表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/3

第2話 公爵令嬢と学院レクターの、グランド・ディベート振り返り。ギリアムのウインク裏話

 紅茶が手元に無かったから、マルタにカモミールティーを用意してもらったの。少し頭がスッキリする感じね。少しクセがあるけれど、嫌いじゃないわ。


「ともかく、ディベートは完敗だよ。ロッサム教授が横槍を入れるくらいだしね。僕の精霊論をアイアンサイドの魔法で反論してくるのは…想定していなかったわけじゃないが」

「明らかに顔つきが変わられましたものね」

「どうして気づいたんだい、彼の魔法の原理に?」

「ある程度はあてずっぽうですわ。実は魔法大会の時に測定器を持ち込んでましたの。鉄躯(シュタール・)鋼装(パンツァーガイスト)の時だけ、磁力反応がありましたので」


「磁力、なるほど。結合する力か」

「その通りですわ。なので恐らく、グラウンドにある砂鉄か何かを集約していると思うのですが、鉄単体であればアシュレイの火焔魔法が通るはずですので」

「その通り。鉄なら熱せられて、中の人はひとたまりもない」

「別のモノも魔力で集約しているのだろうと。あるいは防御魔法を転用して、プレートメイル風に見せていただけかも。ただ、磁力反応の他に、電力反応もありましたの」

「どうやって測ったんだい?」

「ニコラスの検電器ですわ。四隅にあった」

「…あの金箔か!」


「せやで、ギリアムはん。アイアンサイドはんの魔法じゃ、その二つが反応したんや。ほんでもって、電力にもどうも埃を集める力がありそうなんや」

「それは知らないな」

「あれや、エレキテルあるやろ。あれ、ライデン瓶に埃が積もりやすいねん。セドリック先生も、『磁力と電力に関係があるかも』言うてはりましたから」

「という事は…魔法で磁力と電力を発生させて、君の言う()()をまとって防御をした、と」

「原子かは分かりませんが…あの場はディベートですので、観客が納得すれば逃げられるかと。要するに、他に反論が無かったのですわ」

「顕微鏡が間に合わなければ、どうしたんだい?」

「詰まってましたわ。タイムを要求したかもしれません」

「正直だね。そういう運も、君の力かな?」

「たまたまですわ。それで、最後のウィンクについてご説明頂いてませんけれど」

「フランソワ殿が考えている通りだよ」

「ちなみに、三段論法を考えたのはエラリーですわ」

「へへん!」

「これはこれは…エラリー殿、一本取られたね。君の論理構築は最適だったよ」

「エラリーで構いませんよ、ギリアム様」

「様、と言うのは堅苦しくて、研究室にはそぐわないね。フランソワ殿を呼ぶように、呼び捨てにしてくれて構わないよ」

「えー、といっても、年上ですし…」

 そこは気にするんだ。


「それでしたら、私も殿、は不要ですわ。確かに、ギリアム殿を呼び捨てにするのは心苦しくはありますが」

「殿、も避けて欲しいねぇ」

「あ、なら、『先輩』はどうです?」

「先輩?」

 初めて聞く言葉だわ。


「最近、王都で流行ってるんだよね~。平民の言葉だけどさ、目上だけど、それほど離れていない人を呼ぶのに丁度いいんだって~。ということで、どうですか、ギリアム先輩?」

「少しこそばゆい気もするが、悪くないね。ニコラス君とマルタ君も、ぜひ先輩と呼んでもらって構わないよ」

「わいは基本、「はん」で呼んでるさかい、ギリアムはん、で頼みますわ」

「あ、あっしも…苦手でやすから、ギリアムの旦那で勘弁してくだせぇ」

「ははは、強制はしないよ。フランソワもいいかな?」

「構いませんわ、ギリアム()()。それで、私とエラリーの読み通りでした? ブラウン運動は当然ご存じで、対策もしているはず、って」


「その通り。ロッサム教授が一番最初に提示したのがブラウン運動だったよ。アレはテキスト通りの回答さ」

「オイルについては対策されなかったの?」

「ブラウン運動は起こらない、と思っていたからね。他にも水銀実験もしたよ。ヴィクトールは目をひん剥いていたけど」

「何もない、に対して何と答えるか、ですね」

「もし出してきたら、『その回答は百年前に公式に出されている。無のように見えるのは人の思い違いで、精霊様は水銀を通り抜けてこの空間を満たしているのだ』と回答する予定だったよ。なにしろ『なにもない』ことを物理的に証明できないからね」

「試験管を割って検査するわけにも行きませんしね」

 割った瞬間、大気が入る訳で。

「蒸気機関は真空を前提に動いているんやけどなぁ」

 と、ニコラスがぼやく。


 蒸気機関のピストンって別に水蒸気で動いてる訳じゃないの。


 空間を水蒸気で満たす(ピストンが下がる) 

 → 冷水を掛ける 

 → 水蒸気が水に戻る 

 → 体積が急激に縮んで(1700分の1になるわ)真空ができる 

 → その真空めがけてピストンが上がる


 というサイクルを繰り返して動いているの。水蒸気の勢いで歯車を回している訳ではないのよ。(それなら水車の方がよっぽどパワーがあるわ)


「そうだねぇ。蒸気機関を例に出したとしたら、それこそ精霊がピストンを一生懸命動かしているのだ、くらいは言うかもね」

「そのあたり、全部シミュレーションしましたわ。言い方が悪いですけれど、ああいえばこういう、ですから」

「で、オイルに賭けたと」

「文字通り賭けでしたわ。ただ、()()()()()()()()()程度までは観察できたので、あとはレンズの精度を上げれば五分五分で証明できると」

「そのためにフィヨルドまで?」

「ええ。蛍石を手に入れるためだけに、ですわ」

「その行動力は参考にしたいね」

「恐れ入りますわ。それで、油のブラウン運動を示せれば、ギリアム先輩の動揺を誘えると思いましたの。でも、私が考えたのはここまでですわ。あとはエラリーの台本です」


「そうだよ~。水のブラウン運動を水の精霊と反論するなら、一回ワインを挟めば? って。フット・イン・ザ・ドアって商売テクニックなの。『人は一度「はい」と言うと、次も「はい」と言いやすい』ってやつ」


「なるほど…。水は五大元素である、つまり神の規定したもの。次にワイン。これも神が定めた神聖なもの。となると『オイル』とは…」

「神に関係するもの、と()()()()()()()()わけですよ~」

「つまり、オリーブオイルに誘導した訳だ」

「その通りです! でも、実際は神聖でもなんでもない、『ただの菜種油』となれば、反論できなくなるよね、ってことで」

「実際、そうなった訳だが」

「計算違いもありましたけど。ロッサム教授は「オリーブオイルのはずだ、オリーブオイル以外はありえない」って思っていたはずですけど、ヴィクトール君はこの段階で固まってましたからねぇ」

「彼は暗記は得意だが、応用は全くダメだからね」

「わ、がり勉タイプ~。私苦手~」

 エラリーは少しガリ勉した方が良いと思うわ。成績、相変わらず赤点ギリギリだもの。


「でも、ギリアム先輩はどうして気づいたんですか?」

「さっきも言った通り、オリーブオイルは『オイル』と通常略さない。そして、オリーブオイルであるはずがない…なぜなら、神聖なものに精霊が宿る、という主張を避けたいならワインを途中で挟む必要がないからね。フット・イン・ザ・ドアというテクニックは知らなかったけれど、思考回路は同じじゃないかな。この段階で我々はチェックメイトだったからねぇ。あとは誰がチェックを踏むか、という取捨選択さ。申し訳ないけれど、僕は地雷と分かっていて踏むほどの自己犠牲を持っていなくてね」

 そりゃ、立場ってものがあるからね。


「それで、ヴィクトールはレクターになれるんですか?」

「いやぁ、それは選考し直しじゃないかな。ロッサム教授、あの日からとても機嫌が悪くてね…ただ、注意したほうがいいかな。彼、蛇みたいにしつこいから」


「肝に銘じておきますわ…火の粉が来たら、振り払う所存ですけれど」

ホントはギリアムってキャラ、もう少し悪役にするつもりだったんですが。

思った以上に理知的で、「理想の先輩」キャラになったので合流させました☆


ーーーーーーーーーーー

面白いと思って頂いたそこの貴方!

ぜひブクマだけでもお願いします!


※この作品は『カクヨム』様と『アルファポリス』様でも連載しています

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ