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出会い

 光の塊が尾を引きながら天上近くまで飛び上がり、そのまま滞空している。


「な、なんだ?」


「お兄ちゃん!あれお化け?」


美優が光の塊を指差しながら何気なく言った言葉に


(お化け!? そんなバカな!)


オサムは狼狽えた。


(でも、もし本当にお化けだったら…)


「……どうしよう」


 単純に怖かった。

オサムは怖い番組を見た後、お風呂でシャンプーする時に『本当はいるのは分かってるんだからなっ!?』っと言ってしまうタイプであった。


オサムの不安を余所に、光の塊がふわふわと自分達の元へと降りてくる。


美優を連れて光の塊から距離をとるオサム。


ゆっくりと降下してくる光の塊はやがてフローリングの床に音もなく着地した。


「うわぁー! きれいだねぇ」


美優が警戒することなく近付うとするのを


「美優危ないからダメ!」


素早く自分の元へ連れ戻す。


「えーーッ! 大丈夫だよ!」


美優が頬を膨らませて抗議する。


「ダメなものはダメ!まずお兄ちゃんが調べるからちょっと待って!」


 勢いで言ってからオサムは激しく後悔した。

得体の知れない(お化けかもしれない)謎の光の塊を自分が調べる羽目になってしまったからで、言った手前、兄の威厳を損う訳にはいかなくなった。


「じゃあ早く! 早く!」


美優に急かされるようにオサムは唾をごくりと呑み込み、光に近付いた。


ゆっくり、ゆっくり近付いていく


そろり、そろり


「お兄ちゃんまだぁ?」


美優が焦れて急かす。


「も、もうちょっと!」


 もうちょっと何なのだろう?

自分で言っておいて、ふと考えてしまう。


 もうちょっとっとで光に触れるのか、

それとも

もうちょっとっとで恐怖心が無くなるのか、、


出来ればどちらも欲しいオサムであった。


亀みたいなゆっくり速度でも進めばゴールは自ずと見えてくる。


もう手を伸ばせば余裕で光に触れる距離にまで、たっぷり、たっぷり時間を掛けて近付いたオサム


後は


「…えっと」


…後は


「どうすればいいんだろう?」


取り敢えず、光に触れるか触れないかのギリギリの距離まで手を伸ばす。


ちょん。


「あ」


オサムの指が光に触れた。


間違えたギリギリの距離


パン!


その瞬間光の塊が弾けた弾けた光の粒子が舞い、二人の視界を照らす。


「うわあー! きれいだねぇ!」


美優が目を真ん丸にして喜びの声をあげる。


その傍らで


「さ、触っちゃった!? 僕大丈夫だよねっ?!」


狼狽えるお兄ちゃん


そんな対照的な兄妹の足下(カードがある場所)で


「ミュウ」


何かが鳴いた。


「ん?美優?」


オサムは一瞬妹の声かと思い、


美優は


「なぁに?」


小首を傾げた。


「ミュウ」


もう一度聞こえた鳴き声に二人は視点を床へと移す。


そこには


体を真っ白な毛で覆った小さな動物がいた。

一見してみると子犬のように見える。


「えっ!? 犬ぅ!?」


突然の訪問者に驚くオサム。


「ミュウ?」


子犬はゆっくりと頭を上げ、オサムとばっちり目を合わせた。


その時オサムは空気が変わった気がした。


子犬の目がキラリン!と光ったと思った瞬間


「ミュウウウウーーッツ!!!!!」


「うわっぷ?!」


オサムの顔目がけ飛び付いてきた!


一気に視界が真っ暗になり、ふさふさした柔らかな毛の感触が顔全体を覆った!


「ミュウっ! ミュゥゥーー!!」


「ふぇっ!? お兄ちゃん!?」


聞こえてくるのは犬と思われたミュウ、ミュウと鳴く動物声と、妹の狼狽えた声


「ななな、なんだよこいつ!」


慌てオサムは顔に張り付いた謎の生き物をひっぺがす。


「ミュゥゥーー!!」


 そいつは見た目は子犬のように見える。

真っ黒な大きな目とピンと尖った耳が愛らしい。

白くフサフサした毛が何とも言いがたい感触で、ずっと触っていたいような気分になる。


もう見た目七割は子犬


しかし、決定的に犬とは違う所が二つあった。


一つはさっきから


「ミュゥゥーー!! ミュゥゥーー!!」


と言ってオサムの顔を嬉しそうに舐めている。

犬はミュウとは鳴かない。


二つ目は……


「……これって、、、羽根だよなぁ………?」


その生き物の背中には小さな二対の羽根が付いていたのだ。


犬は空は飛ばない

じゃあこいつは鳥なのか?

それは無理がある!


「ミュゥー!! ミュゥー!!」


オサムの顔を嬉しそうに舐める謎の犬ともいえくもない生物にオサムは苦笑した。


別に動物が嫌いなわけではない。

寧ろこんな可愛いペットなら大歓迎だった。


しかし如何せんこの動物には謎が多すぎる。


おまけに


「……ここマンションだしなぁ」


ため息を吐きながら、オサムは謎の犬ともいえなくもない生物の頭を撫でる。


「…ミュン、クゥ」


嬉しそうにオサムの指を舐めるその姿は何とも愛らしい。


「はは! くすぐったい」


オサムは抱き上げると、その大きく真っ黒な眼を覗き込む


「君は何処から来たの?」


「ミュウ?」


オサムの言葉に可愛らしく首を傾げている。


「わかるわけないよなぁ……でも可愛いよな!!」


オサムの言葉に目を輝かせ再び顔に飛び付く。


「ミュウゥゥー!!!」


「うはっやめろって! くすぐアハハハハッ!!!!」


 この時オサムは気付かなかった。

自分の身にピンチが迫っていることに。



 取り敢えずその犬っぽい動物を『ちび』と呼ぶことにした。

幸い両親は今日は帰れないらしいので、ちびがばれる心配はなくなった。


「ほら! ちびおいで!」


「ミュゥゥ!」


 オサムが呼ぶとちびは嬉しそうに駆け寄ってくる。

そしてオサムの顔に飛び付くと、ぺろぺろと小さな舌で舐めるのであった。


「あっはははは! くすぐったいよちび!」


「ミュゥミュゥ」


そんなオサムとちびの様子を見ていた小さな影が一人


「………お兄ちゃん」


美優である


さっきから兄はちびばかりにかまって、美優は完全に蚊帳の外であった。


楽しそうな兄と犬みたいなやつ


うんっ! と一人うなずくと、美優は静かに立ち上がり、オサムの顔を舐めるちびの首根っ子を掴みひっぺがし


「らめっ!!!!」


叫んだ



「ミュウ!?」


「みっ美優!?」


突然大声を出した美優に驚くオサムとちび


「お兄ちゃんは美優のなの!! だかららめ!!」


ちびに向かって美優は涙を浮かべ、頬を膨らましながら『お兄ちゃんは私のもの!!』宣言


それに対しちびも


「ミュゥゥルルル」


美優に向かって毛を逆立て威嚇


もしくは


『それは違うわ!!』みたいな宣言


その光景を見た兄は


「なっ、仲良くね…?」


あたふた






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