このスキル、すご過ぎない?
「はあ、はあ、はあ……ふぅ~、なんとかなった」
森の影から次々と出てくるゴブリンは、結局合計で18匹にもなった。
だけど後半になるほど戦いは楽になっていき、自分の強さの劇的な変化に異様な興奮を覚えてしまった。
やっぱり【ためる】を使うと魔素ストックを消費していく。
途中で数値を込めないように意識してみたが、何もしなくても魔素は消費していくみたいで、まったく減らさないというのはできないみたいだった。
もしかしたら他の人も魔素ストックを持っていて、無意識で消費しながら生きているのかもしれない。
魔素を吸収すると強くなれるのはこの世界共通だし、魔素ストックがかなり多かったのもこれまで生きてきた15年間で蓄積してきたとか、生まれつき保有していた分も含まれていたのかもしれない。
初期の65万が多いか少ないかも分からないし。
倒したゴブリンの魔素を吸収し、最終的に合計値はこうなった。
――――
【セージ・タブリンス】LV27 次のレベルまで69,822
魔素ストック 371325
・ストックしているもの
カウンターダメージ 75/100 【ためる】で/500まで上昇可能
☆基本攻撃力 100/100 【ためる】で/500まで上昇可能
☆魔力値 100/100 【ためる】で/500まで上昇可能
☆治癒力 100/100 【ためる】で/500まで上昇可能
☆投擲 100/100 【ためる】で/500まで上昇可能
☆攻撃回数 100/100 【ためる】で/500まで上昇可能
――――
新しく増えた項目は☆投擲と☆攻撃回数。
戦いながら気が付いたけど、☆マークがついているものが任意に魔素を込めてコントロールできる項目らしいことが分かった。
「特に【攻撃回数】はぶっ壊れだな……」
グリーンゴブリンが相手だと僕の基本攻撃力だけでほぼ一撃で倒せるようで、攻撃を当てた敵が絶命すると自動的に次の敵にターゲットを調整してくれるみたいだ。
これは将来的に任意の対象に攻撃を当てるコントロールができるようになるかもしれない。
もっともっと慣れが必要だ。研究のし甲斐がある。
「さて、魔石とドロップアイテムを集めないと。グリーンゴブリンのドロップアイテムは……」
近くに落ちている魔石を拾い、辺りを見回すとゴブリンが持っていたと思われる錆びた剣や棍棒が散らばっている。
「錆びた武器は使えないな」
一応拾い集めてみるか……。
「これは……もしかしてゴブリンの衣服? 臭っ! 汚っ!」
グリーンゴブリンのドロップアイテムは奴らが持っていた武器や着用していた衣服みたいだ。
鼻がもげてしまいそうな強烈な悪臭を放っており、思わず後ろに仰け反ってしまう。
「触るのもやだな……あれ、これは」
変な病気になりそうだなぁ、なんて考えながらドロップアイテムを確認して回っていると、小さな瓶に入った液体を見つけた。
「これは、回復ポーションか」
探し回った結果、18匹中ポーションのドロップは3個だった。
いわゆるレアドロップっていうものだろう。
そう考えるとデビルグリズリーの肉は幸運だったかもしれない。
「グリーンゴブリンの経験値は一体につき1100ちょっとか。魔石を変換するとどのくらいなんだろう」
『魔石を取得しました。魔素ストックに変換しますか? 変換量は合計18000』
「ということは一個につき1000か。吸収した魔素と合わせると40000前後。うーん、悩ましいけどあんまり沢山持ってても嵩張るし」
そういえば高度な魔法に亜空間を作ってアイテムをしまっておける『アイテムボックス』というのがあると本で読んだ事がある。
ギフトの中にも『アイテムボックス』があって、そっちは容量が桁違いに多いらしい。
小規模なところでいうなら『亜空鞄』、『魔法鞄』というアイテムボックスの小規模版のようなものが道具屋に売っている。
どちらにしても魔法は高度だしギフトはレアだし、道具は高級品だ。
手持ちの革袋ではそこまで沢山詰めておくことはできない。
「どっちにしてもまだまだ戦いはあるだろうし、デビルグリズリーの魔石だけ残して変換しておくか」
グリーンゴブリンだって決して雑魚じゃない。1000や1100といった経験値がどの程度なのか分からないけど、デビルグリズリーが15000だった事を考えると、魔の森では低い方なのかな。
「よし、ゴブリンの魔石は全てストックに変換」
――――
魔素ストック 371325→389325
――――
「ポーションはどうしようかな。試しに一つ使ってみるか」
ゴブリンとの戦いでそれなりに体力は消耗している。
☆治癒力に魔素を注げば回復できるけど、レベルアップしないと一気回復はできないみたいだし、レベルが上がるほど多用は難しくなる。
☆治癒力は自然回復みたいだった。魔法の中に徐々に体力が回復する『リジェネレーション』というのがあるが、それの簡易版みたいなものだろうか。
「使い分けするしかないな……んぐんぐ……んげっ、やっぱりポーションの味って美味しくない」
薬なんだからしょうがないけど、苦みの強い液体は一気に飲み干さないと嘔吐いてしまいそうになる。
「回復量はそれなりかな。持っておいて損はなさそうだ」
1人だとそこまで沢山持ち歩けないのが難点だけど、このギフトの能力をもっと研究すればいずれ有効な手段を獲得できるかもしれないし、今は持って行けることを有り難く思っておこう。
「武器や衣服のドロップは持って行けそうもないな」
正直ロクな物じゃないから売ってもお金にならなそうだし、嵩張るものを持ち歩く余裕もない。あと臭いし……。
『アイテム保存のストレージを獲得しました。魔素ストック100を消費して容量を拡張できます』
「なんだっ?」
――――
☆ストレージ ーー/10㎥ 100項目 【ためる】で/無制限に拡張可能(魔素100につき1㎥、10項目)
――――
「す、すごい。これってアイテムボックスと同じってこと? ストレージって名前がよく分からないけど、似たようなものなのかな」
この「㎥」のマークってどういう意味なんだろう?
学問でも習ったことがないけど、状況的に予想すると容量の多さを表す記号なのかもしれない。
「これにアイテムを入れておくってことかな」
ストレージと念じると目の前に四角い光が現われる。
「……おお、入った」
いきなりポーションを投げ込むのは怖かったので、捨てていくつもりだった錆びた剣を放り込んでみると、スッと光に包まれて四角の中へ消えていった。
「取り出すには……よかった、ちゃんと出てきた」
錆びた剣をイメージするとすぐに取り出すことができた。
「凄い、これは便利だっ」
これがあれば持ちきれないアイテムを諦めなくてよくなるぞ。
「とはいえゴブリンの衣服は汚いしお金にならないだろうから置いていくか。ポーションに臭いが移っても嫌だし」
『魔素変換が使用可能になりました。ドロップアイテムを魔素ストックに変換できます。グリーンゴブリン18匹分、合計で9500に変換します』
「どんどん覚えるな。しかもこれは……変換っ」
試しに変換を念じてみると、離れた位置にあるドロップアイテムの方角から光が立ち上がり、自分に吸収されていく。
手元に持っていたポーションはちゃんと残っている。
僕が不要と判断したものだけを選別して変換してくれる親切設計。
なんて素晴らしいんだろう。
『任意の変換値以下のドロップや魔石を自動的に魔素ストックに変換できます。変換値を設定してください。全てのアイテムを変換しない場合は0を設定してください』
またもやビックリの親切設計!! これがあればアイテムや魔石の取りこぼしがなくなるばかりか、自動的に取得してくれるから見逃すこともなくなるってことか。
「凄い、凄いぞこれは。興奮してきた……よし、1500以下に設定」
『1500に設定。変換値1500以下のドロップ・魔石を自動的に魔素ストックに変換します』
魔素ストックはいくらあっても困る事はないし、レベルアップに必要な分を確保していきたいから有り難いことこの上ない。
「いいぞいいぞ。どんどん強く便利になっていくじゃないか。ますます生きる希望が湧いてきたぞっ」
ゴブリンのドロップアイテムを全てストックに変換し、デビルグリズリーの魔石と残ったポーションはストレージにしまっておいた。
「さて、飲み水や食料も確保しないと。ストレージを覚えたのは大きいぞ」
ストレージも大きな意味では【ためる】といえる能力だし、僕のギフトは解釈の幅がもの凄く広くて自由度が高そうだ。
もっともっと色んな事ができるかもしれない。まだまだ研究の余地は尽きないぞ。
◇◇◇
せっかく川の近くにいるので飲み水用にストレージを水中で開いてみた。
魔素ストックで容量を更に拡張し、かなりの量の水を確保することができたのは大きい。
アイテムボックスあるあるとして詰め込んだ飲み水の容器が悪いと中で零れてアイテムが水浸しになってしまうことがたまにあるらしい。
魔石はツルツルした石みたいなものだから洗えば汚くないし、まだ問題は起こらないと思って混ぜたのだけど、ポーションは中身が零れてしまう可能性はあった。
だけど親切設計のギフトはそこら辺もちゃんと配慮してくれるみたいだ。有り難い。
飲み水を確保して、後は食料だ。動物系のモンスターを倒せば肉をドロップすることがあるので、しばらくはそれらで過ごすことができる。
「そうだ。ここら辺の石を集めてストレージに詰めておけば……」
手に持って丁度良い大きさの石がここら辺には沢山落ちている。
投擲武器も時には重要になってくる。いつでもこんな手頃な石が手に入るとは限らないので武器は多い方がいい。
落ちている手頃な石を可能な限り集めてストレージに詰め込んでおいた。
「さて、森の出口を探さないと」
崖から落とされてどのくらい下流に流されたのか分からないけど、下手に森に入って彷徨うよりも川沿いに道を探した方が迷わなくて済みそうだ。
「まずは元の位置を目指してみるか」
崖から落ちたわけだから必ずしも戻れるわけじゃない。かなりの高さだったし登るのはまず無理だろうな。
だけど自分が魔の森のどこら辺にいるのか把握しなければ永遠に彷徨うことにもなりかねない。
問題は上流に登ったとして自分が落ちた場所が分かるかどうかだけど、とにかくダータルカーンの町にいくには川の上流の方角を目指すのは間違っていない。
「よーしっ、何はともあれ出発だ」
考え続けても仕方がない。ともかく動いて動いて動き続けよう。
※後書き※
お読みくださりありがとうございます。
ガンガン無双していく痛快ファンタジーを目指して書いています。
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