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第十六話「特機校支援隊」

第十六話「特機校支援隊」

 

 朝から面倒に巻き込まれかけたせいでどことなく調子が出ないまま、授業に出る。


 幸い、内原先生が簡単に表向きだけ説明をして、クラスメート達に呼び出しそのものが誤解だったと取りなしてくれたが、根本的な問題の解決はまだ先になりそうだ。


 とりあえず、休み時間に城田と山口へとメールを送っておいた。


『よう、昨日は就職関係の資料、ありがとな。それはそうと、高校生活も大変だよ。今朝も生活指導の別所先生に呼び出されて、特機免許の試験でカンニングを疑われたりとかな。もう一人の男子、萬田未来翔は、トラブルを起こしても同じ別所先生に庇われてるのに理不尽だ。やっぱり萬田未来翔と違って、元大学生ってことで、俺は悪目立ちしているのかもな。担任の先生に助けて貰ったけど、なかなか面倒だったよ』


 内原先生の名は出さず、別所先生と萬田未来翔の名を二回、繰り返しておく。


 ……暗号ってほどじゃないが、色々と気を使わざるを得ない現状、これで俺の言いたいことが『通じる』はずだ。


 アイ校のセキュリティは厳しい。

 俺のプライベートメールでさえ、余所に漏れるのは俺の手元からではないだろう。


 しかしそれを管理しているのは、敵か味方かもわからない教職員の誰か、なのである。




 ▽▽▽




 鬱々としていても、時間は進む。


 金曜の五、六限目は特機実習の時間になっていた。

 小型のひなぎくで行う一年生の授業には、小さい方の第二演習場の半面を宛われていたが、着替えや機材の関係もあり、整備区画での集合になる。


 二年生になれば、中型機すいせんを使用する関係もあり、整備区画に隣接する広大な第一演習場をつかえるが、俺達ひよっこにはまだ早いということだろう。


 初の実技とあって、クラスメート達の表情も明るい。

 ああ、先日の調整の時は、シートに座るだけだったせいもあるか。


「お昼の後って、なんかやだなあ」

「しょうがないって。時間割で決まってるんだし」

「あ、三組と一緒だっけ?」

「うん、半分づつ」


 無論、俺も気分を切り替えた。

 アイアン・アームズの操縦は、楽しみになりつつある。


 実際に動かしてみて思ったのは、アイアン・アームズは考えた通り自由に動くと同時に、身体の一部、あるいは延長線上にあるという無意識に頼りすぎても、上手く操縦できないということだ。


 一昨日、本田先生より即席の訓練を受けた際、転倒とその復帰――()けては立ち上がる訓練も行ったが、ひなぎくと人間との違いを、改めて思い知らされていた。

 歩くだけ、あるいは走るだけなら機体AIが思考制御に基づいて補正を入れ、バランスを自動的に調節するが、座った状態、あるいは横倒しだと、機体の形状と人体との差違が大きすぎてカバーしきれないのである。


 最初は起きあがるのに三十秒ほども掛かってしまい、転倒時の衝撃による機体の故障を疑ったほどだ。

 

 指摘されて具体的に機体の形状を思い浮かべ、地面に手を突く位置を変えた途端、簡単に起きあがれるようになったことは衝撃だった。


 本田先生曰く、アイアン・アームズに乗り慣れた特機部隊の甲種操縦士記章持ちでさえ、機体を乗り換えるたびに同じ訓練を飽きるほどするらしい。


 意識して訓練に励めば、切り替えにもすぐ慣れるし、授業でも最初は重点的に行うと聞いていた。


「よし、欠席者、見学者なしだな。では全員、搭乗前点検にかかれ!」

「はい!」


 実技の授業は本田先生がメインで、内原先生がサポートに入る。二人ともEROスーツだ。

 これも各クラス、担任と副担任が同じような配置になっていた。


「……ん?」


 外部の目視点検で、見慣れないものを見つける。

 機体の背中側の見えにくい位置、パワープラントの底部カバーに、『五九六三』と番号のついたビニールテープが貼ってあった。


 同じ機体ばかりが並ぶ整備区画である。点検中に間違えないよう、印でも付けていたのかもしれないが、少し気になった。


 特に俺のひなぎく一四〇九号機は、Gリミッターの件がある。

 何か問題の起きる可能性はクラスメートのそれより高いと思い至り、俺は近くにいた内原先生に声を掛けた。


「内原先生」

「どうかした、後藤君?」

「機体後部に番号のついたテープが貼ってあるんですが、何かあったんでしょうか?」

「あ、それ、当たりなのよ」


 にへっと笑った内原先生から、テープを剥がして持ってくるように言われる。


 ……それはともかく、『超重量級』の本田先生に対して、内原先生の胸部装甲はかなり薄い。

 その割に身体のラインが色っぽいので、視線のやり場に困る。


「はい、全員注目! 後藤君のひなぎくにカラーテープが貼ってありましたが、これは、皆さんに緊張感を持って貰う為の仕掛けです。機体をわざと故障させてそれを発見して貰ってもいいんですが、手間ばかりか危険を伴いますから、その代わりだと思って下さい。……二本三本とあるかもしれないし、ゼロかもしれませんが、自分のひなぎくから見つけた人は、先生に報告してね。でないと、減点よ」


 ぴたっと手を止めて聞いていたクラスメート達が表情を引き締め、一斉に動き始める。

 誰だって、減点は怖い。


 説明を最初にせず作業中にした理由も、同じく緊張感を持たせるためだったと、後から聞いた。




 その後、機体の微調整と起動を行い、整備区画内を軽く歩かせて不具合がないか確認してから全員が整列した。

 本田先生の七十九式を先頭に、生徒のひなぎく三十機が並べば、壮観である。


 ちなみに内原先生は、同じ小型でも『シュパッツ』というドイツのポーラルシュテルン社製の汎用機に搭乗していた。

 スマートだが角張った機体で、実物を見るのは俺も初めてだ。


『では、第二演習場に移動するが……新派、後藤、お前達は列の両サイドにつけ。クラスメートのサポートだ』

『はい!』

「はい。……新派さん、俺はどっちにつこう?」

『後藤さんは左をお願いします』

「了解っ、と」


 特に初搭乗の四人には注意するよう、指示を受ける。

 新派は推薦組で実力も十分、俺は初心者ながら本免許持ちと、人選の理由は分かり易かった。


『間隔を十分に開けておけ。……出発!』


 かしゃこん、かしゃこんと、本田先生を旗手に二列縦隊で移動を開始する。


 三組の方は、まだ手間取っているようだった。




 校舎の南側にある第二演習場は、小さいと言っても三百メートル四方はある。


 そのぐらいのサイズがないと、数十機のアイアン・アームズを同時に訓練させられないのだ。


『後藤さん、次の角まで先行して下さい』

「分かった」

『みんな聞いて! ひなぎくのパワープラント効率はリセとかみらいとは段違いだから、無理にパワープラントに意識向けなくても大丈夫よ』

『え!?』

『あ、ほんとだ』


 俺も体験したように、歩行だけなら訓練抜きでも大きな問題は起こらない。一年四組は全員転倒もなく、第二演習場へと到着した。


『では各々十メートルほど間隔を開けて、五列で整列。……ラジオ体操をやるぞ』


 最初の訓練が、体操。


 週に四時限しかない貴重な訓練時間に行うのだから、無意味ではないのだろうが、若干拍子抜けした空気が流れている。


 俺を含めた初心者を除けば、クラスメート達の大半が搭乗時間数十時間以上の『ベテラン』であり、アイアン・アームズというものに慣れていたから仕方がない。


『ラジオ体操は、人間が行えば準備運動として適度かつ、普段使わない筋肉もよくほぐせる優れものだが、アイアン・アームズでこれを行う意味は少し異なる。モーターや電磁筋や油圧シリンダーをほぐしても、慣らし運転以上の意味がないからな』


 アイアン・アームズのエネルギーの源は当然、EROパワープラントだが、得られたエネルギーは主機のコンバーターを通して電気エネルギーとして利用され、機体各部の駆動用モーターや電磁筋に回される。


 据え置き型のERO発電器などでは格段に効率がよい代わりに重量も大きな大型コンバーターを用いるが、機載用では限度があり、こちらもアイアン・アームズの能力を決めるネックになっていた。

 

『現在はほぼ初期状態と変わらないひなぎく側の思考制御AIに個人差を学習させ、搭乗者とのシンクロ精度を上げる意味がまず一つ。もう一つは、機種転換訓練とほぼ同義だ。諸君もひなぎくへの搭乗は初めてだろうが、慣れた動作をアイアン・アームズに行わせることで、他の方法を行うより、搭乗者自身も機体の差が如実に出る疑似神経網と思考制御のリアクションに慣れさせやすい。ついでに言えば、一機あたりの動作に必要な空間も狭く済むので、管理するこちらとしても助かる』


 どうだ、いいこと尽くめだろうと、本田先生は体育委員に号令を指示した。




 ラジオ体操に続いて、俺もやらされた転倒と復帰の訓練を行った後、同じくアイアン・アームズで行うには地味すぎるマラソンが始まった。


 隣では三組のひなぎくも同じように走っているが、無線のオープンチャンネル設定がクラス毎に異なる為、会話はない。

 慣れている数人は、互いにハンドサインを送ったりしていた。座学の授業中に回ってくる折り紙の手紙のようで面白い。


『よし、次の周回はショートジャンプだ。速度は落とすなよ』


 最初は単に並んで走るだけだったが、先生達はパイロンを持ち出してきて回避やジャンプを指示し始め、徐々に難易度が高くなってきた。


 アイアン・アームズに乗っているので、心臓がばくばくするほど急に疲れることはないが、ずっと機体に揺られ続けていれば、やはり徐々に神経がすり減っていく。


『きゃっ!?』

「大丈夫か、辻谷!?」

『だ、大丈夫です!』


 初心者には転倒者も出始めたが、列は止まらない。

 最初は俺と新派が補助して助け起こしていたものの、一人二人と機体転倒時の対応を覚えていった。


『自分で起きあがれます!』

「おう、頑張れ!」


 とは言え、初心者と経験者の差は大きいようで、俺も十メートルのロングジャンプ(幅跳び)を指示されたときは流石に躊躇した。


 だが、難なく飛び越えていくクラスメート達を見て、『これなら行けそうだなあ、よし、行くか』で飛び越えてしまい、頭では慣性緩和システムのことを理解していても、あれだけの跳躍をして衝撃を大して感じなかったことも含め、アイアン・アームズは人間とは違うんだなと、改めて考え込んだ俺である。


「いっちに、いっちに……」

「北側は終わったよー!」


 その日は障害物マラソンだけを延々と続け、最後にアイアン・アームズ用の巨大トンボとロードローラーで演習場を均して、第一回目の特機実習は終了した。整地作業にも人間用にデザインされた道具を使うことで、思考制御訓練の一つになっているらしい。


 時間は少し余っていたが、この後、整備区画まで機体を戻し、終業点検を行わねばならなかった。

 初回の実技授業は幸い、事故もなく怪我人も出さず、無事に終えられたようである。



 ▽▽▽




 帰り際のホームルーム後、俺は本田先生に連れられて、昨日試験を受けた特別棟の講義室へと向かった。


 必ず出席するようにと言われた、本免許取得者への説明会である。


「まあ、私が担当というわけではないが、説明会は教員の持ち回りでな」

「いえ、助かります」


 先生を盾にするのは情けないが、萬田が待ちかまえていようとも、これではそう無茶は出来ないだろう。

 まだ表だって事を構えるわけにはいかず、少々歯がゆい。


 講義室には斉藤先輩他、昨日合格した五人がもう揃っていた。

 まだ授業開始一週間と経っていないこの時期、何かと説明が必要な一年生に比べ、二年生の方がホームルームの終了は早い。


「桑島先生がまだだが、内容が前後するだけだからな。先に始めるか」


 桑島先生は一年一組、つまり萬田の担任だ。

 顔は知っているが、授業の受け持ちがないので、どんな先生かはよく知らない。


 本田先生は、特機免許の教本を開くように指示した。

 後半のかなり後の方、附則などが書いてある部分だが、道交法からの抜粋も記載されている。


「諸君は昨日、本物の特機免許持ちとなったが、これには当然、法律に基づいた義務というものが課せられる。教本にも書いてあっただろうが、公道上では道路交通法と特機法の両方を守らねばならない」


 例えば、信号を守る理由にしても、守らないと事故が起きるから、という視点とは少し違う。

 法律を全員が知っている約束事として、皆が遵守することで自分と他人の安全を互いに保障しているのだ。

 当たり前だが、普段、意識をしないことの方が多いかもしれない。


「破れば当然、罰せられる。これは高校生だから、免許を取り立てだからと、容赦されることはない。注意すべき点は……色々とあるが、演習場内では問題ないとされている行為に、交通違反が多く含まれているということは、特に覚えておいて貰いたい」


 本田先生が例に挙げたのは、長尺物――長い物の運搬である。


 道交法の車輌部分では、赤い目印を目立つようにつけることとされているが、これは特機を使用する際にも適用された。


 無論、演習場内ではそのまま運ぶ。


 では安全について軽視されているのかと言えば、そうではない。

 演習場内は、基本的に入る人間が関係者に限られていた。


「諸君には赤い旗一つで安全の度合いが大きく変わるなどと、思えないかもしれない。だが、公道というものは、子供からお年寄りまで、全ての人が利用する。人同士なら不注意でぶつかっても小さな怪我で済む可能性は高いが、人と特機、あるいは車と特機ではどうなるか……分かるな」


 考えるまでもない。

 持っているエネルギーが違いすぎて、小さな事故で済む事の方が希だろう。


「小さな積み重ねが、大きな事故を防ぐ。このことは、搭乗前点検だけでなく、アイアン・アームズの全行動に通じるものだ。面倒がらず、手順を守ることが事故を防ぐと肝に銘じて貰いたい」

「失礼します、遅くなりました」

「お疲れさまです、桑島先生」


 遅れて現れた桑島先生は、幾分疲れ気味の表情で、息の上がった様子だった。綺麗に伸ばされた髪が、汗で額に張り付いている。


「……」


 一組は萬田の件もあって、多少ごたごたしていると聞いていた。

 桑島先生は俺を一瞬だけ見たが、今は……単にホームルームが長引いたんだろう、と思うことにした。




 話を引き継いだ桑島先生は、技術畑でも自衛隊からの出向でもなく、アイアン・アームズを中心とした経済学が専門の研究者らしい。


 更新手続きの注意などに加え、二年生にとっては重要な中型の免許について、その先にある機体の特徴や用途、社会への影響まで、きっちりと説明があった。


 中型機は、人型重機としてのアイアン・アームズが最も効率よく運用出来るサイズとされている半面、小型機に比べて機体の操縦難度も高く、同時に要求される発現力も高いので、場合によっては見切りをつける必要があるそうだ。


 アイ校には比較的発現力の高い生徒が集められているが、全員が高いわけではない。

 訓練で伸ばそうとしても結果がついてこず、発現力が低いまま、知恵と操縦技術で補うタイプの生徒だっている。


「残酷なようですが、人間には、出来ることと出来ないことがあります。ですが……数十人に一人しか得られない発現力を手に、二十倍をこえる難関を通り抜け、今、特機の免許証を手にしている皆さんは、他人から見れば『出来る』側の人間です。進学、就職、結婚……人生の岐路で高い壁にぶつかったときは、その事を思い出して、よく考えてみて下さい」


 これもまた、大人への一歩ですよと、桑島先生は真面目な表情で説明を締めくくった。


「本田先生、どうぞ」

「ありがとうございます」


 そのまま続けて、本田先生が再度教壇に立った。

 

「私の方から、もう一つ。……支援隊の勧誘だ。手元に資料を送ったから、読みながら聞いて貰いたい」


 机のディスプレイに、『特機校支援隊 隊員募集要項』と表示される。


 国立特殊歩行重機操縦士訓練校災害復旧支援隊――特機校支援隊は、少々特殊な位置づけの『自主的』災害対策組織だ。


 支援隊員は、平素は訓練を通して技術や知識を学び、有事には召集されて自衛隊の災害派遣に協力する。

 隊員は募集に応じた生徒が主体だが、内閣府が特殊歩行重機操縦士訓練校設置法の附則に基づいて予算を出し、出動命令は防衛大臣が掌握、指揮管理はアイ校に勤務する現役自衛官が任務として担当し、整備隊なども隊に組み込まれていた。


 隊の性質から緊急即応部隊ではなく、第二陣以降の増援として位置づけられており、救援路の緊急啓開や一時避難施設の設営など、本格的な復旧作業が組織だって行われるまでの繋ぎが主任務とされている。


 これまでに、海外派遣を含めた大小十数回の出動が行われており、アイ校のもう一つの顔と言えるほど、その活躍はよく知られていた。


「支援隊には、感謝の言葉以外の何物も与えられない。同じく救援に出動する自衛官には給与も派遣手当も出るが、支援隊員にはない。瓦礫と土煙の中、被災者の助けになると信じて疲れ果てるまで走り回るのが、支援隊の『任務』だ」


 初っ端から、酷い言い種である。


 だが、それも当然だった。

 手当か一時金ぐらいは出てもいいような気もするが、隊員は生徒であり、公務員ではないと特機校設置法で定められている。


 アイアン・アームズの操縦技術という、災害現場で有用な特殊な技能を持つ有志によるボランティアを、政府が予算面と組織面から援助しているという名目は、守られねばならない。


「また、隊員には高度な体力や技術知識に加え、どうしても過度な緊張感が要求されてしまう。……災害の現場に、実際に赴くのだからな、大人でもきついぞ。よって、試験はないが、平素の様子を見てこちらで採用の可否を判断させて貰うことになる」


 それでもなお、この支援隊が存在し続けている理由は、費やされる予算以上に大きな効果を生み出しているからだった。


 組織だって運用されるまとまった数のアイアン・アームズが、現場では特に有用だから、というだけではない。




 生徒には、心身の成長を。


 被災者には、明るい希望を。


 同じく災害復旧に携わる者には、奮起を。




 少女達の懸命な姿は、人と国を動かしていた。


「無論、訓練や演習も多い。公休扱いで校外実習に出ることもある。成績も落とせないな。だが……それでもいいと諸君の中で結論が出たのなら、是非、応募してくれ」


 にやりと笑った本田先生は、以上だと締めくくり、解散を告げた。


 座ったまま肩をほぐしていると、斉藤先輩らが集まってくる。


「ふう……」

「なんか、思ったよりも厳しそう」

「そりゃ厳しいって。現場だよ、現場」

「茜は応募する?」

「もちろん!」

「後藤さんは、応募しますか?」

「うん、するよ」


 俺はもう、応募することに決めていた。


「あ、桜も隊員でしたよね」

「それだけが理由じゃないけどね」


 ……父の仕事を――ほんの一部分でもいいからその背中を見てみたい、などという子供っぽい理由は、誰にも話せなかった。


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