↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR

水魚の交わり   ~ ちゃんと話し合うことが大事 ~

作者: とと
掲載日:2026/09/25

読んでいただきありがとうございます。

「あなたが、ラミレス伯爵令嬢?」


私はその日、ブラウンの髪を綺麗にカールした、綺麗な女性に声をかけられた。


「はい、そうですが…………。」


………この方は確か、トンプソン公爵令嬢様。


「あなた、ブレッド様との婚約を破棄して下さらない?」


!!!


「あのー。それはどう言った理由で」


「あなたが不貞をしていること、私はブレッドから何度も聞かされているのよ、ブレッドの優しさに甘えて、好き放題するあなたを、私はブレッドの親友として、見逃すわけにはいかないわ」


「…………。」


あぁ。ブレッド様は、私が不貞をはたらいていると、私に疑いをかけるだけでなく、トンプソン公爵令嬢にも話しているのね。


もー変な噂がたったら、どうしてくれるのよ。


「あの、トンプソン公爵令嬢様とお見受けいたします。公爵令嬢様を見込んで、是非お願いしたいことがあるのですが、ちょっとこちらに」


私は、トンプソン公爵令嬢様の手首を、がっちりとつかんで、近くにあるなじみのカフェに連れ込んだ。


「ちょっとあなた、何をするの、手を離しなさい」


「マスター、いつものケーキと、アッサムをふたつ奥の個室にお願い」


「はいよー。そのなに走って二人とも転ぶなよ」


気のいいマスターが、背中を向けたまま返事をする。


バタン。


ドアを閉めて、私は足を止める。


「ハーハー。あなた本当に令嬢なの?足が速すぎよ」


肩で息をする、トンプソン公爵令嬢様を椅子に案内する。


「こちらにおかけください」


椅子に座ったトンプソン公爵令嬢は、私を睨みつける。


「トンプソン公爵令嬢様、何か誤解をされているようですので、私の話を聞いていただいてもいいですか?」


「まあ、どんな言い訳かしら、聞いてあげましょう」


「んー。なんと説明していいか、トンプソン公爵令嬢様には、一緒にいるとなんだか安心して、心地いい。さらには自分が、活き活きするような友達っていませんか?」


「…………。」


「こう~。考えることも一緒で、どんどん楽しいアイデアが沸いて、わーーって遊んだ後は、一緒にゴロンと横になれるような」


「ふふ。子供みたいですわね」


「そうですね、私はそんな相手が、幼馴染です」


「まあ、私にもそんな方がいますわ、できれば…………。」


私は、トンプソン公爵令嬢様の手を両手で握る。


「もしかしてそれって、ブレッド様ですか?」


トンプソン公爵令嬢様が、眼をパチクリさせる。


「あのー。私も幼馴染には、気心が知れているので、好き放題なんでも話します。私の幼馴染は、モリス侯爵家のラルフです」


トンプソン公爵令嬢様は、コクリと頷いた。


「学院で、その幼馴染と教材をふざけながら運んでいる姿を、ブレッド様が目撃して以降、私にも不貞を、しているのではないかと、お茶会のたびに聞かれます」


「ラルフ(モリス侯爵令息)とは仲がいいですが、決して婚約者に対して後ろ暗い関係ではありません」


「私はブレッドに、あなたが、モリス侯爵令息と不貞をはたらいていると聞いたわ」


は~ぁ。


私は大きなため息をついた。


「私の父と母には変なこだわりがあって……。どうも両親の幼馴染はどちらも異性で、子供の頃から虐められるは、根も葉もないうわさを流されて、婚約の邪魔はされるは、大変だったようで、幼馴染とは絶対に結婚させない!と、私が小さな頃から言っておりました。ですから、ラルフと恋仲などありえないのです」


「そうなの」


今度は、トンプソン公爵令嬢様がため息をつく。


「家も似たようなものよ、爵位が下の家には、嫁に行かせない!の一点張り、そんなこと言ったら、私の嫁ぎ先は、王家か同格の公爵家だけよ」


私は、トンプソン公爵令嬢様の話に大きく肯く。


「王家の男子は、イザック殿下のみ、殿下は既に隣国の王女との結婚が決まっている、さらに同格の公爵家にいる男子は、みんな私より年齢が10以上も上で、既に結婚されているのよ、未婚の男子は10歳以上年下で、まだ子供ですのよ!私は他国にでも嫁に行け!と、思ってるのかしらね」


トンプソン公爵令嬢様が、テーブルにバン!と両手をついて立ち上がる。


はあ、なるほど、こんなに美しい方の婚約が決らないのは、公爵様のせいなのね。


「わかります!それは貴族の娘ですもの、婚約は家同士の契約だとわかっておりますけれども、親のわけのわからないこだわりで、どうして私達の将来が決められてしまうのでしょう!」


トンプソン公爵令嬢様が、私の手を握る。


「本当ですわ、あなたブレッドに聞いているより凄く良い人ね、私のことは、ヴィオラと呼んでアデル」


「はい。ヴィオラ様」


「きっとブレッドは、あなたのことを誤解してるのよ」


ヴィオラ様が、悲し気に目を伏せた。


「ヴィオラ様…………もしかして、ブレッド様のことが好きですか?」


私の問いかけに、ヴィオラ様の顔がどんどん赤くなる。


んんん~。かわいい。


「あの、私思いますに、ブレッド様もヴィオラ様のことが、好きだと思います」


「アデル!自分の婚約者のことよ、何言ってるの」


「だってヴィオラ様が一緒に居て、こころ穏やかなのは、ブレッド様ですよね?」


ヴィオラ様は大きく目を見開いてから、私から眼をそらした。


「…………ごめんなさい」


ヴィオラ様が、突然頭を下げた。


「ブレッドから、毎日アデルの不貞について、聞いてるなんて嘘なの…………以前に少しだけ、アデルがモリス侯爵令息と、仲がいいってつぶやいたのを聞いただけ、ブレッドは一度もあなたを悪く言ったことなんてないわ」


うー。眼をうるうるさせた、ヴィオラ様が、子犬みたいで抱きしめたい~。


「ヴィオラ様、誤解が解けたならいいのです。私は見てのとおり、令嬢とは名ばかりのガサツで、にぎやかなタイプですから」


ヴィオラ様が、クスリと笑う。


「ブレッド様も、静かで穏やかな方じゃないですか、お茶会をしても、私とは話も続かないし、申し訳なくて」


「まあ、ブレッドは無口だからね~。でも段々慣れれば、感情の起伏なんかもわかるようになるわよ」


「あー。分かります、ラルフの考えていることは、何も言わなくてもわかります」


ヴィオラ様が私の顔を見て、ニヤリと笑う。


ん?


「アデル、私のことばかり聞いたけど、もしかして」


ヴィオラ様の顔がグイっと近づく。


「モリス侯爵令息のこと、好きなの?」


「ややややあ、あのあの私だって、貴族令嬢の端くれです、分別くらいあります~」


顔が熱い。


ぐぬぬ。


「あー。ヴィオラ様♪さっきマスターに、お願いしたケーキ、凄く美味しいんですよ~。あれ?なんで持ってこないのかな!私見てきますね~」


私は勢いよく立ち上がり、そのままドアを開ける。


ガン!!!


良い手ごたえ!


「いたぁ~」


私は、そーっとドアの外を確認する。


「ラルフ!」


ドアの前には、頭を抱えてるラルフ、その後ろにはブレッド様とイザック殿下!!


さらに後ろに、シルバートレイを持ったマスター。


紅茶は、すっかり冷めているみたい。


ヴィオラ様が、私の前に進み出る。


「まあ、ブレッドにイザック殿下まで、こちらでなにを?」


「いやいや、幼馴染のヴィオラが、ラミレス伯爵令嬢に、ものすごい勢いで、連れ去られるのを馬車の中から目撃してね」


イザック殿下は、ニコニコ笑いながら個室に入ってきて、さらりと椅子に座る。


「店主殿、僕達にも紅茶をお願いするよ」


イザック殿下が注文すると、マスターはハッと我に返り背筋がピンと伸びる。


「は、はいただいま、冷めた紅茶も入れ直してまいります」


マスターが、慌てて厨房に戻って行く。


もしかして……………………。


私は、ヴィオラ様と眼をわせる。


ヴィオラ様が頷いた。


「まあ、それでは私を心配して、後を追ってくださったと………で。どうしてドアの前で、聞き耳を立てていらしたのですか?」


ヴィオラ様が、イザック殿下の向かいに腰を下ろして、ちらりと殿下の顔を見る。


「やー怖い顔しないでよ、ヴィオラ」


イザック殿下が頬杖をついてヴィオラ様を見上げる。


「ヴィオラは、ラミレス伯爵令嬢と、知り合いだったの?」


「いいえ、学院で見かけることはありましたが、お話したのは今日が初めてです」


ヴィオラ様が、私を手招きする。


私はイザック殿下に一礼し、ヴィオラ様の横に座る。


ヴィオラ様が、私の手を取った。


「でもすっかり、仲良しになりましたの♪」


「イザック王太子殿下、お初にお眼にかかります、、ラミレス伯爵家が娘アデルと申します」


私は立ち上がり、渾身のカーテシーを決める。


「やあ、アデル。話はラルフから毎日聞いているよ」


私は、イザック殿下の言葉に驚いて、ラルフを睨む。


ラルフは、すました顔で、窓の外を見ている。


…………ちょっと余計なことを、殿下に話してないでしょうね~。


「ははは、確かにヴィオラと気が合いそうだね」


私とヴィオラ様を交互に見て、イザック殿下が笑う。


コンコン。


個室のドアがノックされた。


「ご注文の品を、持ってまいりました」


マスターが、紅茶とケーキをワゴンに乗せて運んでくる。


「おや、僕たちにもケーキを?」


「はい、こちらはサービスです」


私は思わず身を乗り出す。


「イザック王太子殿下!ここのケーキ、すごくおいしいんです、是非食べてください♪甘いものが苦手なラルフもぺろりと食べれるくらい」


「はー。あのラルフが」


笑顔でうなずく私を、今度はラルフが睨む。


「いや、二人は本当に仲がいいんだね、でも不貞を働いているわけではないんだろ」


「「もちろんです」」


ラルフと私の声が重なる。


「はは、息もぴったりだね」


イザック殿下が、口を押えてクスクスと笑う。


「もーイザック殿下!私とアデルの話をどこまで聞いていたのです!」


「んーところどころしか聞こえなかったよ、(どんな言い訳かしら、聞いてあげましょう)とか(私は他国にでも嫁に行け!と、思ってるのかしらね)とか(わかります!…………どうして私達の将来が決められてしまうのでしょう!)とかかな」


「最後の方は、全然聞こえないから、ラルフがドアに耳を当てたが………。」


「イザック殿下、このケーキは本当においしいですよ」


声に振り向くと、ブレッド様のケーキは奇麗になくなっていた…………。


この状況で…………いつの間にケーキを…………つかみどころのない人。


「えー。私も食べてみよ♪」


ヴィオラ様が、一口ケーキを口に入れて微笑む。


「ん~。アデルこれ美味しいわね、教えてくれてありがとう」


ん~。美人の麗しい微笑み!眼福だわ。


「ブレッド。もう少し、食べる?」


ヴィオラ様が、お皿をブレッド様に差し出す。


「ああ、いただく」


ブレッド様は、自分の使ったフォークで、ヴィオラ様のケーキを一口大にカットし、刺してから口に運ぶ。


ん~やっぱり、私といるときなんかより、むちゃくちゃ自然。


まじまじと眺めていると、ラルフが私を肘で突く。


「お前、婚約者が他の令嬢とケーキを分け合っていて、嫉妬とかないのかよ」


「うん。ビックリするくらい無いわ。どちらかと言うと、わぁ~お似合いだわって思う」


「ははは。アデルは、相変わらずだな~」


「もう大体ラルフは、どうしてここにいるのよ!」


「あーん」


私が腕を組んで、ラルフを睨むと、いきなり口にケーキが押し込まれた。


「むーーー」もぐもぐ「いきなり淑女の口に、ケーキを半分も入れないでよ」


「ははははっは、口開くからだろ」


「反射よ、小さなころからの癖!」


じゃれる私達を、ブレッド様とヴィオラ様が目を丸くしてみている。


「はいはーい」


突然、イザック殿下が手を上げた。


「私にはわかったよ、親たちのせいで、ブレッドとアデルは婚約したけれど、本当はお互いの幼馴染といる方が、居心地がいいってことだね」


ボン!!


私とヴィオラ様の頭から蒸気があがり、顔が赤く染まる。


「ふふふ、4人ともわかりやすいね」


殿下の言葉に周りを見回せば、ヴィオラ様は真っ赤、ブレッド様はあごに手を置き、ラルフは頭を掻いている、ラルフが頭を掻く時は、恥ずかしさをごまかす時!


「……………………。」


「じゃあ、僕の側近達が幸せになれる様に、一肌も二肌も脱いじゃおうかな、とりあえず、紅茶が冷める前にいただこう」


イザック殿下の圧ある微笑みに負け、みんな結局、紅茶をいただきながら、自分の気持ちを、吐露することになった。



私も知らなかったけれど、ブレッド様もラルフも自分の幼馴染に、釣書を送ったが敵わず、ブレッド様は殿下の側近につくには、婚約者がいなければならないと、ヤング侯爵に言われ…………私を選び、釣書を送ったそうだ。


「彼女は、ああ見えて才女ですから」


ぼそりとブレッド様が呟く。


あ ああ見えて…………。


ブレッド様は、言葉少ないが核心を突く、発言がストレートパンチ。


「ははは、そうなんですよ殿下、アデルは学院の試験では、必ずトップスリーには入ってるんですよ~まあ見てのとおり勝気ですからね」


ラルフが、お腹を抱えて笑う。


「も~二人とも、私の親友を愚弄するなら、この私が許しませんよ」


ヴィオラ様が、私を抱きしめる。


あぁ~ヴィオラ様の香水いい匂い、後で何使ってるか教えてもらおう、それにこのドレス、すべすべで気持ちいい。


私がヴィオラ様の腕の中で、うっとりしていると。


ラルフが私の腕を引く。


「ヴィオラ様、アデルはそんなことで、傷つく様な玉じゃないですよ」


イザック殿下が、私達のやり取りを見て笑う。


「はははは。やあやあ、ラルフの酷い嫉妬心も見れたことだし、早めに解決しようかね」


イザック殿下が立ち上がる。


「マスター。今頂いたケーキ、メリーのお土産にするからホールのまま、包んでくれる?」


「はい。畏まりました」


イザック殿下は、ケーキを注文してから私達に振り返る。


「じゃあ、とりあえず、3日後に王宮に来てくれる?」


イザック殿下の命に従い、私達は3日後に王宮に集まることになった。




✿ ✿ ✿



あの日以来、学院ではヴィオラ様と過ごす時間が増えた。


ラミレス伯爵家と王宮は意外に近くて、何なら歩いていける距離だけれど…………私は、ヴィオラ様に誘われて、公爵家の馬車で王宮に向かう。


さすが公爵家の馬車のシートはふかふかだ。


「うー。ヴィオラ様、王宮に入るのは、デビュタント以来で緊張します」


「ふふ、待っているのはイザック殿下と、私達の幼馴染だけよ」


「今は、メリー王女殿下もこちらに来ていらっしゃるんですよね~♪婚約パレードの時に、お見掛けしただけですが、むちゃくちゃかわいいですよね」


「ええ、見た目もかわいらしいけれど、中身もかわいらしい方よ~。その上、王女殿下だけあって、とってもしっかりしていらっしゃる、まあイザック殿下に似てるわね」


「かわいいのに、しっかりしてるなんて、素敵すぎます。少しばかり、近くでお眼にかかるチャンスがあったら、嬉しいな~」


キラキラした笑顔で外を眺めると、王宮の馬車乗り場に到着した。


馬車を下りると、私とヴィオラ様に、小柄でピンク色のふわふわが、抱きついてきた。


「いらっしゃーい、待ってたわ」


「まあ、メリー王女殿下」


くわ~。


行動が、かわいすぎる。


抱きついてきた王女殿下は、ブロンドのふわふわの髪に、透き通った青い瞳。


お肌すべすべ、いい匂い、声も可愛い!私が男子なら、絶対に婚約者になりたい!


「こんにちは、アデル。私は、イザック殿下の婚約者のメリー。よろしくね」


かわいい笑顔にとろけそうになるが、エイ!と気持ちを引き締める。


「お初にお眼にかかります。ラミレス伯爵家が娘、アデルと申します」


「私達同じ年でしょ、仲良くしてくれると嬉しいわ、アデルのことはイザックから聞いたの、絶対に仲良くなれる気がする~。この間のケーキも、凄く美味しかったわ」


私は思わず、メリー王女殿下の手を取る。


「むちゃくちゃ嬉しいです♪私も仲良くなりたいと思っていたのです」


「わー嬉しい。ケーキのお礼に、私も国の焼き菓子を準備したの、三人で一緒に食べましょ」


「メリー王女殿下、私達はイザック殿下の命にてこちらに参りました」


ヴィオラ様が冷静に返事をすると、メリー王女殿下は少しだけ、頬を膨らめた。


「もうヴィオラは、ブレッドと一緒で、まじめすぎるのよ~。ちゃんとイザックには、時間になったら、迎えに来るように言ってあるから大丈夫」


私達は、メリーさまに連れられて、王太子妃の宮に入る。


「わー。素敵なお住まいですね」


「二人ならいつでも歓迎するわ」


私とヴィオラ様は、メリーさまと、学院で流行っているものや、ロマンス小説、隣国の珍しい食べ物や歴史についていっぱいいっぱい話をした。


騎士が一人、時間だと迎えに来たので、楽しいお茶会はお開きになったが、今度は3人で、商店街にお買い物に出かけようと、約束して部屋を出る。


「はー。メリーさま、かわいいのに学があってお話が面白い、それにこんな伯爵令嬢の私にも、気さくに話して下さって♪」


「本当ね、私もご挨拶をして、少し言葉を交わすことくらいしか、今までなかったから、あんな楽しい方だとは知らなかったわ」


「こちらには、令嬢のお知り合いも少ないでしょうし、また3人でお茶したり、お出かけしましょう」


ヴィオラ様と話しているうちに、大きな扉の前で騎士が止まる。


「どうぞこちらに」


開かれた扉の先には、トンプソン公爵夫妻(ヴィオラの両親)、ヤング侯爵夫妻(ブレッドの両親)、モリス侯爵夫妻(ラルフの両親)に、我が家のお父様とお母様が、広いテーブルに並んで座っている。


私達が案内された、反対側のドアからブレッド様とラルフが入ってきて、私達は両親の向かいに座るよう案内された。


…………イザック殿下、何をなさるつもりかしら。


誰ひとり声を発すること無く、空気が最大限に重くなった頃、私達の入ってきた扉が開く。


開いた扉からは、国王陛下御夫婦と、イザック殿下とメリーさまが入ってくる。


わあメリーさま、さっきとドレスが違う。


今回のドレスは、キリリとしたかっこいいドレスだわ。


メリーさまのドレスチェックをしてると、隣でヴィオラ様がクスリと笑う。


なんだか少し、気持ちが軽くなった、どんなふうにイザック殿下が話を進めてくれるのか、わからないけれど、ちゃんと自分の気持ちを伝えよう。


私が心の中で、ガッツポーズを決めた頃、王族の皆様が席についた。


国王陛下が、みんなを見回してから話し始める。


「今日は、王宮に足を運んでもらってありがとう、来てもらったのは、4家に関係する婚約について、息子のイザックから相談を貰ったからだ、イザック。ここからは任せるよ」


「はい、国王陛下」


そう言って立ち上がったイザック殿下は、みんなを見回してにっこりと微笑む。


「僕の側近である、ヤング侯爵令息であるブレッドとラミレス伯爵家のアデルの婚約について…………ふたり、いや4人の若者が心を痛めている、私は将来あるみんなに、僕を支えてくれる側近に幸せな家庭を築いてほしいんだ」


イザック殿下は胸を押さえ俯く。


「この問題を解決するには、各家で話すより、みんなで集まって話した方がいいと思ってね」


そう言いながら殿下は、ブレッド様に視線を移す。


イザック殿下の目線の圧を受け、ブレッド様は一度、眼を閉じてから、大きく息を吸い立ち上がった。


「この度は、私達のためにお集まりいただき、ありがとうございます」


!!!


ブレッド様…………あんなに長く話せるのね。


私と一緒に居る時は、二言が最長。


「皆さんにご検討いただきたい内容は、先ほどイザック殿下が話された、私とアデル嬢の婚約についてです」


ブレッド様に見つめられ、私も立ち上がる。


「私とアデル嬢は、けして仲が悪いわけではありません、しかし真に一緒にありたい人とは違うのです」


ブレッド様の言葉を受けて、私も大きく息を吸いこんでから、声を張る。


「恐縮ながら、お父様方に自分の本当の気持ちを、お話しさせていただきたいと思います。私もブレッド様も、家のため両親のため、与えられた役割を全うしたいと、今まで勤めてまいりました。しかし私はブレッド様の横では、うまく息が吸えないのです…………決してブレッド様が、嫌いだからではありません、でも本当の自分の姿ではいられないのです」


「私も一緒です。アデル嬢は才女であり、美しい…………。しかしこの先ずっと共にあることを考えると、自分の心が塞がってしまいます」


私とブレッド様は、眼を合わせて大きく肯いた。


「この婚約は、両者合意の元、白紙にしてください、よろしくお願いします」


「よろしくお願いします」


ブレッド様に続いて、私も深く頭を下げる。


「いや、婚約は家と家との繋がりだ、ふたりの気持ちだけで、どうにかできるものではない」


お父様が、大きく低い声を上げる。


「だからこそ、みんなが揃ったところでお願いしています。家と家との結びつきで考えるなら、我が伯爵家の事業は、モリス侯爵家と結んだ方が、有益なのではないですか?」


イライラする両親に向かい、私は淡々と冷静に答える。


「アデル、あなたのことを考えて、お母様達はヤング家と縁を結んだのよ」


お母様は、ハンカチを握りしめ泣きそうな顔。


「私の気持ちを、聞いてくれたことがありますか?ラルフから釣書が来ていたことも、隠していましたよね」


「それは…………アデルにとって一番いい選択だと、経験を積んだ私達が。判断したのよ!ううっ」


母様の、いつもの泣きマネね。


「お母様がいくら経験を積んでも、私の気持ちや、私の経験を知ることは無いでしょう、今まで何一つ話し合うことが無かったのですから」


「…………。」


ヴィオラ様が、立ち上がる。


「お父様、お母様、私もお話ししたいことがあります」


「なんだ」


「私に、ヤング侯爵家から釣書が来ていたことを隠していましたね」


「ヴィオアには、公爵家以上の家格に嫁いで、幸せになって欲しいのよ」


「ではこの国に私の嫁ぎ先はありません、この国を出て行けと言うことですね」


「国を出て行けなど、言っているわけではない」


「では、どこに嫁げと、私に行き遅れになれと言っているのですか?」


「そんなこと言っていない」


「大体、私が嫁ぐならば、高位貴族でないと嫌だと、いつ言いました?ブレッド様は、イザック殿下の第一の側近です、そのお方と縁を結ぶことの、どこが私の不幸なのです」


「いやしかし…………。」


「はい!」


私は、前進しない話し合いに、最後の手段に出ることにした。


「私、アデル・ラミレスは。本日をもって貴族籍を、抜けさせていただきたいと思います。そうすれば、ヴィオラ様とブレッド様は、幸せになれます」


「じゃあ俺も」


ラルフが手を上げる。


「アデルの犠牲の上に、私の幸せは無いわ、私も貴族籍を抜けます」

「私も同意見です」


ヴィオラ様とブレッド様が手を上げる。


「あー。側近二人が辞職してしまうような王太子は、国を率いていけないでしょう、俺もやーめる」


イザック殿下も手を上げる。


「では私も」


メリーさまも手を上げた。


この国に来て初めてできた友達である、ヴィオラとアデル。さらには婚約者である、イザック殿下が市民になるのであれば、私もそうします」


「いやー。メリー王女殿下が、他国で市井に下るとなれば、隣国との不和や軋轢となるであろうな~」


国王陛下が大げさに腕組みをする。


「まあまあ、困るわね、イザック以外に跡取りは居ないし、これはもしや、公爵家の王家乗っ取り計画かしらね」


王妃様が、笑顔で恐ろしいことをいう。


「じゃあ、それで話は決まりかな、各々手続きに入ろうか」


イザック殿下が立ち上がる。


「待ってください、王太子殿下」


トンプソン公爵が、勢いよく立ち上がる。


「我々は娘の幸せを願っただけで、王家の乗っ取りなど、画策してはおりません」


「じゃあお父様が、公爵以下の釣書は受け付けぬと断っていることで、私が学院で、どんなことを言われているのかご存じですか!」


ヴィオラ様は、美しい公爵令嬢としてみんなの憧れの的だが、やっかみを受けることも多い。


その妬みのほとんどは、美しい公爵令嬢なのに、行き遅れじゃね~。という陰口で吐き出される。


「はいはい」


王妃様が手を叩く。


「トンプソン公爵が、乗っ取りを望んでいないことも、娘を良い環境に置きたいこともわかりました」


王妃様はたっぷりと時間をかけて、両親達の顔を一人一人見て眼を合わせてから、最後にほほ笑んだ。


あ!あの笑顔、数日前にも見た…………イザック殿下の笑顔の圧と同じ。


「親というものは、子供の幸せを願い、より良い道をと思うものです」


親たちが一斉に頷く。


「しかしそれは、一方的なものでいけません、子供達はもう赤子ではないのです。彼らが何を望んでいるのか、それにおけるメリット、デメリットは何か、ちゃんと話し合い、導くのがいいのではないかしら」


今度は私達が、王妃様の言葉に大きく肯く。


「私達王家も、夫婦として、親子として、常に話し合っているのですよ、ここからは、感情や一方的な思いだけではなく、どうしていくのが最善の道かを、話し合いましょう」


王妃様の言葉に、全員が頷く。


それから私達は、最終手段に出たことや、一方的な押し付けをお互いに詫びて、どうしていくのがいいのか、今まで自分がどう考えていたのかを話し合った。


そして話し合いの結果、ブレッド様と私の婚約は白紙になり、ブレッド様とヴィオラ様、ラルフと私の婚約が決る。


この婚約は、王家が立会人となったため、変更する際には、王家の承諾が必要であることも追加された。


そんなわけで、私達はみんなで市井に下ることもなく、各々心を寄せる相手と結ばれることになった…………というか…………。


私はラルフが、好きですーーーー。とみんなに宣言した様で、恥ずかしすぎる。


「ねえイザック殿下、もうこんなに月が高い位置にあるのだから、ヴィオラとアデルを王宮に泊めてはだめかしら?」


「ああいいね、ブレッドとラルフも泊って行けばいい」


「お言葉に、甘えさせていただきます」


イザック殿下とメリーさまのお誘いに、ブレッド様が綺麗な礼を取る。


はぁ~所作は、本当に美しいわね。


ブレッド様の所作に見惚れていると、ラルフにガッシリ肩を掴まれた。


「なんだ、アデル。今になって、ブレッドを逃したと、後悔してるのか?」


「もうそんなこと無い」


私はラルフの胸を、ガンガン叩きながら、顔が熱くなるのを感じた。


今までも、こんな感じのじゃれ合いは、沢山あったはずなのに、心臓が猛烈ダッシュしてる。


「はは。冗談だよ、イザック殿下~お腹が空きました、何かごちそうしてくださいよ」


「ああ、みんなで食事にしよう」


それからみんなで、王宮の豪華な夕食をいただく。


食事を食べながら、イザック殿下とメリーさま、ヴィオラ様とブレッド様のカップルは、寄り添う空気が暖かく優しい。


やっぱり一緒に居て、自然に自分らしくあれる関係はいい。


夕食後、少しお茶をいただいてから、夜も遅いと各々部屋に戻る。


私は、ヒールを脱いで、貴賓室のふかふかベッドにダイブした。


「あー。今日はいろいろあったけど…………私。ラルフと婚約したんだ…………。」


一人で頬を染める。




コンコン。


ドアをノックする音が響く。


侍女さんが、お風呂でも準備してくれるのかしら?


ドアを開けると、ラルフが立っていた。


「少しだけ、庭で話をしないか?」


私は、こくりと頷いた。


薄暗い王宮の庭園に足を踏み入れると、空には満天の星。


ラルフとつないだ手が、なんだか熱くて…………むずがゆい。


「わー。星がいっぱい、小さな頃に、二人で抜け出して、丘で見た星空みたいね」


恥ずかしくて、ラルフの顔が見れない私はごまかす様に空を見上げる。


「アデル…………。俺を見て」


えい!逃げてばかりではだめ。


気合を入れてラルフを見上げると、真剣なラルフのまなざしとぶつかった。


「ラルフ…………。」


名前を呼ぶと同時に、ラルフに強く抱きしめられる。


「俺はずっと、ブレッドの横にいるアデルを見ていた、お互い居心地が悪そうだったけど、いつブレッドにアデルを本当に取られてしまうのか、不安で押しつぶされそうだった」


「アデルを抱きしめたかった、そばにいろって言いたかった、連れて逃げたいと何度も思った。あのまま、婚姻が結ばれたら俺は…………。」


私は、ラルフの背中に手を回す。


「ラルフ。もう大丈夫、ずっとそばに居るわ、だって私はラルフの隣でないと、うまく息も吸えないし、自分らしくいられないもの」


「アデル」


ラルフが抱きしめる腕を緩め、ラルフの金色の眼に私が映る。


「よし、もう遠慮しないからな」


そう言うと、ラルフは私の頬にキスをした。


ラルフの唇が触れた場所が熱い。


驚く私のおでこにも、ラルフのキスが落とされる。


「ふぎゃ」


急激なラルフの恋人攻撃に、変な声が出た。


「はは。アデル、真っ赤でかわいい」


ラルフに、もう一度抱きしめられる。


ぐっとラルフの顔が動いて、私の首と髪に埋まる。


「あーなんだか、安心する」


んーーーー。心臓がジリジリ焼けてる~。


ラルフの隣が、一番過ごしやすいけど、恋人の関係になれるには、少し時間が必要みたい。




~ 終わり ~






































(*''ω''*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。