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Re verse  作者: さいう らく
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Raid 4 混戦

あけましておめでとうございます。

 



 とりあえず俺は一旦事務所に戻った。


「さ、て」


 陸もチェイスも俺に戻ってこい、と言うのみで何をしろとは言わなかった。

 まあ言わずもがな悪魔と襲撃者を皆殺しにしろということなのだろうが、今回は俺にも一応行動指針というものがある。

 まずは、リクラスの防衛。最優先事項だが、同時に教団側に悟られないようにする必要がある。次に防衛の必要がなく、殲滅戦に移行した際にジグの回収及び保護。

 そして教団本部へと護送。


 それでも騒ぎが収束しないようなら大暴れといったとこか。


「オペレータ07」

『はい、なんでしょう』

「本社の防衛は大丈夫か?」

『問題ありません。あなた程度、来ても足手まといです。しっしっ』

「最後のは余計だ……じゃあ、とりあえず殲滅戦ってことでいいのか?」

『一応、チェイスからの依頼の形式としてはそうなります。ですが……』

「言いたいことはなんとなくわかるぞ。どさくさに紛れて他社の傭兵をころっとしてしまえと」

『ええ、まあそうです。混乱の規模にしては、敵戦力は少数です。それに、今回は人間が積極的に動いていません。悪魔に好き放題やらせている模様です』

「つまり、陽動の可能性もあると?」

『事実同士討ちや企業と教団のトラブルも少なからず発生しているようです』

「ふむ……」

『と、いうことであなたにはさらに引っ掻き回してもらいます』

「……は?」

『かなり面倒だとは思いますが、優先撃破目標を、悪魔とレオン陣営に限定してほしいのです』

「……すると?」

『残るのは襲撃者、RA陣営、教団……つまり』

「テロリスト対現体制の主力、という構図になると」

『そういうことです。我々は早々に手を引きます。あなたは頃合いを見て教団に合流してください』

「して、その意図は?」

『まあ、今我々が表舞台に出るのはまずい、というのが一つ。もう一つとしてはRA及び教団の株を下げることですね』

「……なるほど、この襲撃が起きたのを、そもそもそいつらのせいにすると」

『ともすると教団も巻き添えを食いますが、あなたとしてはどうでもいいことでしょう?』

「まあな」

『RAは現在悪魔に対しては押され気味です。教団の方は逆に、テロリストの方に手間取っています。この二つの勢力が思ったより役に立たないことを世間が知れば、どうなるでしょうかねぇ……』


 声しか聞こえないが、すっげぇ黒い顔してそう。


「んで、それはチェイスからの指示か?」

『いえ。彼女と相互利益を極限まで高める提案をした結果です』

「うわあ……」

『レオン陣営は既に戦力を防衛寄りに戻しつつあります。それを深追いしない程度に追撃しつつ、道中の悪魔の殲滅を』

「了解……ちなみに17番は?」

『現在ギビング西支店に到着したとのこと。若干消耗していますが、戦闘には支障なしということです。彼には一応一般人に紛れて襲撃者の動向を探ってもらおうと考えています』

「まぁ……ありといえばありか」


 この数週間であいつは確かに急成長した。だが、まだ矢面に立って戦うほどじゃない。人を殺すなどもってのほかだろう。


『と、いうことで善は急げです。方法は任せますのでちゃっちゃとやっちゃってください』

「軽く言うぜ」

『早く終わらせた方が互いのためです』

「わかってるよ……」


 ……ふと、壁にかかった黒い服を見やる。使い古した教団の制服。


「……使える」


 俺は急ぎそれを羽織ると、弾を補給し、しばらく埃を被っていたサブマシンガンを腰にさして事務所を飛び出した。






「おうおう。派手にやってんな」


 教団の制服を着ていれば、人は勝手に避けていくし、他社の傭兵も攻撃してこない。このアドバンテージはなるだけとっておきたいところだ。


 それと、昔ボレロのもとで戦っていた時に砂漠で用いたサングラスを着用している。かなり場違いでイタイ格好になるが、()を他人に見られにくくなる。


 ……地下に結構な数の反応がある。発生源は下か?

 まぁ今は地上に出てる奴の対処が優先だろう。


「お」


 スラム区画を抜け、街区に出た途端。

 目の前で魔術の派手な爆発やスパークが起きている。そしてその発生源にいるのは……第二部隊。輪だ。


『建物に被害を与えるな!敵は見かけより少ない!分断して各個撃破しろ!』

『了解!』


 いい指揮だ。前回の教訓が生きているみたいだな。


「よっと」


 そこから漏れ出てきたリザードをすれ違い様に一閃。わらわら湧いてくるキールを銃で一掃する。

 爆発の余波や風圧、スパークや冷気がここまで流れてくる。


「おいおい、派手にやりすぎ……というわけでもねえな」


 相手はデーモンの集団。色とりどりの魔術が飛び交う。

 完全に独壇場だ。ゴブリンをはじめとする能力を持たない悪魔はそこから離れるように散り散りに移動していた。


「ま、好都合だが」


 リザードが牽引する悪魔の一団に目をつけ、発砲しながら接近する。


「……!」


 黄色い、霊子。


「……ッ」


 刀を地面に突き立てバックステップ。そこにすかさずに電撃が迸る。


「今度は雷かよ……」


 雷属性のリザード、ブロント。存在は知っていたが実物を見るのは初めてだ。俺の記憶が正しければ目撃されるのは山岳地帯だけのはずなのだが。


「この前のサラマンダーといいコイツといい、明らかに連れてこられたヤツだな……」


 毎回どこから確保してくるのやら。というか、この量を首都まで気づかれずに連れてくるのは骨だろうに。


 得物を失ったとみたゴブリンが即座に飛び出してくる。


「相手が俺でなければ、いい判断だ」


 排水溝に左手をつき、錬成。時間がないので適当な尖った棒をイメージ。


「ふんっ」


 刺突。悪魔相手には傷口が小さいので悪手とされがちだが、足止めならこれで十分。

 なんせ突剣の材料ならその辺ごろごろあるからな。


 次々と錬成をしつつ、悪魔に鉄棒を刺していく。段々余裕がイメージの方へ割けるようになり、尖った棒から剣へと移行していく。


「うおっ」


 背後に感じたピリッとした感覚。すぐさま飛び退くと黄色の蜥蜴の爪が地面に突き立てられた。


「通常のリザードより速いな……」


 よく見ると、存外マッシブなリザードに比べていくらかしなやかな身体をしている。その全身からスパークを放ってはいるが。


 それに、好戦的な奴らに比べて幾分冷静なようだ。攻撃を躱されたらすぐさま引くあたり、サラマンダーとは違う。


 と、考えながら刀を回収した瞬間、銃声が響く。


「……!」


 タタタン、と小気味よく発射されたであろう弾丸。

 それらは俺ではなく、ブロントの方へと飛来した。


 そう、飛来して、当たらなかったのだ。


「あれは……」


 すかさず左眼で確認。

 悪魔の頭部から出た霊子が、尻尾へと収束している。そのあとしばらく銃声は続いたが、全て逸らされてしまっていた。


「なるほど、先駆者がいたわけか」


 俺がさっき試した電磁誘導を、奴らは無意識にやってるらしい。嫌味かよ。


「ま、悪魔に妬いても仕方ないが」


 とりあえずまだ生きていたゴブリンの首をすっ飛ばしつつ、空調の室外機の影に隠れる。

 悪魔に発砲したということは、第四部隊か企業。俺の動向はエイラに見張られてる以上、ここでリクラスに出くわす可能性は低い。ラトミはこういうとこには出張らないし、いたとしてもただ撃つだけでは済まないはずだ。

 ノブレスはわからない。そもそもが近接武器の製造元で、かつ傭兵もどちらかというと自警団じみてるからここまで来るとは考えにくい。


 やはりRAかレオンのどっちかか……?


『熱源反応あり。3時方向です』

「?!」


 女性の声。俺の位置を、把握されている?


『人間なら出てきなさい。周囲には我々しかいないことは割れています』


 ……これは、レオンの輩だよな、多分。


「わかった、抵抗はしない」

『……そう』


 素直に両手を上げつつ表に出る。


「……教団の者でしたか。失礼しました」

「へぇ……」


 5人組のチーム。市街地仕様の外套と各々が持つ奇怪な刃物。最低限の銃器と最新の電子兵装……。


「オルケか。とりあえず、あの蜥蜴を片付けてからでいいか?」

「驚かないのですね」

「別に。さっさとやろう」


 数の不利ができたブロントはジリジリと後退している。逃げる気か。


「させっかよ」


 電磁誘導してるならそれこそ利用させてもらう。

 雷のコアで刀を帯電させる。


「そらよ」


 そのままぶん投げる。機敏な動きで躱されたが、帯電した刀はそのまま地面に突き刺さった。


 クン、と黄色い身体が刀の方へと引き寄せられる。


「今だ、頼む」

「あなた達、やるわよ」


 うち3人が発砲。磁場を乱されたブロントに今度は銃弾が吸い込まれていった。


『がァッ!』


 それを確認すると同時に前へ。刀を左手で引っこ抜いて怯んだ悪魔の首を落とした。


「……っ痛」


 バチバチッ、っと腕に電流が走る。


「協力、感謝します」


 小隊のリーダーらしき女性が前に出てくる。


「いや、こちらこそ」

「しかし……教団というのは集団で行動するものではないのですか」

「それがお前らに何か関係あるか?」


 納刀しつつ向き合う。訝しげな目線。


「いえ、無粋でしたね。それでは」


 索敵役の男が次の目的地を指し示し、俺の脇をすり抜け去っていこうと……。


「ああ、そういえば」

『……?』

「あんたらの宗主は、レオンだったな」

『……ッ!』


 企業にしか知りえない情報。全員がすかさず武器を抜こうとするが、俺は既に雷のコアの展開を終えている。


「貴様ッ!」


 一番反応が早かった女の直剣を左腕で受けつつ。


「……放電」






「何故だ……教団は……がッ」


 5人全員が俺の周囲で身体を痙攣させている。気の毒だが……。

 4人目の心臓に刀を突き立てる。一瞬身体がびくん、と跳ねすぐに動けなくなる。


「あ、なたは」


 最後に隊長の女。ジリジリと這って俺から離れようとしている。


「悪いな。これも仕事のうちだ」

「こんなこと……報告、しないと」

「させねえよ。あんたらは教団に襲われたんじゃない」


 あえて、証拠を残すために銃を抜く。


「……! リク、ら、ス……!」

「そういうことだ。人を格好だけで判断すると痛い目見るぞ」


 俺がリクラスだとわかった瞬間、女の顔が醜く憎悪に歪んだ。


「この、人でなし、が」

「あながち当たってるから何も言えないな。と、いうことで俺にも時間がない」

「か……あっ」


 一発、二発、三発。


 全て急所を狙った射撃。これでさすがに教団の仕業とは思われまい。


「……行くか」


 特に思うところはない。人殺しなど、慣れてしまえさえすればどうってことは、ないんだ。


「07、オルケの傭兵5名を仕留めた。引き続きレオン本社に向かう」

『あら、もうですか。早いですね』

「ああ」

『……いつもの減らず口はどうしました?』

「関係ないだろう。何もないなら次いくぞ」

『……』


 耳を澄ませれば、あちこちから戦闘の声が、音がする。奇妙な安らぎすら覚える。


「……あっちか」


 俺は一際大きな戦闘が起こっているであろう方向へ、誘われるかのように踏み出した。


「ん?」


 左眼にピリリとした感覚が走り、反射的に上を見る。


「……やっぱ来るよな」


 黒いコートと翼。その華奢で小さめの身体に見合わない長筒を携え、ヘレナがこちらを一瞥した。


『来るな』


 とでも言いたげだ。思わず後を追おうとしたが、人の気配を感じてとっさに身を屈める。

 直後、俺の上方から銃声、後方から悲鳴が聞こえた。


『な、なんだ!今の!』

『狙撃、か?とりあえず引くぞ!』

『くそっ、本人以外もおっかねえじゃねえか!』

『あの男は今回の最優先目標じゃない、諦めろ』

『くそぉ!』


 声のした方を覗き見ると、大口径の弾痕と血飛沫、そして腕が落ちていた。

 その手に持っていた銃は前回の襲撃者と似通っている。俺を尾けてやがったのか。


 礼を示そうと空を見るも、ヘレナの姿は既にない。


「今回はあいつも余裕がないってことか」


 つーか、外した……?あいつの腕なら逃さず頭か心臓あたりに風穴空けられると思うのだが。


「まあ今回は助けは期待できない、と」


 考えてみれば元々スタンドプレーが俺の流儀なんだから、誰かに頼るというのがそもそもおかしい話なのだ。

 そう、おかしい。

 気を取り直しつつ左眼を起動する。


「……10、20……いや、もっとか」


 前方、首都のメインストリートに大量の悪魔が集まっているようだ。これは暴れ甲斐があるな。

 だが、相変わらず特殊な反応……憑き者の反応はない。ボレロは今回の件に絡んでないのか?片っ端から戦っていけば、その内会えるとは思っていたがそうでもないらしい。


 ともすればさっきの男達の言動も少し気になる。「あの男は最優先目標ではない」……。

 今回のこれは本筋じゃないってことか?


「脚本……演出」


 そう、少しうまくいきすぎだ。首都に悪魔を放つことも、そしてそれを迎え撃つ側も。なんの不自然もない。


 待て。そもそも何故このタイミングで悪魔?

 前回の教訓を得て、教団も一筋縄ではいかなくなっていることは把握しているはずだ。あの時は俺を釣ることが目的のようなことを言っていたが、今回はなんだ?


 世間では、悪魔は人間を食うもの、つまりはそれを目的に暴れ回るものだと認識されている。

 だから今回も悪魔の大量発生及び暴走、でことが片付けられる。


 それを隠れ蓑にした何か、別の目的がある……?




「……いや、らしくない熟考をしてる場合じゃないな」


 視界に入ったのは、大量のデーモンとリザード、そしてその中心で巨大な体躯に見合わない俊敏な動きをする悪魔。


 3mに達しようかという大きさと全身の引き締まった筋肉。4つある眼はせわしなく強敵を探し求め、その咆哮は味方をも震わせる。そして何より、側頭部から伸びる飾りではない禍々しい一対の角。





「ここにきて、大鬼(オーガ)か……!」




・ブロント

 リザード種派生、雷属性。通常のリザード種に比べて、仄かに黄色い。敏捷性及び反応性が向上しており、冷製さも併せ持つ。銃弾を逸らすレベルの電磁波と、近づくものを寄せ付けないスパークは脅威だが、攻撃力そのものは同種の中では高くない。

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