中は中で苦労をしていた。
またわけのわからないものを書いてしまいました。
「あーくそ、いい加減当たれよ!」
CRフェアリーワールドとタイトルが付いている新規のパチンコ台がある。 それが都会から遅れること一週間後、自分がよく行くパチ屋にやっと新台入荷された。 台の特徴は萌えパチと呼ばれる可愛い妖精3人をメインとして色々な妖精がリーチアクションを行なう。 また、超絶と評されるほど荒波で、噴くときは20連とか軽々と続いたりするが、はまる時は1000回オーバーは軽いと言うバランス? ナニソレ? と言わんばかりのめちゃくちゃな設定が採用されている。何を考えてこんなバランスにしたのだろうか。
しかし、噴くときはこれまた馬鹿みたいに噴きまくる為に、一部の人はその極端な爆発力に魅せられ金をかなり突っ込む猛者も多いとか。 1000回オーバーハマリしても、そこから怒涛の爆発で最終的に勝てることもあるので、余計に性質が悪いと情報誌には記されていた。
そんな訳で、他の人の例に漏れず脅威の爆発を体験したいがために俺も早速打ち始めたのだが……さすがに初日とあって釘は良い。甘い設定のためよく回っている。 だが肝心の当たりが来ない! 灼熱と紹介されている7色妖精群とかも数回来ているのにも関わらず、はずす、外す、外しまくる!
「ちっきしょう!」 (ガツン!)
またも外れた……最初の当りは来ずに回転数は既に500回転オーバー。そのためつい台の下の方を叩いてしまった。しょうがないじゃないか、周りの人たちは最低でも3連荘以上しているのに自分だけ当りがきていないんだぜ……? いけない、落ち着こうと深呼吸をしようとしたその時だった。
(痛いじゃない!!)
そんな若い女性の声が聞こえてきた。 きょろきょろと周りを見渡すが居るのはおじさんおばさんばかりで、該当しそうな女性はいない……空耳か?
(何処見てるの、目の前よ!)
その声にパチンコ台へ視線を向けると……このフェアリーワールドのヒロインキャラ3名が此方に人差し指を付きつけていた。
(これは……よくできてるな)
つまり、台パンと呼ばれる台を叩く行為をするとこういう映像が流れるようになっているのだろう。 一旦打つのを中断し、液晶表示が通常状態に戻るのを待つことにした。
(あのね! 私達だって好きで外しているわけじゃないの! なのに叩くなんてひどいじゃない!)
ヒロインの一人のパルネが頭から湯気が出る表現が付けて怒っている。
(そりゃ当たらなくてイライラするのも分からなくはないけど、暴力を振るっても当たらないわよ!)
さらにヒロインの一人であるリリーンが言葉を続ける。 俺ははいはいと話半分に聞き流し、タバコを咥えて火をつける。
(もうあったまきた! そういう態度を取るなら、あんたがやって見せなさいよ!)
最後のメインヒロインであるテインがそんな事を言う。
(やれるモンならやってやるぜ、お前たちよりしっかり当てられるさ)
そんな事を考えながら、ふぅーっとタバコの煙を吐き出す。
(((言ったわね!!! なら、ご招待してあげる!!!)))
なんと、液晶画面から手が出てきたかと思った瞬間、襟首をつかまれ台の中に引きずり込まれていった……。
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「ぐ、うう……なんだったんだ、夢か……?」
頭を振りながら体を起こす。 そこには3人の妖精が俺を睨んでいた……俺はまだ寝てるのか?
「「「はい、おはよう」」」
そう言った後に、3人の妖精は1人ずつ順番に俺の頬に容赦なくビンタを1発ずつぶちかましてきた。正直に言おう、マジで痛い。
「何をしやがる!」
いきなりビンタをされた俺は勢いよく立ち上がるが……。
「「「さっき私達を叩いた分よ! そのぐらいで勘弁してあげるだけマシだと思いなさい!」」」
と三人の妖精がハモりながら言ってくる勢いに負けてタイミングを逃す。
「おいおい、何を言ってんだ? お前たちを叩いた記憶なんか無いぞ!?」
俺がそう言うと、リリーンとテインが手を再び上げるが……パルネが止めたようだ。
「何で止めるの、パルネ!」
テインが文句を言っているが……、パルネは手でテインを制しながら俺を指差してきた。
「さっきアンタはこう考えたわね、『俺の方がお前たちなんかよりしっかり当てられる』と。 それならやってもらおうかしら……有言不実行は許さない性質なの、私は」
そう俺に告げた跡、俺の手を掴んで引っ張り始める。
「おい、何処へ連れて行くつもりだ!?」
さすがに俺も冷静で居られなくなり、パルネに対して抗議の声を上げるが……。
「決まってるじゃない、私達の仕事場よ」
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「ここは……」
連れて来られた先に見覚えがあった……ここはCRフェアリーワールドのメイン画面の場所そのものじゃないか!?
「やってもらうことは至極簡単。 リーチまでは私達が担当するわ。そこから先の当てる作業を貴方がやるのよ、貴方の発言をこの場で証明してもらわないとね」
そうパルネが言った途端、各種色々な宝石みたいなものが輝きつつ上から下へと落ちていく……これは……回転しているって事か?
「分かってると思うけど、左右同じ色の宝石を私達が止めたらリーチよ。 そこから真ん中の宝石を左右と同じ色で止めればいいだけ。その辺のルールは私達よりも当然詳しいわよね?」
つまり、俺達が普段見ている数字は、妖精たちにはこう言う宝石に見えていたということか。
「ほら、早速左右がそろったわよ」
つまり出番と言いたいのだろう。 中央の宝石が上から下に落ちている場所に近寄るが……。
「おい、これ落ちていくスピードが速すぎないか? これじゃ止められるはずが無いだろ!?」
だがパルネは鼻で笑ってから俺に言う。
「それを私達はやっているの。ほらさっさと止めなさい!」
当然止めることに成功するはずも無く……宝石の色は揃わない。
「ぜんぜんダメね。 よくもまあそんな腕で思い上がったこと」
いつの間にか後ろにいたリリーンが俺に向かって冷たく言い放つ。
「いきなりこんな事が出来るわけねえだろうが!」
俺は怒りに任せて言い返すが……
「貴方が思った俺の方が~という考えがいかに思い上がっていたのか、これからたっぷりと味わってもらうわよ」
リリーンはより冷え切った瞳で俺を見つめてきた。 チッ、そこまで言うならやってやらあ! しかしその後、リーチにはなるものの止める事が出来ない状況が十数回続いた。
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「あら、次はちょっと揃えるのが簡単になるわ」
パルネがそう言いながら、俺に網を渡してくる。
「その網で、宝石をすくい上げなさい。宝石の流れが縦から横になって、流れる速度が落ちるわ」
つまりこれは、スーパーリーチの一つか。 そうなるとさっきまでのはノーマルリーチ……なるほど、あんな条件ではノーマルリーチが当たる訳がない。 網をしっかりと構えて流れてくる宝石をロックオンする……今回はサファイアをすくい上げれば良いようだ。
「来たわよ! すくいなさい!」
パルネの声を受けてタイミングを計る。流れの速さ、宝石の順番をよく見て……ここだ! 完璧にすくい上げたと思って視線を向けた網の中に入っていたのは……真珠だった。
「あーあー……失敗ね」
テインの声が聞こえた後に、網が綺麗に消えてまた流れが縦へと戻る……完璧にすくったと思ったのに。
「宝石たちは本当にきまぐれなのよ、私達がなかなか当てる事が出来ない理由の一つね」
パルネが此方を見ずに声だけでそう伝えてくる。この様子じゃいつになったら俺は3つの宝石の色を揃える事が出来るのだろう……。
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それからしばらくの時間が経過し、心が折れかかっていた所にそれは来た。 輝く7つの光……虹色の妖精群……ということは……。
「来たわ! 最高のチャンスよ! 構えなさい!」
パルネの声が響き割った後に、今度は俺の右手に大きいアンカーハンドが現われる。このアンカーハンドで逃げる宝石を掴み取れという趣旨なのだろう。気が付くと、小型の船まで現われている。
「その船に4人で乗り込むわ! 逃げる宝石の追跡は私達がやるから、貴方はその道具で逃げる宝石を掴み取りなさい!」
慌てて船に乗り込むと、妖精の3人も乗り込み、船は急発進した。
「どわあああああ!?」
船の上でごろごろ転がる俺を見かねて、テイインが俺を起こす。
「しっかりしなさいよ! アレだけ大口を叩いたんだからここできっちり決めなさい!!」
励ましなんだか文句なんだか、分かりにくい声賭けを受けた俺は何とか立ち上がる。
「見えたわ、あそこよ!」
リリーンが指差す先に、逃げていく宝石……今回はルビーがいた。
「その道具は一回だけしか使えないわ、よく狙って!」
パルネがそう注意してくる。 俺は冷静に狙いを定める。
「いい加減捕まれ!」
そう悪態をついてから打ち出したアンカーハンド。 戻ってきたアンカーハンドには……ルビーがしっかりと握られていた!
「「「「やったー!」」」」
4人同時に喜びの声を上げる。 ものすごい達成感がそこにはあった。
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それから数時間だと思われるが、宝石の色を揃える役を続けた。 結局成功したのは24回で、失敗数は数え切れない……。
「やってみてわかったかしら?」
パルネの声に黙って頷く自分。 甘かった、俺達の世界とは全く違うベクトルで此方の世界は動いていた。
「思い上がりといわれて当然だった、本当に申し訳なかった」
素直に俺自身の非を認める。
「分かればいいのです」
そっぽを向きつつも、リリーネも謝罪を受け入れてくれたようだ。
「もう私達を叩かないでよ?」
念押しをしてきたのがテイン。 黙って頷く事で返事とする。
「じゃ、バイバイ」
パルネがそう言うと、ふわっとした浮遊感を受けて意識が遠くなる。 これは一体……。 気がつくとそこはいつも通っているパチ屋の中だった。慌てて時計を見てみると夜の8時半。後ろを見ると、6つほど重なっているドル箱。データを見てみると、大当たり回数は24回と表示されていた……。
(夢……にしては……)
換金した所、2000円の勝ち。負けなかっただけで十分だろうけど……今日の体験は一体なんだったのだろうか?
(俺がおかしくなっちまったのか? 病院へ行ったほうがいいのだろうか?)
考えはぐるぐると回り続け、答えを導き出してはくれない……。色々な感情を抱えたまま家に帰ることになった。
……あの日から自分の行きつけのパチ屋に行った時には、CRフェアリーワールドのみを打ち続けたが、あの初日のような現象は一回も起きることはなかった。一日の戦績は不思議と2000円から5000円の勝ちに納まり、超絶荒波と評されるはずの台であるにもかかわらず、俺が打つ台は穏やかな波で迎えてくれた……そして今日、CRフェアリーワールドは撤去されると知っている。
(今日で打ち収めか)
そう考えながら玉を弾く。 相変わらず穏やかな波で非常にゆっくりと玉が増える、今日はこの調子なら3000円勝ちといったところだろう……そして時間も過ぎ、帰る時間になった。
「……長い間ありがとな」
あの不思議な一件以来愛着も湧く台だったが、これで永久にお別れだ。流石に家に実機を買うことは出来ない……。 席を立つその瞬間、3人の妖精たちが手を俺に向かって振っているような気がした……。
それ以来、俺はパチンコを打つのをやめた。 あんな経験をすることなど二度とないだろうし、パチンコを面白いと思えることも今後はないだろう。あいつら3人は今どうしているんだろうか、完全に消え去ってしまったのか、どこか別の場所で……やめやめ、そんなファンタジーを見続けるわけには行かないのだから……。 他の人に話すこともない一時の夢。 あの日の不思議な記憶は、いまだに忘れることなく俺の中に残り続けている。
あくまで妄想です、当然全てフィクションです。




