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地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~  作者: かくろう
41~50

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刺客撃退

「――敵ッ!」


 リンカが扉を開いた瞬間、夜の闇を切り裂くように、いくつもの影が飛び出してきた。

 【☆夜目】スキルのおかげで、その輪郭が鮮明に映る。刃物を構え、黒装束に身を包んだ暗殺者達。


「きゃああああっ!」

「ルミナスッ! エリスとミレイユ達を守れッ!」


「了解」


 ルミナスの小さな声と共に、光が弾けた。魔力の膜が瞬時に展開し、仲間達を包み込む。


 だが防御魔法の出番すらなかった。

 すでにリンカが、獣のような反射で飛び出していたからだ。


「ストレージッ――ッ!」


 乾いた音と共に、上空から矢が三本、流星のように飛び出す。

 矢は一瞬で標的を穿ち、暗殺者達を地面に叩き落とした。


「ギャッ!」

「ぐあっ!」

「……ッ!」


 視界が悪い夜間でも、正確に撃ち抜けるのは――ストレージの中で矢を仕込んでいたから。

 時間を止めた矢を、リンカの意志ひとつで解き放つ。それは即席の罠であり、致命の反撃だ。


「さすが……」


 僕は残り三人の気配に向かって石を投げ放った。【☆投擲】で強化された一撃は、空気を裂き、額や喉にめり込む。


 ――ドスッ、ドスッ、ドスッ。


「ぐぅ……!」


 刹那、場は静まり返った。


 けれど、その時、僕の背筋を冷たい感覚が走る。

 ただ倒した、では終わらない。

 妙な――胸騒ぎだ。


「セージ様、これを!」


 ミレイユの声。

 視界の端から飛んでくる小さな輪。咄嗟に掴んだ瞬間、心臓が跳ねた。


 ――隷属の首輪。


「そうか……ッ!」


 僕は地に倒れた暗殺者の首にそれを嵌め込み、叫ぶ。


「命令だ――自殺禁止ッ!」

「……ぐあああああッ⁉」


 激しく身をよじる暗殺者。だが首輪の魔力が命令を縛る。


「ルミナス、拘束魔法!」

「了解――《ダークバインド》」


 黒い帯が蛇のように空を泳ぎ、暗殺者を絡め取った。


 僕はすぐに残る二人にも首輪を嵌め込み、同じ命令を叩き込む。

 そうしてようやく、心臓の鼓動が少し落ち着いた。


「ふぅ……もう大丈夫だ。見事だったよリンカ。流石の反応速度だ」

「うん。気配を感じてたから、準備しておいたの。……セージ君がストレージに矢を入れてくれたおかげ」


「そしてミレイユ。君が首輪を投げてくれなければ、奴らは証拠を残さず消えただろう。ナイスだ」

「……光栄です、セージ様」


 残り三人は、間に合わなかった。

 頭巾を剥ぐと、血を吐き、自ら命を絶った痕跡があった。


「……ミレイユさん。どうして分かったの?」


 リンカがナイフを突きつけながら問う。


「彼らは――恐らくタブリンス家の影部隊。任務に失敗した時は自害するよう、仕込まれています。だから……」


「やはりそうか」

 僕は唇を噛む。

 影部隊――タブリンス家の暗部。

 その名を聞いただけで、胸の奥に黒い怒りが膨れ上がる。


 だけど――冷静になれ。

 怒りに任せれば、ただの暴走者だ。

 僕は深呼吸し、氷のような声で命じた。


「お前達の主人は誰だ。答えろ」

「い……言えぬ……」

「命令だ――答えろ」


 隷属の首輪がきしむ。

 だが、それでも強靭な意志力で抗う姿に、影部隊の恐ろしさを知る。


「ルミナス」

「分かってる。【ためる】……最大まで。支配魔法ドミネイト

「……ッ!」


 隊長格の男の瞳が揺らぎ、意識が塗り替えられていく。


「よし……名を名乗れ」

「……我が名はセバス・ユニアス。タブリンス家執事、影部隊隊長」


「セバス……!?」


 ミレイユの悲痛な声が響いた。

 僕の心にも、重い杭が打ち込まれる。

 そう――長年、屋敷で顔を合わせてきた人物だ。家令としての姿は、常に冷静沈着で――だが裏では暗殺者。


「……そんな顔をするな、ミレイユ」

 僕は剣を握り締める。

 裏切られた痛みと、燃え上がる怒り。けれど――冷徹に利用する。


「ついでに吐け。マハルの最近の企みを、すべてだ」


 その時、ルミナスの声が割り込む。


「セージ、新しい魔法。覚えた」

「え?」


――――

【記憶のためる】が可能になりました。

☆映像記録 / 2000 魔素100に付き1分の映像記録可能。

ルミナスが【☆録画撮影】を習得しました。

――――


 浮かび上がる半透明のウィンドウに、僕は思わず息を呑む。


「映像記録……! ルミナス、使えるのか?」

「可能。魔石に映像を保存できる。……任せて」


 ルミナスが魔石を取り出し、セバスに向ける。


「記録開始。セージ、どうぞ」

「よし……セバス、受けた命令を言え」


「……オークションで競り落とせなかった銀狐族の強奪、及び購入者の殺害」

「殺害、だと?」

「はい。マハル・タブリンス様より、明確に命じられました」


 胸の奥に、燃えるような怒りが走る。

 だが――今は抑えろ。冷静に、証拠を積み重ねる。


「最後だ。任務後、戻るはずだった場所へ案内しろ」

「……畏まり……屋敷に」


 十分だ。

 これで――マハルを追い詰める準備が整った。


「なるほど……」

 僕は深く息を吸い、決意を込めて吐き出す。

「行くぞ。マハルは屋敷に戻っている。……報いを受けさせる」


「私も行くわ。調子、取り戻すために」

「大丈夫かい、リンカ」

「ええ。隷属の首輪さえ無ければ、私は誰にも負けない。……パートナーでしょ?」


 差し出した僕の手を、リンカが強く握る。

 その温もりが、怒りで冷えた心に、熱を戻してくれた。


 ――さあ、反撃開始だ。


 僕たちはすぐに身支度を整え、暗殺者達を縛り上げたまま放置する。

 証拠はすでに押さえた。あとは――反撃だ。


「セージ様……」

 ミレイユが不安そうに僕を見上げる。

 その目には恐怖と、わずかな決意が宿っていた。


「安心して、ミレイユ。君達を危険に晒した償いは、必ず僕が果たす」


 口にした瞬間、胸の奥でまた怒りが沸き上がる。

 ミレイユも、リンカも、ルミナスも――守るべき存在を踏みにじったあいつを、絶対に許さない。


 だが、深呼吸をひとつ。

 怒りは剣の切っ先に乗せるものであって、心を狂わせる毒ではない。


「……怒りは捨てない。だが、飲み込まれもしない。冷静に、確実に仕留める」


 その言葉に、リンカが笑みを浮かべる。

「ふふ、やっぱりセージ君ね。あのマハルを叩き潰す姿、想像するだけでスカッとするわ」


「セージ、落ち着いてる。でも……怒ってる」

 ルミナスが小首を傾げながら言う。

 彼女の感覚は鋭い。僕の内面を覗かれているようで、思わず苦笑した。


「そうだよ。怒ってる。でも、それでいい」


 拳を握り、静かに宣言する。

「――これからあの屋敷に乗り込み、マハルにすべての報いを与える。俺たちの怒りと正義を、奴に叩きつける」


 三人の瞳が一斉に輝いた。

 恐怖よりも、決意の光が強い。


 夜の空気が冷たい。

 だが、僕たちの心は、燃えるように熱かった。


 こうして――タブリンス家への反撃が始まった。

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