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——4

 澪も大変な巨乳なので(※背は低いのに)、胸に引っ張られた布地で、細いおなかに影ができていた。尻尾の方はいつも以上にスカートの布の量が足らず、尾のために切れ込みをいれたパンツと白い太腿がほぼ見えて——

 やや後ろに隠れるようにして莉玖がいた(澪に昨日のことを話したのかッ)。隣にきて俺の服の裾をつかんだ。


「あのっ、どうして昨日お部屋にいなかったんですか……? ぅぅぅっ、あたしっ……すごく勇気を出してっ、〜〜っっ。なのにっ。キスだってしたのにっ……っっ。かっこいいって思わせてくれたんだからっ、空気を読んでくださいよ」



 ※効き過ぎ——。



「〜〜っ、ばかっ」


 ——どうすれば頭が良いことになるんだ⁉︎ 夜霧の剥がれ、空気の澄み渡る高原の朝。全く働かない頭を振ると、俺は昨日と同じコートに戻っていた。


「雛蜂に聞いたわ。この辺り一帯は、別荘地になるまでは刑務所と墓地だったって」


 澪がコートの反対側にいて、ラケットでボールを弄んでいた(新たに発覚した心霊情報と混ざって脳がバグりそうになった。元々、澪はネクロマンサー……豹耳キャラになる前は黒髪眼鏡のオカルトマニアであったという過去がッ)。


「墓碑銘を今日中に考えなさい? 夏休みの自由研究に澪が彗星のをつくってあげる」

「……っ、怒ってるのか面白がってるのか⁉︎ 待っ」


 トンッ、と軽く跳ねあがりながら澪がラケットを振り抜き——何の予告もなく急にゲームが始まっていた。


「っと!」

「——え⁉︎」


 何とかラケットを当てて引くと、澪は驚いたような声を上げた。俺が高く上げたボールの下に駆けて、素早く軽快に跳ね上がる——速い。しかし。

 ジャンプスマッシュを返した球が澪のコートの奥に刺さると、莉玖が営業スマイルで拍手してくれた。澪が返した球は弾道が低く、ネットを超えず。それも当然。上手い下手の話じゃない——


「——! ッ⁉︎ なにっ‼︎‼︎⁉︎ なんで、⁉︎」

「——そんな顔したこと、今まであったか⁉︎」


 テニスは——『相手の返せない球を打つ』ゲーム。昨日の子もそうだったわけだが。


 ——


 つまり……残酷なほど体格差が出る。背が高いほどボールをバウンドの頂点で、強く早く打ち返すことができる。低いとバウンドが落ち着くまでコートを大きく走らされる。

 基本的なことについては俺は——幼馴染の墨華が趣味でテニスは、一緒にプレイしていたので。


「ッ。ッ——うそ‼︎」


 やればやるほど向こうの方が疲れていく。何度目かのサーブを返してコートの反対側、端に俺のリターンが刺さると、追いつけず滑った澪が地面に手をついた。

 生足とパンツが土につき、汗で汚れて悪態をつくとラケットを叩きつける。跳ね上がった柄をキャッチするが息が上がっていた。それで、

 その時莉玖が後ろから何か叫んだ。

 ——?


「ちっ、がっ……あのっ、あ——〜〜っっっっ‼︎⁉︎ うああゔえあああわわああッ‼︎⁉︎」


 血……? 澪の白い太腿の内側をつーっと黒っぽい血が流れていた。


「⁉︎ 別に——、ッ」


 澪がスカートをまくり上げるとアンダースコートの前が鮮やかな真っ赤になっていた。え?

 澪も驚いたようだったが、すぐに突然……澪はパンツとアンダースコートを一緒に一気にずり下ろした。


「別にっ、こんなの脱いでするからいいわよッ」

「ッ——」



 莉玖!



「——フィナーレだ。ラストゲームにしようぜ。俺が勝ったら、許して貰わなくていいッ。その代わりずっと——〈彗星の騎士団〉の一員でいろ!」


 さっきの得点でセットが代わり、サーブの権利は俺にある。不意をついて澪の体を狙うと。

 ラケットの柄に当たったボールが空へ跳ね返って澪が尻餅をついた。真っ赤になったパンツが隣、コートの土の上に脱いであった……。


「えっ……あうっ——っっっ、あ⁉︎」

「しゅ、しゅうりょう! 試合終了ですっ‼︎」


 かかった。何て便利な能力なんだろう、俺は目で合図して(※不思議と莉玖とは通じ合える。近いものがあるのかもしれない)、ブーストをかけてくれた莉玖が前に出て試合を打ち切った。俺たちは別荘へ帰り、テラスで朝食を食べた——


 ◇


 ——たっぷりのミルクにメープルをかけたパンケーキと、こんがり焼き目のついたソーセージを食べて、やっと目が覚めてきた俺は墓地跡でのことは二度と考えないようにした。食卓には最初に墨華がいて、しばらくすると雛蜂も現れたが、今日は緋花がレッスン(※何のだ?)らしい。

 なので他の皆は観光にいき、俺は動画編集などをして、夜まで過ごした。


 しかし夜、夕食前に、思い立ったことがあった。


 現代のダンジョン攻略は——天災への対処であり、動画配信のネタであり、億超えの賞金がついたゲーム。現在、崩壊中の前線に参入することを目指したレベリングが第六十九層などで行われた結果。

 前回の攻略時、ダンジョンの内部は——特殊な状態になっていた。


「——ッ、思った通りか」


 一日の、敵の出現数は、今日も上限に達しているようだ。俺は一人で第七十九層に戻った。危険はないとは言えないが。それでも俺はこの層の攻略を早急に進めてしまいたかった。


「! ——」


 しかし少し進んだところで背後から露骨な、声をかけるよりはっきりとした人の気配がした。


「彗星」


 え? 実際に声をかけられると俺は声を上げそうになった。一瞬堪えた。だが結局本当に声を上げた。


「俺を殺しにきたのか⁉︎ ——違うッ! 俺じゃない、あなたから借りたランドセルの方はですね⁉︎ コスプレをしている方に貸してくれと言われまして、それで貸してしまったところ……待て。これ、俺がランドセル借りてきて誰かにコスプレさせてなくしたみたいになってないか‼︎⁉︎ それとも今朝のッ」

「一緒に行ってあげるわ」


 ⁉︎ いつもの白ワンピース姿に戻って現れた澪は怯んで硬直した俺の前に来ると、目を合わせず、スカートを持ち上げ——空気がざわついた。

 すると唐突に、


「わたしっ……女の子になっちゃったからっ……」



 澪……わたし⁉︎



「これからはお兄ちゃんじゃ、——なくてっ。彼女……じゃ、ダメ……?」


 ——

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