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地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~  作者: かくろう
131~140

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140/150

帰還の光

 光の揺らぎが視界を満たした。

 空気がひっくり返り、次の瞬間、足元の砂が石畳に変わる。


「……着いた。ルインハルド王城の転移陣、反応安定」

 ルミナスが淡々と呟く。

 光の粒子が彼女の指先から霧散していった。

 砂の匂いが薄れ、代わりに懐かしい城下の風が頬を撫でる。


 ――ベロク討伐から五日。

 メルダナでの再興を見届けた僕たちは、王国への報告と今後の協議のため、ルミナスの《リ・テレポ》で帰還した。


 転移先の魔方陣には、すでに冒険者ギルドの迎えが来ていた。

「セージ殿――ご無事で!」

 迎えの騎士が駆け寄り、膝をつく。

 彼の肩には、メルダナ奪還の紋章が刻まれている。

「王が待っておられます。すぐに謁見の間へ」


◇◇◇


 豪奢な扉が開き、陽光が差し込む。

 玉座の間は戦時下にもかかわらず整えられ、王の威厳を保っていた。

 だがその目には、深い疲労と覚悟が宿っていた。


「――セージ・タブリンス。

 お前がザハルの地で“暴食の魔将”を討ったと聞いた。……真か?」


「はい、陛下。ベロクは二度にわたり変貌しましたが、最終的に討滅を確認しました」

 僕は跪き、剣を胸の前に掲げる。

 セレス、リンカ、ルミナス、そしてザハル王女リシェルも後ろに続いた。


 王は彼女の姿を見て、わずかに眉を上げた。

「……お前がザハルの生き残りか」

「はい。リシェル=ザハルと申します。王家最後の者として、貴国のご恩に報いたく参りました」

「うむ……。王家が滅びたと聞いていたが、生き残りがいたとは。神の加護か、あるいは――」


「祈りの力です」

 セレスが静かに口を開いた。

「彼女の祈りが、あの地を繋ぎ止めたのです」


 王はしばし沈黙し、やがて頷いた。

「……良かろう。ザハル王国の復興は、我らの誇りにもなる。

 リシェル王女よ、ルインハルドはそなたに庇護を約す。

 そして――セージ・タブリンス、貴殿ら“奈落の希望”はこの国の盾として、再び力を貸してほしい」


「承知しました。陛下」


◇◇◇


 謁見のあと、僕たちは王城を後にし、ギルド本部の報告室へ案内された。

 石壁の中に灯るランプの光が、緊張した空気を照らしている。


 ギルド長が、重たい地図を机に広げた。

 各地の被害報告、モンスター出現記録、そして――新たな報せ。

 それらの紙束を、彼は一枚ずつ整えながら口を開いた。


「……西方方面から異常な魔素の波が検出された。

 まだ正確な数は掴めんが、百や二百の群れではない。

 この国の境界、サブランディア平原のさらに西……湿原地帯の上空で、

 魔力が“蠢いている”」


「湿原……」

 リンカが小声で呟く。

 瞳に淡い光が宿り、彼女のスキルが発動する。

 【分析】――視界に浮かぶ情報が、線となって地図上を走った。


「この揺らぎ……単なるモンスター群じゃない。

 波形が三つに分かれてる。しかも、それぞれ性質が違う」

「性質?」と僕。

「一つは冷気、もう一つは歪んだ時流、最後の一つは……圧壊に似た震動」


 セレスがはっと顔を上げる。

「冷気……時流……そして圧壊。

 ――セレーネ、アルジーナ、ダゴン」

「推定、だけどね」

 リンカは眉をひそめる。

「でも、三体が同時に動いたなら、それは偶然じゃない」


 沈黙が落ちた。

 部屋の灯がわずかに揺れ、窓の外で風が唸る。


「……彼らが、動いている」

 僕は地図を見つめたまま呟いた。

「ベロクを倒したことで、均衡が崩れたんだ。

 奴らは“人間の手に奈落を奪われた”と判断した。

 だから――総力を出す」


 ギルド長が拳を握りしめる。

「七魔将の連合か。……最悪の想定だ」

「けど」

 リンカが穏やかに息をついた。

「私たちがここまで来られたのも、“想定外”の積み重ねだったでしょ」


 僕は微笑んだ。

「そうだな。

 想定外の戦い方なら、俺たちの方が上手い」


◇◇◇


謁見のあと、僕たちは王城を後にし、ギルド本部の報告室へ案内された。

 石壁の中に灯るランプの光が、緊張した空気を照らしている。


 ギルド長が重たい地図を机に広げた。

 各地の被害報告、モンスター出現記録、そして――新たな報せ。

 それらの紙束を、彼は一枚ずつ整えながら口を開いた。


 「……西方方面から異常な魔素の波が検出された。

  まだ正確な数は掴めんが、百や二百の群れではない。

  この国の境界、サブランディア平原のさらに西――湿原地帯の上空で、

  魔力が“蠢いている”」


「セージ様」

 静かな声に振り向くと、セレスが立っていた。

 その瞳には、祈りの光が宿っている。

「……あの地であなたが“祈り”をためてくれた瞬間、私も感じたんです。

 あれは、ただの力ではありません。

 人が“立ち上がる想い”そのもの」


「なら、その想いをまた集めよう」

 僕は剣を抜き、月光を映した。

「七魔将が動くなら、俺たちも動く。

 この光は、もう後戻りしない」


 風が吹く。

 ルミナスが隣に現れ、空を見上げた。

「……風、変わった。湿原の匂い」

「感じるのか?」

「うん。遠くの闇、ざわめいてる。……でも、負けない」


 リンカが笑みを浮かべて肩をすくめた。

「じゃあ、準備しなきゃね。次は“ため”の勝負になる」

「だな」


 セレスが胸の前で手を組む。

「祈りの力をもう一度――皆の想いを、あなたに」


 僕は頷いた。

 夜空の星々が瞬く。その光が、ほんの少しだけ近く見えた。

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