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11話:こーんなに間抜けだとは思わなかったにゃ——〈彗星の騎士団〉 それはどうかな? 1

 ◇


 ホテル滞在最終日の前日——結局、第七十九層の攻略状況に変化はないままだった。遊べるのは今日が最後なのでみんなは朝からパークへ行ったみたいだったが、落ちつかないくらいふかふかなベッドともこれでお別れかと名残惜しい気分で目を擦ると、雛蜂が俺を見下ろしている。


「——こうかん、だよ? プレゼント。みんなはスイくんの分も買ったんだけど雛、忘れちゃった……。だからっ」


 ……観察されていたか? だがすぐに、ベッドの隣に積まれた箱たちに俺は気がついて、その視線を遮ってきた雛蜂を間近で見た——「一番いいものあげるねっ?」と赤面して囁き、着物の帯を雛が解いたのを俺は素早く止めた!


「ぁっ……スイくんっっ……いじわるなんだねっ、雛だからそんなことするの——? はずかしがらないでいいのにっ」

「違うッ、危険を感じたんだ。俺以外の前では、そんなことするなよ——?」


 ……? 何だろう。両手の袖を幽霊のように前に出し、顔を半分隠しながら、人形のように大きな目で、俺のことを雛蜂がじっと見てきた。


「雛も、はずかしいこと言っちゃおうかなっ。今ならおそろいだから。あのねっ……スイくん……? 雛、スイくんのこと好きだよっ。本当に本当に大〜好きっ」

「そうか……?」

「全部受け止めてくれるもんっ。雛がいけないことしてもダメって言わないし、スイくんのおかげでみんな……みんなと友達になれたし、ダンジョンどんどん進んだし。スイくん雛のこと見てよ? ……はずかしがってるっ。見ないともっと好きって言っちゃうよ?」


 ——


「だから雛、スイくんにずっとついててあげるねっ」


 憑くなよ……? 莉玖が迎えにきて雛蜂も出て行ったので、俺はみんなのプレゼントに取りかかった。貰っていいのだろうかと思いながら。


「……何かお返しをしなきゃなッ」


 まず澪がかわいいキーホルダーをくれた。一番小さな包みだったのでそれから開けたのだが、売っているお土産の中で一番かわいい奴という感じがした。素直に嬉しかった。

 次に手紙のついている大きな箱があって、手紙の方を開けた。


 ——『こういうお菓子って自分用には一箱以上買いにくくないですか……? あたしだけですかっ⁉︎ 量が足りなくないように、気兼ねなく食べられるように、たくさん送りました☆』


 ……莉玖がチョコレートクランチを六箱くれたが、手癖で書いたらしい直筆のサイン入りの手紙(※例のアプリのことを問い詰めたら、ダウンロード販売しているグラビア写真集をギフトされた。これでどうか……と命乞いされたが、販売数を見るとけっこうコアな人気があるらしい)の方が価値がある気がした。


「朝食の食べ放題の出る量、明らか増えたもんな……莉玖のせいで……。ホテルさんサイドがラーニングして、足りなくならないように出す量を増やしてくるっていう。牛乳すげえ量飲んだ後に『あっ、低脂肪乳じゃないといけないのにっ⁉︎』って減らす以前にそもそもライン超えてんだわ」


 墨華のには、墨華しか着ない服が入っていた。ふわっとしたカラーのフリルワンピだが背中と胸元がストラップになっている。

 パーク内ではなく近くのどこかで買ったみたいだが、レシートが床に落ちていた。それによると……。


「——」


 ……まず、もう一つ包みが残っていた。雛蜂のはないので緋花かと思っていたのだが——考えてみれば昨日緋花は俺といたので、プレゼントなど買ってない(※買ってても、こういう形では俺にはくれないと思う)。

 で、それを開けると中身は、塗ると胸が大きくなるという旨のことが怪しい外国語で書いてあるクリームだった。それのレシートも、服のと一緒に二つ折りにされていた。


「——これは、あいつの自分の買い物だッ⁉︎」


 その後、みんなと合流して一日パークを満喫した俺は翌日の帰るとき、終わってしまうのが惜しい気がした。

 思えば、厄介な能力だが、なければこんなことにならなかった。

 余韻のせいで——


 夜、俺は久方ぶりに家の前に帰ってきたとき、マンションの門前に立っている人影に気がつかなかった。


「あっ。おかえり!」

「——えっ⁉︎」


 四季咲よつきさきがそこにいた。今日は、全体が白いレースになった中華風のえっちなノースリーブワンピに、いつものツインテで、蒼いベルベットのリボンを片足だけ太ももに一周させている。

 ワンピースを脱いで裸になったらリボンだけになる格好。

 だが、何故——⁉︎


 ——

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