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地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~  作者: かくろう
51~60

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浮かび上がる影

 暗い回廊を抜けた先、僕たちは巨大な石造りの広間へと出た。天井は高く、無数の燭台が紫の炎を揺らめかせている。


 嫌な予感が背筋を走った瞬間、床一面の魔法陣が輝きを放った。



「……罠だわ!」


 リンカの叫びと同時に、石壁が崩れ、無数の人影が現れた。

 それはアンデッドでも獣でもない。鎧に身を包んだ人間のような兵士たち――だがその瞳は赤黒く濁り、口元には狂気の笑みが浮かんでいる。


「こいつら……人間? いや、操られているのか?」

「ん……魔力の鎖。ベアストリア、兵士。尖兵」


 ルミナスが低く告げる。

 彼らは一斉に武器を構え、怒号を上げて突撃してきた。


「僕が前に出る! 二人は左右を頼む!」


 剣を抜き、迫りくる兵士の刃を弾き返す。


「重ね斬り!」


 連撃が一瞬で数人を吹き飛ばしたが、後ろからまた新たな兵が押し寄せる。


「こっちもいくわよっ!」


 リンカの双剣が閃き、二人まとめて首を刎ねる。俊敏な動きは群れを翻弄し、敵陣に切り込んでいく。


「燃えろ……《ファイア・ランス》!」


 ルミナスが炎の槍を十本、連続で放つ。兵士たちの鎧を貫き、広間の空気が熱気で揺らめいた。


「皆さま、お待ちください――《サンクチュアリ・ウォール》!」


 セレスが両手を掲げると、眩い聖光の壁が僕たちを覆った。突撃してきた尖兵の剣が壁に当たり、弾かれる。


「助かった!」


 僕は振り返り叫ぶ。

 セレスの額には汗が滲んでいたが、必死に術を維持している。

 その背後でリンカが敵の槍を避け損ね、肩を浅く斬られた。


「くっ……!」

「リンカさん、すぐに――《ヒール》!」


 セレスの手が触れ、光が傷を閉じていく。


「……すごい。痛みが消えたわ」


 リンカが目を見開いた。

 敵は数で圧倒してくる。広間全体が兵士たちの咆哮で埋め尽くされた。



「これ以上は持たない……セージ君、突破口を!」

「任せろ――ライトセイバー!」



 渾身の光刃が一直線に広間を走り、兵士たちをまとめて斬り払った。轟音と共に光の柱が立ち上がり、敵の列が一気に崩れる。



「ん……追撃。《ファイア・ストーム》!」



 ルミナスが炎の嵐を呼び込み、残った兵を焼き尽くした。

 広間に再び静寂が訪れる。焦げた鎧と武器だけが残り、赤黒い残滓がゆっくりと消えていった。


 焦げた鎧が散乱する静寂の広間。その空気を切り裂くように、低い笑い声が響いた。



「……ふふ。やはり面白いな。尖兵どもをまとめて葬るか」



 闇の帳から現れたのは、法衣に身を包んだ男。黄金の刺繍を施した衣は聖職者のようだが、その瞳は異様な赤光を帯びていた。



「……何者だ?」

「ベアストリア教団、紅の枢機卿ヴァルド――名は覚えておくがいい」


 男が杖を掲げると、広間に呪詛が渦巻いた。黒い瘴気が一気に広がり、僕の体を重くする。


「くっ……動きが鈍い……」

「セージ君!」


 リンカが駆け寄るが、彼女も同じく膝をつく。


「ん……体、重い。魔力、吸われる……」


 ルミナスの炎がかき消されていく。


「皆さま、下がってください! 《サンクチュアリ・ウォール》!」


 セレスが再び防御魔法を展開し、広間の瘴気を押し返した。

 僕は必死に剣を握り直す。


「……まだやれる。重ね斬り!」


 体を重く縛る呪いを無理やり断ち切り、光の斬撃を幾重にも重ねて放つ。

 リンカは双剣を閃かせ、敵の魔力の糸を切り裂く。


「これ以上、仲間を苦しめさせない!」


 ルミナスも炎を再構築し、声を張る。


「セージ……援護、する。燃えろ……《フレイム・バースト》!」


 三人の力が合わさり、黒い瘴気を押し返した。


「ほう……そこまで抗うか。だが、この場は引かせてもらおう」


 ヴァルドの体が闇に溶けるように霧散していく。


「待てっ!」


 僕が駆け出すが、虚空に残ったのは彼の声だけだった。


「――やがて現れる。『烈火の魔将イグニス』様の前に、お前たちがどれほど持つか……見ものだな」


 不気味な笑い声と共に気配は完全に消えた。


「……イグニス?」


 僕は名を繰り返す。前回も聞いたその不気味とも聞こえる名前の響きに、どうにもイヤな予感が拭えない。


「何かただならぬ存在のようね」


 リンカが眉をひそめる。


「ん……嫌な気配。ルミナス、背筋、冷たい」

「わたくしも……あの名を耳にした瞬間、胸が締め付けられるような感覚がいたしました」



 セレスの声も震えていた。

 ただ一つ確かなのは、敵はまだ本気を出していないということだ。


 僕は彼女の瞳を見た。どこか影を帯びた碧眼――それでも、人を信じたいと願う強さが宿っていた。


「セレス……君は、これからどうする?」

「……わたくしを狙う存在がまだ残っております。ですが……あなた方の戦いぶりを見て、心が揺れました。わたくしも共に歩ませていただきたいのです」


 リンカがにっこり微笑む。


「心強いわ。セージ君、いいでしょ?」

「ん……賛成。セレス、光。ルミナス、炎。相性、良い」ルミナスも小さく頷いた。


 僕は深く息を吸って答えた。


「……ようこそ、セレス。これからは仲間だ」


 セレスの目が潤み、わずかに震えながらも笑みを返した。



 ――――――――――――――――――

【セレスティア・ルミナリア】とフィーリングリンクで繋がりました。



 ◇フィーリングリンク総合レベルがLV8に上昇◇



【リンカニア】80/80

【エリス】80/80

【ルミナス】80/80

【ミレイユ】80/80

【シャミー】80/80

【アーリア】80/80

【レイシス】80/80



【セレスティア】20/80(NEW)


【聖属性付与】(NEW)

【呪い耐性強化】(NEW)

 ――――――――――――――――――



 聖女セレスティア……いや、セレスと繋がった瞬間、胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じた。

 今までの力が剣を強くしたのだとすれば、彼女の力は“守る力”。僕らの戦いはこれで、さらに揺るぎないものになった――。

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