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地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~  作者: かくろう
111~120

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束の間の休息

 王都から戻ってしばらく、僕たちはダータルカーンの街で開かれる大きな祭りに足を運んでいた。

 街路には提灯が並び、夜空には色とりどりの火花が打ち上がる。普段は冒険者たちの拠点としてにぎわう場所も、この日ばかりは笑い声と屋台の匂いで溢れていた。


 屋台の明かりが揺れ、香ばしい匂いが夜風に混じる。どこか懐かしい、けれど僕にとっては新鮮な光景だ。


 これは遠く東の果てにある島国、サクラ国伝統の「縁日」というお祭りを模したものらしい。


 煉獄の騎士団の忍者、シズカさんの出身地だ。今日のお祭りのことは彼女から教えてもらった。


「……セージ君」

 声に振り返った瞬間、僕は息を呑んだ。


 そこに立っていたのは、浴衣姿に身を包んだリンカだった。

 青地に白花模様の布が彼女の身体をしなやかに包み、腰の帯からは――堂々と銀色の尾が揺れていた。


「リンカ……幻色の腕輪を外しちゃったのか?」

 思わず問いかける。これまで彼女は銀狐族であることを隠し、人前では青髪で通してきた。


 リンカは一瞬だけ照れたように目を逸らし、そして静かに微笑んだ。



「うん。……もう、隠す理由はないから」

 揺れる銀の髪が夜灯に映え、まるで月光を映したように輝いていた。


「王都の闇オークションの件で、冒険者ギルドのみんなには正体が知られちゃったし……。だったら、堂々としてた方がいいかなって」

「……そうか」

 胸の奥に温かさが広がる。

「リンカらしいよ。その姿、すごく綺麗だ」


 彼女の耳がぴくりと動き、尾が嬉しそうに揺れた。

「そ、そう言われると……なんか照れるな……」


 そこへ、別の声が割り込んでくる。


「ルミナス、見参」

 呟くような調子で現れたルミナスは、派手な赤と黒の浴衣に身を包んでいた。

 炎を思わせる模様が布地を駆け抜け、彼女の自由奔放さをそのまま形にしたようだった。


「どう? 派手。目立つ。ルミナス最高」

 腰に手を当て、どや顔。

「……いや、派手すぎないか?」

「そのとーり。派手すぎ。だから最高」

 言葉が呟きのリズムで重なり、僕は苦笑するしかなかった。


 さらに、しずしずと歩み出てきたのはセレスだった。

 白地に金糸で織られた浴衣を纏い、祈りを込めるように胸の前で手を組む。


「どうでしょうか……似合っていますか?」

 控えめに問いかけるその姿は、祭りの喧騒の中でもひときわ凛としていて、思わず見惚れてしまった。


「もちろん。誰よりも似合ってる」

 僕が言葉を返すと、セレスの頬がほんのり朱に染まった。

「ありがとうございます……セージ様」


 こうして三人が揃うと、祭りの光景そのものが華やかさを増した気がする。

 領民たちも次々と振り返り、ざわめきが広がっていった。


(……これから祭りを楽しむんだ。戦いの日々が続いたからこそ、今日くらいは)


 胸の中にそんな思いを抱いたところで、背後から声が飛んだ。


「セージ様ー! 屋台、準備整いました!」

ミレイユが元気に手を振っていた。その姿を見ながら、僕は心の中で呟く。

(シャミーも、レイシスも、アーリアも……きっとタブリンス領で同じように頑張ってるんだろうな)




 どうやら、祭りの本番はこれからだ――。




 祭りの通りは、笑い声と屋台の呼び込みで賑わっていた。

 焼き串の香ばしい匂い、綿あめの甘い香りが風に混じり、心まで浮き立つ。


「セージ君、あれ……!」

 リンカが指差した先に、的当て屋台があった。弓矢を模した木の玩具で、並んだ的を射抜く遊びだ。


「……あれは、ちょっとズルにならないか?」

「ふふん、いいじゃない。久しぶりに腕試ししたいんだ」


 軽やかに矢をつがえたリンカは、弦を引き絞ると――放たれた矢は一直線に飛び、的の中心を貫いた。

 次の矢も、そのまた次の矢も、すべてど真ん中。


「わ、わぁぁっ! ぜ、全部真ん中だ!」

「お姉さんすげええ!」


 屋台の主が頭を抱えるほどの圧勝ぶりに、観客は大盛り上がり。

 リンカは頬を赤らめながらも、得意げに尻尾を揺らした。


「ふふっ……ね? セージ君、私、まだまだ現役だよ」

「いや、現役って……君は元からプロだから」

 思わず笑ってしまい、リンカの銀の髪が夜店の灯りに揺れて見えた。


 ◇◇◇


 一方のルミナスは――輪投げの屋台で、豪快に失敗を繰り返していた。


「……よし。今度こそ。入る」

 ぽすっ。輪は柱の手前で落ちた。


「おいおい、全然だめじゃないか」

「だまれ。今のは……風のせい」

「屋台の中に風は吹いてないって」


 隣の子供まで笑い出す始末だ。だがルミナスは一歩も引かない。

「……ルミナス、本気。四属性解放」


 ぱちぱち、と指先に微かな火花が散る。僕は慌てて止めた。

「ちょ、やめろ! ゲームに魔法を持ち込むな!」


 その後も輪投げに挑み続けたルミナスは、結局ひとつも入れられず、景品の飴玉を「参加賞」として手渡されていた。


「……これは勝利。実質」

「いや、どう見ても敗北だろ」

「違う。飴を得た。ルミナス、勝利」


 胸を張る彼女に、僕もセレスも呆れながら笑ってしまう。

 その後のくじ引きでも「大凶」ばかり引き当て、屋台の人に同情されておまけを渡されていたのは、言うまでもない。


 大凶がなんなのかよくは知らないけど、どうやら1番悪い結果だったらしいことに苦笑するしかなかった。


 なんともルミナスらしい結果だ。


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