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人生浪人。  作者: 有里由マコト
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厨二病の引きニート、外に出る。

べヤングのカップ焼きそばに、その横には苺ミルク。これが陸玖の朝ご飯、否、一日の食糧(間食は冷まし御握り)だ。

 

 ずっと前にとうとう「偏りすぎじゃね?ウケる。」と笑われた事がある。だがそのときにべヤングのの歴史について早口で語り始め、相手を論破(何も言えない状態に)したのだ。


 「おほっ‥‥裏アイテム、ゲット‥‥。」


 ただの引き二ートだ。

 陸玖は苺ミルクを口に含み、まだ飲み込まないでコントローラを操作した。

 何故、引きこもりになったのか、それは、忘れたらしい。というか、「思い出したくないから、ニート生活を満喫する」と嘆いていたほどだ

 宮嵜(みやざき)陸玖、二十三歳の小太りでブサボーイだ。

 青春の日々を乙女ゲーで過ごしてきた、実家暮らしのベテラン引きニートで通っている。

 俺だって、生まれた時からクズ人間だったわけじゃないのだ。

 小学生の時のバレンタインデーでは、ハート型のチョコレートを十一個も貰ってたし、募金のポスターコンクールで金賞を取ったことだってある。

 でも、なんでこうなっちまったんだろう。なんて、考えない様ににしている。

 はっきり、断言すると、無駄だからだ。今更後悔したってもう遅い。だから、今までの様に時間を無駄にしながら生きていこうと思う。

 正直、自分が居てもいなくても周りの人達は困らないと思う。当り前だ。ある意味存在していても今のところ誰にも分からないヤツなのかなーっと思うからだ。


 「っはぁ!?バグるとか、勘弁してくれよ‥‥」


 突然マウスが動かなくなり、キーボードのどのキーを押しても、無反応になってしまった。

 陸玖は様々なボタンをたんたんと指で小突くが、それは無意味になってしまった。

 フリーズし、しかも画面が真っ暗になっていったのだ。


 「まじかよ、おいDOSHBAァ!動けッッ!!」


 パソコンを左右に揺らすが反応なし。



 「陸玖、いいかげんにしなさいよねっ!」


 さっき無機物に対して大声を出して喚いていたからだろうか、九歳年下の妹、純花(あやか)がノックもせずに俺の部屋に入ってきていきなり怒声を発した。

 

「ねぇ、下まで聞こえてきたんですけど!?」


 純花はショートカットの髪の毛を耳にかけると、今の俺の実態を目の当たりにし、悲鳴を上げた。


 「くっさいし、きったないし、くっさい!!」

 

「なんで二回言うんだよ。」


 陸玖はそんな純花を無視し、べヤングの焼きそばを口に入れる。

 

 「あれ、てゆーかパソコン起動してないんだ。」


 「めずらしいね」という純花とは裏腹に、陸玖は今後のことで頭がいっぱいだった。何年もインドア生活を続けてきたのに、パソコンが無いとするとそれが出来ないイコール死を意味する。

 ただでさえ特技もない俺は集中力があるのだけは陸玖の長所だと思う。そして一番集中力が続くのがコンピューターなのだ。


 「お兄、大丈夫?もしかして、体調悪いの?」


 『お兄』というのは純花が陸玖が心配の時に言う呼び名だ。

 陸玖は額に手をやると掌には水滴が滴っていた。

 

 「なあ、純花。」


 「な、なに。」


 「ここから電気屋さんまで何分かかる?」



 * * * *


 現在の時刻は午後八時半。

 幸い、純花から教えてもらった店は二十四時間営業しているとのことだから、安心して小股で歩ける。


 「くっれぇな‥‥」


 住宅外の道路沿い。ここは電柱が少なく、視力が低い陸玖にとっては絶好の恐怖のスポットだ。

 

 「着かねぇじゃねぇかよッ!」


 当り前だ。

 さっきから小股で脚を動かしているのだから。

 陸玖は先程純花に描いてもらった道案内の紙を見ながら歩くと、ふとあることに気付く。

 いや、そんなことはないだろう。あってはならないのだ。

 立ち止まって紙を逆さまにしてみる。


 「うそだろ‥‥おい。」


 ニヤニヤ動画でアニメを見ていた時に、キャラクターが言っていた言葉がある。この世界はうんたらかんたらとか‥‥。

 だが、そんなことはどうでもいい。

 陸玖は後ろに向き、歩き出した。


 そういえば、なんの機種の方がいいだろうか、アッピル?それとも同じくDOSHBAにするか?

 悩むなあ‥‥。

 いや、やっぱり最近のインターネット業界で注目されているのがアッピルだ。流行に乗ってその機種を買うか?

だが、それは王道すぎる。皆、考えることだ。

 やはり俺はもっと最先端、邪道に走るしかないのだ。だが、安全面が実に心配だな。

 今回のパソコンが起動しなくなったのは、恐らくウイルスが問題だ。うんそうだ。

 慥か、二週間前、俺に謎のメールが届いた。それを俺は開いてしまったんだ。


 「ジャスト!やはりそうだったのか。」


 従って、俺のパソコンはウイルスにかかり、誤作動し、起動しなくなったのだ。

 そう考えると話は早い。

 俺の裏道、誰にも考えないことだ。

 それは、‥‥王道に走るということ。

 あえてオーソドックスに行くことによって、いままでの考えを邪道と考えるのだ。


 つまり、逆と考えればいいのだ。


 「ふっ‥‥完璧だ。そうと決ま___ 」


 コツ‥‥

 なんでいままで気づかなかったのだろうか。

 コツ‥‥コツ‥

 この、複数の跫音に。

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