表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/51

腹が減っては掃除もできぬ、なのでまずは食堂!


「よし、今日の作業は、食堂の再建から始めます」


月の一声で、瓦礫と砂埃にまみれた旧ギルド跡の一角が作業対象に決まった。まともに雨風をしのげる場所は、今のところ皆無。そのためまずは、食堂兼休憩所の確保が最優先となった。


「食堂なら、火が必要だよね。任せてなんだよ」

クロマが胸を張る。まるで自信満々な小学生だが、れっきとした成人であり、火龍に育てられた炎の使い手。


「でも、また焼きすぎて跡形もなくしそうだから、火力は控えめでお願い」

「えー! 手加減って難しいんだよー!」


クロマはしぶしぶ火力を調整しながら、鉄板に残ったススを手で拭う。月はそれを見て内心で(炎のセンスは一級なのに、人間の常識は未就学児以下だな……)と頭を抱えていた。


「お姉ちゃん、屋根の上にいた猫に手伝ってもらったのだ!」

帝がひょっこり屋根瓦の影から顔を出す。


「こっちは、釘が落ちてたらその下に金貨が埋まってたのだー!」

カノンもバケツを逆さにすると、なぜか中から丸太とハンマーが飛び出した。


「……このラッキー体質、むしろ現場に常駐しててほしい」

月は諦めと希望の入り混じった顔で、設計図らしき紙を見下ろした。



---


役割分担(暫定)


月:統括・設計・突っ込み・ツッコミ・全部


クロマ:火力担当(建材の加工、簡易調理、たまに爆破)


クロウ(マスター):土地神で外出不可。瓦礫から宝箱探しが趣味


カノン:偶然による建材発見、幸運による素材提供


帝:動物の言葉が通じるらしく、現地猫族との交渉役




---


「……ふう、仮設でも屋根と炉があるだけで全然違うね」

完成したばかりの半屋外食堂で、月はようやく腰を下ろす。


「今日は、クロマの焼き魚定食と、カノンの壺スープなのだー」

帝が満面の笑みで配膳に入る。


「って、どこから壺スープ持ってきたの……ていうかスープが壺味ってなに……?」


「月ちゃん、細かいこと気にしすぎだよー」

クロマがご飯をかきこみながら笑った。お子様ランチ用のスプーンで。


「お前は成人だろうが!」


ツッコミが間に合わない。



---


そして、その日の午後。

再建初の食堂営業を開始しようとしていたその時。


「ただいま〜って………あれ?……更地?」


聞き慣れない男の声が、風に乗ってやってきた。


月が反射的に立ち上がる――。


第一の来客が、地平の彼方から、足を踏み入れる。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ