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地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~  作者: かくろう
111~120

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交錯する希望と不安

 僕ら《奈落の希望》と、先輩である《煉獄の騎士団》。

 並び立つという事実が、どれほど大きな意味を持つのか――言葉にせずとも、誰もが胸に刻んでいた。


「……では、詳細は冒険者ギルドで詰めようか」

 アテンがそう口にすると、場の空気がわずかに動いた。

「ギルドなら兵士や冒険者の調整も可能だ。市民への避難指示も含め、動かせる組織はそこしかない」


 僕は頷き、セレスやリンカ、ルミナスと視線を交わした。

「確かに……僕たちだけじゃ、守り切れない規模になる」

「そのとーり」ルミナスが小声で呟く。「ルミナス。戦う。けど……市民、無理」

「そうだね。だからこそ……ギルドの力を借りる」


 フェンネルが軽く杖を肩に乗せ、片目をつむった。

「ふふん、じゃあ決まりね。あたし達は派手にやるけど~、その前に準備はきっちりやっとかないと」

「任せろ。俺の盾で後輩も市民も全部守ってやる!」ザークが豪快に胸を叩く。


 シズカは腕を組んで頷いた。

「調整は大事でござる。拙者、そういうの苦手ゆえ……ギルド会議、ありがたいでござるな」


 セレンが両手を組み、静かに祈るように告げる。

「人を導くのは、力だけではありません。整えられた秩序があってこそ、戦いも実を結ぶのです」


 その言葉に、僕は胸を引き締めた。

(……戦いに備えるだけじゃない。背後にいる人たちを守るために、今できる準備をしなくては)


 こうして――僕らは冒険者ギルドへと向かうことを決めた。



 控えの間の空気が、ざわりと揺れた。

 そこにいた高ランク冒険者たちが、僕らを見るなり立ち上がったのだ。


「……やっぱり、《奈落の希望》だ」

 最初に声を上げたのは、顔に深い傷の残る壮年の冒険者だった。

「俺たちは忘れねぇ。あの時、純白の剣の罠に填まって……ダンジョンのボスに嬲り殺される寸前、あんたたちが現れた。もしセージ殿の一閃がなけりゃ、全員あの場で終わってた」


 別の冒険者が拳を握りしめ、唇を噛んだ。

「命を救われた恩は、一生消えない。……あの時、仲間と一緒にここまで戻って来れたのは、あんたたちのおかげだ」


 その声は震えていた。だが確かな敬意があった。

 周囲の者たちも頷き、口々に言葉を重ねる。


「だからこそ、俺たちは認めてる。魔将を退けた英雄としてだけじゃねぇ。仲間を救い、人を見捨てない……本物の冒険者としてな」


 ……胸の奥が熱くなった。

 僕は思わず剣の柄に手を添え、深く頭を下げる。

「……ありがとうございます。僕たちは、ただ出来ることをしただけです。ですが、こうして声をかけてもらえるのは……とても、嬉しいです」


 その瞬間、場の空気が柔らかくなった。

 重苦しい緊張ではなく、互いに背中を預け合える仲間としての信頼が、そこにあった。


 ふと横を見れば、ルミナスがどや顔で胸を張っていた。

「そのとーり。すべてはルミナスのおかげ」

 腰に手を当て、いつもの調子で。


「いや、それは……」

 お前あん時は敵側だったろうが……。

 硬かった空気が解け、まるで一座の仲間に迎え入れられるような温かさが広がっていく。


 その和やかな笑いの中で、アテンが静かに口を開いた。

「なるほど。……評判は聞いていたが、やはり彼らは人の希望を背負うに足る存在だ」


 赤い髪が揺れ、真っ直ぐに僕を射抜く。

 その瞳に込められた期待の光に、僕は自然と背筋を正した――



 場が和んだその時――アテンがゆっくりと前へ出た。

「セージ君。……君たちと直接話せるのは幸いだ。こちらにも、伝えておきたい情報がある」


 僕は思わず姿勢を正し、深く頷いた。

「はい。お聞かせください」


 アテンの表情は落ち着いていたが、その声には硬さが混じっていた。

「我々《煉獄の騎士団》は、先日ある調査のために国境付近へ赴いた。そこには……見慣れぬ血の紋様が残されていた」


「血の……紋様?」

 思わず繰り返した僕に、フェンネルがすかさず補足する。

「そうそう。地面いっぱいに描かれたおぞましい円陣だったわ。魔法陣って言うより、もっとこう……生きてるみたいに蠢いてたの」


 ルミナスがぼそりと呟く。

「血の呪術。古代魔族の術式。……嫌な匂い」


 シズカも腕を組み、険しい顔で言葉を継ぐ。

「ただの魔族ではない。背後に大規模な組織があるでござろう。人を魔に堕とす術……考えただけでぞっとするでござる」


 冒険者たちの間に、ざわめきが走る。

 セレンが一歩進み出て、手を胸に当てた。

「……私も祈りを捧げましたが、感じたのは『堕落』の気配。七魔将に連なる闇の一部と考えて間違いないでしょう」


 僕は剣の柄を握り直し、仲間たちに視線を送った。


(……やっぱりだ。ヴァルナのときも、あの視線の奥に別の闇を感じた。これで確定だ。七魔将の背後には、さらに強大な存在が潜んでいる)


「セージ」

 アテンの声が再び響く。

「君たちが遭遇したヴァルナの情報は貴重だ。そして我々の調査で得られた兆候も、確かに繋がっている。……次の一手をどう打つかは、君たちと我々、双方にとって重大な意味を持つだろう」


 僕は強く頷き、はっきりと言葉にした。

「はい。……僕たち《奈落の希望》は、逃げません。人の未来を奪おうとする存在なら、必ず打ち砕きます」


 その言葉に、アテンの瞳が静かに細められる。



「なるほど……その気迫ならば、共に戦えるな」


 フェンネルがにやりと笑い、杖をくるりと回した。

「じゃ、次は共闘になるかもね。楽しみだわ~」


 ザークが豪快に笑い声を響かせる。

「がっははは! おうよ! 次にゃ背中預け合って大暴れだな!」


 シズカが軽く肩を竦めつつも、眼光を鋭くした。

「気を抜けば、命はないでござるぞ……だが、それが冒険者でござる」


 セレンは静かに目を閉じ、祈りの言葉を紡ぐ。

「光あれ……我らの進む道に、必ず」


 その瞬間、僕の胸の奥にも熱が広がった。

 ――煉獄の騎士団と共に進む未来。

 それは決して容易な道ではないが、確かに希望の灯火だった。


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