゃないだけ。言葉に出来た時、表現出来た時に世間から白い目で見られるかもと思ったら報告しなさい。庇ってあげられなくなるから」
「自己判断ていうこと?いい加減すぎない?」
「父さんは?」
「俺?聞くだけ無駄だよ、一家の主は多香子さんだから~」
「あたしも一応聞きたい」
「じゃあ言わせてもらうけど、自己判断はいい加減じゃないよ。心でちゃんと何が良くて何が悪いのか自分達で選択出来るように俺らは躾たもん。迷うなら準備がまだなんだよ、ね、多香子さん」
「もんなんてつけると気味が悪いわ。育てた以上、18以下ならどんな選択しても影響が一番大きいのは自分達だろうし、その中で選択したものは法に反さない限り金銭的に余裕がある内は何でも受け入れるわよ」
「金銭的にって…余裕ない場合は」
「無視。存在無視、行動無視、言語無視、何が良い?選べるわよ」
「心が挫けるね、それは。俺関口家を外から見ていられる立場で良かった…」
「あれ、じゃあ加奈子ちゃんがお嫁に行くの」
「それは無理じゃない」
「俺もそう思う」
「あたしも家出たくないから。当然あんたが婿入りだから」
「え、俺の意志は」
「「「「何かあるの?」」」」
「…もう良いです。それにしても普通の親とは違うねぇ…」
と、話も一段落致しまして。
「めくるめくホームドラマが昨日あってね…」
「そんな言い訳が理由になると思う?加奈子」
「見逃してよー」
「何様っ。本当にあと少ししか時間はないのに、あんたの役の見せ所、一人舞台の長台詞だけ2文しか覚えてない?ハリセンで叩いてやるわよっ、そんな頭っ」
「美紀ちゃん美紀ちゃん、生温いから鞭は~?小道具整理したら出てきたんだ~」
「覚えてなくても何とかなるよ、怒り過ぎると頭に血がのぼるよ」
「誰のせいだ、誰のっ」
時折美紀さんに怒鳴られつつ、怒涛の日々を過ごして無事学祭の開演に漕ぎ着けたのでございます。
最終日には康平君も写真を撮りまくり、明良君と美奈子ちゃんは手をつないで楽しそうに見て、多香子さんが眠そうに、清二さんが目を潤ませて観賞する中、本編主人公の加奈子ちゃんが、美紀さんと鴇嬢の見守る中見事演じきりましたのでございます。
何ですか?これで終わりかと?そうですよ、これ以上彼等に期待しても…。シリアス?無理ですね。コメディ?更に話が訳分からなくなるかと。恋愛?彼等に濃厚はちょっと…。友情?太陽から逃げる彼女達に…。家族愛?語れますかね?という事で。
「…何だかな」
「何だかね」
余計な蛇足
関口家は「~子」で女子名前統一、鴇嬢はイメージお嬢様。
ほんのり登場人物紹介
加奈子:主人公で高二、ショートでスレンダー。少し腕っぷし強い設定。康平君という彼氏がいます。演劇部ではほぼ男性主役、上手い筈です。島根旅行帰りのバス中から見えた子がモデル。後ろ姿だけだけど、格好良くて可愛かった。
双子兄妹、明良と美奈子:小六で明良は眼鏡、美奈子はツインテール。いつの間にやら仲直り。
母、多香子と父、清二:多香子は低血圧の挿絵画家さん、清二が営む喫茶店で仕事します。仕事中の清二が格好良いらしい。
友達の美紀ちゃんと鴇嬢:脚本を手掛けているため部活愛熱くテンション高く、それ以外は少し冷静な美紀ちゃんにお裁縫好きなおっとりしている鴇嬢。友達一人だとボケとツッコミで進まず苦しくて…。
彼氏、康平君:馴れ初めは部活動写真を撮りに訪れたとき、試合が始まったそう。この中では一般のくくりに入ると思うのですが、巻き込まれこんな扱いに。二人だけの時は多分違う筈。
発散の意味では一番楽しかったかなぁ、ありがとうございました。