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地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~  作者: かくろう
11~20

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フィーリングリンク

 翌朝、街道沿いの近くで夜を過ごした僕たちは、運良く明け方までモンスターに襲われることなく朝日を拝むことができた。



 眠れない夜の闇の中で、僕たちはお互いの身の上話で盛り上がり、薄明るくなる頃にはかなり打ち解けることができたと思う。



 その証拠と言えるかどうか分からないが、新しく出てきた項目の数値が確かな変化を見せていた。



――――――



 ・感情ゲージ

 リンカニア 8/10 10/10到達で【ためる】を共有可能



――――――



 フィーリングリンクというらしいこの項目。

 ここに書いてあることが本当なら、もう少し仲良くなれば彼女にも僕のスキルを共有できるってことになる。



 もしも僕には使えない魔法やスキルに【ためる】が使えるようになれば、非常に頼もしい存在になるだろう。





 リンカニアさんは奴隷として売られる際に着せられたぼろ布一枚で、ほぼ丸腰の状態だったので盗賊から武器を頂く事にした。



 残った死体は僕の火魔法で火葬し、ゾンビにならないように処理をした上で人目につかない草むらに放置することになった。



 埋める余裕もないしね。



 ちなみに人を燃やすのってかなり大変だったけど、【ためる】を駆使してなんとかなった。



 基礎魔法くらいはもっと練習した方がいいかもしれないな。余裕がでてきたら魔導書を購入してもいいだろう。



 



 朝になると僕の体力はすっかり回復し、朝日の薄明かりで視界が効くようになってからダータルカーンを目指すことに決めた。



「それにしても、あのイレギュラーがフォレストウルフじゃなかったなんて。どうりでめちゃくちゃ強いはずです」



「はい。あれはヘルガロウムといって、ウルフ系モンスターの最上位でした。なんでこんな所にいたのか分かりませんけど。そんなの相手にあれだけ立ち回れるなんて、セージさんの強さは既にオメガランク相当だと思います」



「いやいや、昨日ギフトに目覚めたばかりですから、振り回されてばかりです。もっと研究しないといけません」



 考えてみると、イレギュラーがヘルガロウムだったとすると、周りのもそうだったのだろうか。



 僕は「フォレストウルフの魔石を変換」と唱えたのに、ちゃんとストックに変換されていたのだ。



「これがヘルガロウムの魔石……でも魔石っていうより、なんだか彫刻みたいですね」



「上位個体の魔石は別名【魔結晶】といって、芸術品としての価値もついて高値で取引されます。正直市場に出回ることは滅多にないですし、魔術的な価値も高くて手元に置いておく人も多いくらいですからね」



 なるほど。魔術的な価値っていうのは、いわゆるマジックアイテムに分類されて持っている事で魔力を上昇させたり、特定の魔法を無制限に使えたりといったものである。



 リンカニアさんの言うとおり魔結晶と言うだけあって、ウルフがそのまま水晶体になった立派な彫刻のような形をしていた。



『魔結晶を取得しました。魔素ストックの変換値は500000です』



 50万か。うーん、正直変換してしまうのは勿体無いな。売ればお金になりそうだし、今は保留にしておこう。



 ちなみにフォレストウルフのイレギュラー改め、ヘルガロウムを倒して手に入れた魔素ストックは魔結晶と同じ50万。



 魔の森の奥地で余裕を持って戦えていたレベル29の頃より遙かに高い45まで上げることができているので、しばらく強さに困ることはなさそうだ。



 あんなのがしょっちゅう出てきていたら王都やダータルカーンはとっくに壊滅しているだろうしね。



 レベルアップで使い切ってしまったストックも補充できたわけだし、今後どう転ぶか分からない身の上だからストレージにしまっておくことにする。



 ちなみに、今はまだリンカニアさんに僕の能力の全てを開示しているわけじゃない。



 結果的に命を助けて恩義を感じてくれているが、それで彼女の人生を縛ることがあってはいけないと思う。



 あくまでダータルカーンで身を立てていけるようになるまでの暫定パーティーだ。



 それに彼女の事を奴隷として売り払った元パーティーメンバーと出くわしたりしたら危害を加えられるかもしれない。



 お世話になる以上そういったトラブルから守ってあげたいという思いもある。





 そのうえで彼女が自由の身になれるまでサポートすることで恩義を返せればと思う。



 この国では表向き本人の許諾がない奴隷の売買は禁止されている。



 だからこそ希少な種は闇市場での価値が高くなってしまうという皮肉な現状があるんだ。



 彼女は銀狐族という絶滅危惧種だ。銀色の体毛が非常に美しく希少であり、男性は高い戦闘力による戦闘奴隷。



 女性は容姿の美しさで性奴隷や愛玩奴隷にされる事が多い。



「よかった。髪の色を変えるアイテムは無事でした。装備はほとんどないですね。この格好のまま行くしかなさそうです」



「盗賊の遺品からナイフを見つけました。何もないよりは良いと思うのでコレを」

「ありがとうございます。正直助かります」



「大丈夫です。ダータルカーンに辿り着くまでに戦闘があるでしょうし、ドロップアイテムや魔石を集めて換金できる分を確保しましょう。そうすれば装備一式が揃うくらいは稼げる筈です」



「え、でも魔石のドロップなんて滅多にありませんし、馬車も壊れてますから大量には」



「え? 魔石ドロップって確率なんですか? 個体差だと習いましたが」



「同じ集団でも魔石になる個体と死体が残る個体が出たりすることもありますよ」



「なるほど……」



 今のところ僕が倒してきた魔物は100%魔石になっていた。



 何か理由があるのかもしれない。



「リンカニアさん、ちょっと実験してみたい事があるので、次の戦闘があったら手伝ってもらえますか。大部分は僕が掃討しますから、実験用に残した個体だけお願いします」



「何か思いついたんですか?」



「ひょっとしたら任意に魔石ドロップを狙えるかもしれません」



「そ、そんなことが可能なんですか?」





「まだ仮説ですけどね。昨日から今日にかけて、魔の森で戦ってきたんですけど、魔石ドロップ率は100%でした」



「ええっ⁉ そんな人聞いたことがありませんよっ」



「ですよね。だから仮説なんです。もし僕の考えが正しければ、冒険者ライフが非常に楽になるかもしれません」



 とにもかくにもダータルカーンを目指して出発することにした僕たち。



 リンカニアさんは奴隷用のぼろ布にサンダルのような簡単な履き物しか着用していない。



 戦闘をさせるには不向きすぎる格好なので実験以外は全部僕がやるべきだ。



「休憩は多めに取りながら進みましょう。実験以外の戦闘は全部僕が担当しますので、リンカニアさんは身の安全を第一にお願いします」



「いえ、これでも冒険者の端くれです。自分の身は自分で守れますからお気遣いなく」



「頼もしいです。でもほぼ丸腰と同じなので、絶対に無茶はしないでください」



「ありがとうございます。頼りにさせてもらいますね」



 ◇◇◇



「あ、見えてきました。新街道の合流地点です。よかった、案外近かったんですね」



 しばらく旧街道に沿って歩き続けること数時間ほど。



 リンカニアさんの指さした方向に比較的開けた道が見えてくる。



 周りは林に囲まれているものの、獣道よりはマシな荒れ方だった今までより段違いに綺麗な道だ。

 途中休憩を挟みながら順調に進んでいるが、肝心のモンスターには全然遭遇しなかった。



 普通ならありがたいことなんだけど、換金アイテムが欲しい僕らにとってはちょっと不都合だなぁ。



 なんて考えながら進んでいると、リンカニアさんが僕の裾を引っ張った。



「待ってください。300メートル先にモンスターの集団がいるようです」

「索敵スキルですか?」



「ええ。斥候職の基本スキルです。使い方次第ですけど、数百メートル前方の存在は察知できます。まだ未熟なので全方位をやろうとすると極端に範囲が狭くなっちゃうんですけど」



「なるほど。それなら僕は後ろを警戒しながら進む方がいいですね」



「助かります。それで前方の魔物ですが、多分色んな魔物の混成軍みたいな感じだと思います。ここからだと種類までは分かりませんけど」



「どっちの方向か教えてもらえますか?」



「え、あっちの方角です」



「どれどれ」



 おでこに片手を当てて目を凝らして見る。☆遠目にストックを注ぎ、視界を強化していくと、リンカニアさんの言うとおり魔物の集団が見えた。





「ゴブリンに、オークの混成軍。それにオーガもいるようです。騎獣用のウルフにディックディアスもいますね。確かに混成軍だ」



 ディックディアスは鋭いツノを持つ鹿のモンスターだ。突進力が凄くて足が速いが、刺激しなければ大人しい草食系でもある。



 知能の高い魔物が運搬用の足として利用するって魔物学で習ったな。





「え、そんなにハッキリ見えるんですか? セージさんも索敵スキルを?」

「いえ、単に目が良いだけですよ」



「それにしては……いえ、あなたの常識外れな強さからすれば不思議じゃないのかも」



 なんだか微妙に引っ掛かる気がしないでもないけど、気にしてはいけないだろう。僕のギフトが非常識なのは事実だし。



「なんだか走ってますね」

「確かに、気配が動いてますね。まるで何かに追われている……いや、追っている?」



「あっ! 馬車が襲われてますっ。あれは、多分商人の馬車です。助けましょうっ」



「襲撃でしたか。でもここから走って追いつけるでしょうか」



「大丈夫。僕に任せてください。ちょっと失礼します」



「え? きゃああっ! ちょ、ちょっとっ」



「すみません。なるべく揺らさないので振り落とされないようにしがみ付いてください」



 彼女の膝裏に腕を通して持ち上げる。貴族のご令嬢の間で流行っている劇場演目では『お姫様抱っこ』と呼ばれていた格好だ。



「こ、こここ、これはっ、セージさんっ⁉」

「舌を噛まないでくださいね。加速ッ!」



 【☆加速】にストックを注ぎ、僕はリンカニアさんを抱えたまま思い切り前に踏み出した。



「ひあぁあああああああっ!!」



 魔法の弾丸を撃ち出すように爆風で地面が抉れ、驚いた彼女がギュッとしがみ付いてきてちょっと良い匂いがする。



(お、男の人に抱きついたちゃった……あ、結構ガッシリしてるんだ。なんかドキドキしてきた)



 彼女の小さなつぶやきは耳元にバッチリ聞こえてしまった。



――――――



・感情ゲージ

リンカニア 9/10 10/10で【ためる】を共有可能



――――――



 あ、数値が上がった。ひょっとしてこれ、僕への感情度が関係してるのかな?



 こういうことに思考が及ぶって事は、少しは余裕がでてきたのかもしれない。



 リンカニアさんを抱えたまま、僕は馬車を追っかけているモンスターの集団に突っ込んでいった。






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