浸透
絶望とは
頭を抱えて悲劇的になって
拳震わせて絶叫して
復讐とか恨み晴らすとか
芝居じみたことを誓う
ものじゃない
大したことではない顔をして
近づいてきて
何気ないを装いゆっくり確実に
浸透していく
痛みもなければかゆみもない
まんべんなく浸透すると
手の施しようがないほど
心が止まり魂の煌めきが途絶える
忘却という恩恵に一時守られても
一瞬の翻りから心は止まる
これほど人は脆いのかと
天を仰ぎ見ても
何も聞こえはしない
耳を塞いでいるのは自分
であることに気づかない
それでも生きていく
拳突き上げた誓いではなく
与えられた時間のあるかぎり
一歩一歩と進むしかない
さりげなく
何気なく過ごしているように
見える人ほど
浸透した絶望に胸押さえて生きている
今、すれ違ったあの人も、きっと