Degression 2
「意外と堪えるな……」
今この僕、ジグは教団の食堂で昼食をとっている。ひとりで。ぼっちで。カウンター席で。
元々魔術学校でもわりかしぼっち気味ではあったものの、完全ではなかったし……。
ふい、と何気無く振り向いて周囲を見るとみんなザッと目を逸らす。
最初は絡まれたり因縁つけられるんじゃないかと戦々恐々してたんだけど、どうやら先輩に対する恐怖の方が勝るらしい。それに今んとこ僕実害ないし。
「ここからどううまくやればいいんだ……」
ずるずる、と力なく麺をすすっていると、周囲がざわつき出した。
なんだなんだ。僕が何をしたっていうんだ?
「君が、ジグ君……だよね?」
突然話しかけられたのでビクッとしつつ振り向く。その声が予想以上に高かったのもある。
「あ、えと……」
思わず口を詰まらせてしまった。
藍に近い色の長めの髪、整った中性的な顔、そして何よりその華奢な体つき。
「驚かせてしまったかな?」
「いえ、そういうことでは」
キョドりつつも、周囲を見る。どうやらざわつきの原因はこの人のようだ。
「ええと、僕は第一部隊、魔術師のソアラ。もう一度聞くけど、ジグ君でよかったんだよね?」
「あ、はい」
そういえば最初の質問に答えていなかったとか思ってる間に、僕の隣に座ってくる。
「隣、いいかな」
「も、もちろん」
ソアラ……?そういえば先輩が言っていたような、確か……。
『あー、今日はソアラんとこ行かにゃならんのだった』
『誰ですか?』
『ん?まぁ、知り合いというか、お前の言葉を借りれば後輩ってことになんのかな』
『へえ。教団内にそんなに親密な人間いたんですね』
『お前俺を何だと思ってんだよ』
『鬼か何か』
『……まあ、とりあえず俺は午後いねえから自主練でもしてろ』
『はいはい、で、そのソアラって人はどういう人なんです?』
『しつけえな……歳不相応に落ち着いた男だよ、ありゃ』
『不相応って、子供なんですか?』
『お前もガキだろうが。まあお前より年下だよ』
『へえ……』
いやいや。待ってくださいよ先輩。男って言ってましたよね?
「ん?どうしたの?そんなにまじまじと見つめて」
「あ、すいません」
「むう。見たところ同い年くらいだし、敬語はナシで」
「あ、はい」
「……根強いみたいだね。ま、いいか」
「それで、僕に何の用でしょうか」
「用ってほど大したことじゃないんだけどな」
と、言いつつサンドイッチを頬張る。
「ああ、なんか緊張してるみたいだけど」
「え、それは」
「念には念を押しておくけど、僕は男だからね?」
「……」
「まあ、初見じゃ無理ないとは思うけどさ」
やはり、そういうことなのだろう。そうだ。彼は男の子、僕と同い年か年下くらいの……。
そう考えると段々緊張はなりを潜め、普通の男の子に見えてきた。
「その、キョドってごめん」
「ん、別に構わないさ」
「で」
「僕は君と話してみたいだけさ。ボルカノさんが一目置いているらしいから」
「あぁ……なるほど」
因縁、というほどではないがようやく先輩絡みの人物に会えたわけだ。
「同じ魔術師としても、その圧倒的らしい力に興味あるしね」
「まだまだ素人ですよ」
「経験的には、でしょ?才能的にはあの輪さんを越えるだとか」
「それは言い過ぎですよさすがに」
「じゃあ匹敵はしうる、ってことか」
「……」
見かけによらず人を引っ掛けるタチらしい。この人。
「まあ、何れにせよ午後は暇でしょ?」
「あれ、先輩と約束あるんじゃなかったでしたっけ?」
「約束って……それはソオラの方だよ。ボルカノさん、また間違えてる」
「……どちらさまで」
「僕のお姉ちゃんだよ」
「なるほど」
「ということで、食後適当な時間に修練場に来てよ。僕はそこでテキトーに鍛えてるからさ」
そう言うとソアラは席を立つ。もう食べ終わったのか。
「……ふー」
「どうかした?」
「い、いや、なんでもない」
「じゃ、また後で」
とてて、と走っていく姿を見送る。
やばい。麺がのびてた。
「ごめん遅くなった」
「ん?別に構わないよ。誘ったのは僕だしね」
「麺がのびちゃってさ」
「ふふ、僕と話してたからか」
「いや、そういうわけじゃ」
「さて……やっぱり、というか相当なギャラリーを連れてきたね」
「正直あれを捲くのに時間かけたつもりだったんだけどなぁ……」
案の定、というか結構な数の野次馬がいる。興味本位の人もいれば、攻撃的な目つきの人も、探るような眼差しの人もいる。
「まあ、悪目立ちしちゃってるのは仕方ないよ」
「悪……」
「とりあえず、修練場は初めてかな?」
「うん」
「今までどこで鍛えていたんだい?僕も食堂で見つけるまでは全然見つからなくて苦労したよ」
「とりあえず先輩からは基礎体力の向上と戦場での立ち回りしか」
「なるほど、それは修練場じゃなく運動場や射撃ブースでやってたわけだね……うん、立ち回りか。あの人らしい」
「それに修練場には面倒な輩が多いから嫌いなのと、魔法の訓練なんてのは知らん。とのことらしい」
「……あの人らしい」
ソアラは教団の制服に着替えてある。戦闘部隊の黒と青の丈が長めのミドルコートに、ハーフパンツ。動きやすそう……というか。
「制服って色々あるのか」
「ん?ああ、そういや君は春先なのに暑そうな格好のままだね」
「教団製ってことで普通の服よりかはいくらかマシですけどね……」
「城下町で改造及びオーダーメイドしてもらえるよ」
「え?」
「まあそれなりの知名度と、実績及びお金がいるけど」
「それ制服っていうのかなぁ」
「まあその辺は結構緩い。公衆良俗に反しなければ自由だ」
「例えば?」
「んー、今度第四部隊の人でも観察してるといいよ。かなりきわどい人もいたはずだよ」
「先輩も何かしら改造してるのかな」
「あの人は……結構念入りだったかな」
「どんな?」
「まず教団の制服には防護服的な役割もあるじゃない?」
「うん、この数日先輩にしごかれてそれは実感してる」
「端的に言うとこれ、銃弾程度なら貫通できない」
「ええ?!」
まさかそこまでとは思ってなかった。一体何を使っているんだ……。
「まあ例え、だけどね。実際には撃たれないに越したことはないし、保証もない」
「お、おお」
「生地を増せばさらに強くなるけど、素の状態でもこれ結構動きにくいでしょ?」
「そうだね もう慣れたけどさ」
「まあだから、僕はファッションも兼ねてこんな風に短くしたり、関節部の布を減らしてもらったりしてるわけだ」
「ファッションなんだ……」
「で、ボルカノさんの場合、耐熱、対薬、その他環境態勢は維持というか高めつつ、手足の末端以外は普通の服」
「へ?」
それ、防護服とは呼ばないですよね?
「なんでも、頭や胴体に攻撃が当たるような戦い方してりゃどの道実際には死んでるから意味がないらしいよ」
「正論だけどさ……」
そこは先輩が元々傭兵の出であることも加味してるんだろうけど。
「でも手足には攻撃はよく当たるし、なくなると戦闘続行が厳しいから守るらしい」
「なんか、めちゃくちゃですけど……先輩の戦い方見てると不思議と納得ですよ」
確かに、リザードの尻尾とかは制服といえど容易に貫通してた。そういう意味では当たらないことを前提としてた方がいいのかもしれない。
「さて、話が逸れたけど。修練場ってのはまあ練習試合をしたり、魔法を思う存分ぶっ放せるような場所だね」
「カウンター席からはよく見える」
「そうなんだ。僕は普段使わな……あ」
まぁ、そりゃそうだよね。結構君有名っぽいし、一人で昼食とかありえませんよねー。
「ごめん、そういうつもりじゃなくて」
「いや、構わないよ……いつものことだし」
「(すごい気にしてる……!)」
「で、つまりは今から君と練習試合をしよう、というわけだ」
「試合?」
「うん、君のことだ、殺傷力のない魔法くらいは把握してるでしょ?」
「まあ、一応」
「一回くらい対人戦を経験しておいても損はないと思う。一応魔術師を相手にする機会がないともいえないしね」
「んーとさ」
「なんだい?」
「親切……だね」
「えっ、えー、あー……そうかな?」
「てっきり教団には先輩を目の敵にして、それにくっついてきた僕も敵視してるような人しかいないと思ってた」
「そんなことないよ」
強い言葉。即答、かつ、力強さを感じた。
「正直僕だってボルカノさんと関わることによって嫌われたりとかもするよ。でも、それはごく一部の人だ。大抵は僕をただの子供だと思ってる。君だって、そのごく一部からは嫌われてるかもしれないけど、あの辺のギャラリーの中の人は大半、君がどういう人かわからないから見にきてるんだ。要は、仲良くなりたいわけだよ。できればね」
「そういう……ものなのか」
「教団に入った以上はみんな仲間だ。多少のズレはあっても、最初から嫌う人はいないよ。あとは君の、そう立ち回り次第だね」
「そうか……頑張るよ」
「うん、がんばれ」
にこり、と笑う。不覚にもドキッとしてしまった。やめろやめろ。僕にそっちの気はないぞ。
「さて、やろうか」
「どんな感じに?」
「んー、とりあえず審判呼ぼうか」
きょろきょろと周囲を見渡し、ある一点に目をやると、ソアラは顔を輝かせる。
「お、いたいた……おーい!アンジー!」
「ひっ」
修練場の端、100mほど離れていてもわかるレベルでビクッとした人影。
「ビビられてるけど」
「気が小さい子なんだ、しょうがない」
バタバタと走ってきたのは女の子だった。
この制服の色は……開発部だったかな?小柄で、眼鏡をかけている。
「す、すいましぇん!」
噛んだ。
「いつもとおり、審判頼むよ」
「えぇ!またですか!」
「君が一番詳しいんだから、ね?」
「わかりました……そちらの方は?」
「えーと、ジグ。訓練生で、ギビング西支所所属……」
と言い終わる前にソオラの後ろに隠れてしまった。
「ギビング……西……白い悪魔……!」
「あー」
ソアラが頭を掻く。
「気を悪くしないでほしい。彼女は、修練場のシステム担当で、ここの監視やセキュリティ、機械を受け持ってる」
「で、なんで審判?」
「最初はここの監視カメラを見ていた、ということで誤審の証明とかをたまにしてたんだよ」
「ほう」
「んで、わからないとか言うと喧嘩になる」
「うわ、めんど」
「ということで、これ以上嫌な思いをしたくないから本気で試合を見ているうちに……」
「プロになってしまったと」
「そういうこと」
「アンジー、彼はボルカノさんみたいに厄介事ばっか持ち込む人でも、粗暴で後先考えない人でもないから」
「ホントですか……?」
今、さりげなく酷いこと言わなかったか?!
「個人間でいざこざがあるとさ、決闘で勝負するのがうちの常なんだよね」
「と、いうことは」
「ボルカノさんは本当に毎週のように決闘してたからそのたんびに圧勝して不正を疑われたり、こじつけやいちゃもんを」
「アンジーさんに食ってかかって、ってことか」
「だから彼のことが苦手なのさ。嫌いってわけじゃない」
「微妙にというか全くフォローになってないけど、まぁいいや。よろしく、アンジーさん」
「あ、はい……」
互いに修練場、魔術用の試合部屋にて得物を構える。
「手加減はいらないよ」
「そんな余裕ないって……」
ソアラの杖は短剣の形をしている。複数持っているところを見ると、恐らく投げて使ったりもするんだろうな。今回は非殺傷だからないと思うけど。ないよね?
かわって僕のはただの典型的なメイス、杖だ。霊子鋳造されてるから攻撃を防いだりとかはできるけど、戦闘には不向きだよなぁ。
「では、どちらかが降参、戦闘不能になるまで……」
さっきまでのおどおどした態度がまるで見えないアンジーさん。
とか考えてる場合じゃないぞ。
「始め!」
……属性、水。範囲、楕円。距離、0-50。方向、拡散。形式……氷結。
「!」
僕を中心とした楕円上が一瞬で凍りつく。周囲からワッ、と歓声があがった。
『おい、あれを一瞬で!』
『やべえなあ、おい!』
『やるな……』
ソアラが凍った足元をバキッと剥がす。
「考えたね」
「少なくとも機動力では勝てる気しないんで」
「だけどそれは君も同じ……」
足元の氷は溶けている。僕は既に……。
属性、炎。範囲、球。距離、0.3-0.4。方向、下方。時間、持続。形式、放熱。……条件、追従。
「これは……条件付与か!」
「これで、僕は自由に動ける」
「いいハンデだね」
そのままソアラは足元が凍っているとは思えないほど巧みに加速をつけ僕に向かってくる。
「なら」
属性、風。方向、前方。形式、圧力。残条件圧縮。
「風か」
……おかしい。風が、効いてない……?
「ちょっと甘い」
「くっ……!」
属性、光。方向、拡散。形式、発光。残条件圧縮!
目の前に迫ったソアラに目くらましの光を放つ。同時に逆方向の闇属性で自分を守ることも欠かさない。
「目くらまし、ね」
その間にバックステップで距離をとる。なんだ。さっきの風属性の設定はミスしていなかったはずだ。
そのまま距離を置こうとして、踏み出した後ろ足が滑る。
「なっ!」
そんな、炎の術式は発動中のはずなのに……。
直後、風属性の魔術が足元で発動する。ふわり、と身体が放り上げられた。
「う、わわ」
変な体勢で飛ばされたから受け身が取れない。というか、ソアラの姿も見えない。
「ぐぁ……!」
地面に仰向けにうちつけられた。そんなに高く飛ばされていないが、姿勢が姿勢だったので息が詰まる。
「もらった」
「!」
起き上がろうとすると、もう目の前までソオラが迫ってきていた。
そのまま僕が溶かした場所を踏んでジャンプ。
「くっ……」
馬乗りになる形でソアラに跨られた。氷の地面によりスーッと滑っていく。
僕の首筋には短剣があてられている。彼の勝ちだ。
そのまま氷の端までいってストップ。
「降参、だよね」
「もちろん」
「勝負あり!勝者、ソアラ!」
ギャラリーがどっと沸く。
『さすがだな!』
『でも新入りの方も面白い戦い方よね』
『あら、あらまあ』
『というかそもそもあいつ、少なくとも3属性以上使ってたよな』
『やはり天才というのは本当か』
『ま、今後が楽しみねぇ……それより、あれはいいものね』
「あ……」
「ん?どうしたの」
なんというか。押し倒されてる構図だ。これ。非常に危ない。
気のせいか、そっち方向の嬌声も多い気がする。女性の。
「ご、ごめん!退くよ!」
「こちらこそごめん」
なぜか赤くなりつつ、そそくさと僕から離れるソアラ。
このまま野次馬のいる廊下に出ればもみくちゃにされること請負だろう。
「と、とりあえずこれじゃ話もできないし、個室ロッカーのほうにでも行こうか」
「そうだ……ってどこに!」
廊下とは反対、メンテナンス用のドアを指差すソアラ。
「近道さ」
僕は彼に手を引かれて走り出した。僕か彼かはわからないが、思ったよりその手は湿っていた。
「ちょっと、ソアラさん!ジグさーん!修練場元に戻してからにしてくださいよー!氷漬けじゃないですかあ!」
「なんとか撒いたかな」
「ぜぇ、ぜぇ……」
「君ホント体力ないね……」
「しょうが、ない、よ……まだ一週間くらいしか経ってないし」
「それもそうか」
教団の訓練エリア…つまりは先ほどの修練場や運動場、各種状況ブースには中央棟、シャワールームなどを擁する建物がある。
「まさか、こんな道があるとは」
「ふふ、僕は長いからね。子供の頃から姉と一緒によくこういう道を見つけてたよ」
「で、ここが5階、個室シャワールームの真下ってことか」
「そゆこと。君は使ったことないかな?」
「いや?むしろここしか使ってないよ」
「そっか。僕もだ」
普段は皆1階の共同シャワーブース及び浴場を使ってるらしい。裸の付き合いとやらだ。
「僕はまだ馴染んでないからだけど……君も?」
少し嘘をつかせてもらった。馴染んでも、他人に裸は晒せない理由がある。
「んー、教団の男の人って当たり前だけど屈強な人が多いじゃない?」
「そうだね」
「ちょっと尻込みというか、苦手でさ。それに……なんか変な目で僕を見てくる人もいないわけじゃないし……」
「ああ、なるほど」
僕だけじゃなかったらしい。何の慰めにもなってないけど。
「まあ、そういうことなら好都合だね」
「で、さっきのなんだけどさ」
「おう?」
「最初の風の時と、最後僕が転んだ時……いや、僕を転ばせたのはどうやったのかな?」
「勤勉だなあ。汗を流した後じゃ駄目かい?」
「君だってあんまり無闇に周囲に聞かせたくないだろ?」
「……わかってるね」
互いににやり、と。
「最初のは対抗というものだね」
「対抗……」
「相手の放った魔術を相殺する。まあ単純に魔術の発動速度と見破る目があれば誰にでもできることだ」
「いつか教えてもらえないかな?」
「君にも知らないことはあるんだね」
「僕が知ってるのは魔術そのものだけさ。使い方はまだ全然」
「謙虚だなあ。まあ、で最後のは……少し高度かな。特に技術としての名前はないけど」
「オリジナル?」
「みたいなものか。端的に言えば、遅効性の術式を置いておいて、霊子を吸わせておいたんだ」
「……そういうことか!」
発動時間を指定した魔術は、そこに術式を維持し続けるため周囲の霊子を吸い続ける。その霊子密度が低くなった領域に踏み込んだから僕の足元の炎の魔術はガス欠で発動しなくなったわけだ。
「まさに対人特化だなぁ」
「僕は君みたいに多才じゃないからね。限られた武器の使い方をひねり出すしかないんだ」
使い方、か。確かにそう考えれば1属性しか使えなくても十分戦えそうだ。
「僕は風しか使えないしね。あとは、周囲を照らす程度の光と飲み物を冷やすくらいの水しか使えない」
「そう言われると便利そうだな……」
「あとさ」
「ん?」
「さっき君は僕のことを親切、といったけど」
「そうだね」
「僕だって、下心がないわけじゃない。僕に、君の知識を教えてくれないかな?代わりといっちゃ不足だけど、練習に付き合うし、技術を教えるからさ」
少したじろいでしまった。今までにない経験だったから。
「……喜んで」
「よかった。君が頑なじゃなくてよかったよ」
「じゃあ、改めて……よろしく」
「よろしくおねがいします」
ソアラがその綺麗な手を差し出してくる。僕は少し恐る恐るそれを握った。
「……はぁ!」
「え?!」
「緊張したぁ!」
「え?え?」
「あ、ごめんね。さっきまでのは結構演じてた」
おお?なんだ?雰囲気がゆるくなったというか。
「この容姿だと割と強気でいかないとなめられちゃうからさ。本当は君にいつ冷めた態度を取られないかとヒヤヒヤしてたんだ」
「な、なるほど。お互い様だね」
「これで僕ら友達……だよね?」
……なんだか最初に感じていたむずがゆさというか、ふわふわした感じが戻ってきた。
というか何で上目遣いなんだ。僕に道を踏み外させる気か。
「うん」
「♪」
僕の返事を聞いた瞬間顔を輝かせる。
「じゃあ、いい加減汗を流すとしようか」
「そうだね……」
なんか変に気を遣うなぁ。ていうか気を遣ったりするんじゃないぞ僕。
ガコン、とハッチを開け、いつものシャワールーム……
の前にアンジーさんが仁王立ちしていた。
「お二人方……」
『あ……』
「置いてかないでくださいよぉー!」
教団に入って一週間。友達が2人できた。
Degression=無駄話。間の話というか、本筋とはあまり関係のないお話です。次からは元に戻ります。
・条件付与
魔術の一構成要素。「追従」や「接近反応」などの発動条件を術式に設定する。非常に多くの霊子記憶領域を使う上に、集中力も必要な高等技術。




