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——2

 ダンジョン攻略者として、元々俺はお世辞にも体力がある方ではないし、レベルを上げてステータスが上がっても疲労を感じにくくなったりはしない。システムの権限が肉体に作用することはないのだ。

 時刻は正午になろうかというところで、夜まではぐっすり休めるだろう。そう思って玄関を開けたが。


「——⁉︎」


 開けた玄関に、小洒落た女の子物の靴があって、俺はドキッとした。


「まさかッ、いるのか。いや……うちの連中と同じで、あいつは夜型のはず。きっと寝てる」


 背筋がゾッとすると風呂場から水音が聞こえた。

 シャワーを使っている音だ……。


「起きているだとッ——だが、それなら、今のうちに部屋に入ってしまえば出会わなくて済むか……」


 寝よう。とにかくさっさと。俺は明日まで起きて来ないつもりで、先に済ましておくために、トイレのドアを開けた。すると、そこには先客がいた。


「んっ。あっ、あううんっ、ん。んんーっ……♡ はぁん♡ えへっ、うぇへへへっ。ガンギマリぎそ。——うぉ‼︎⁉︎」

「——」


 個室の中には小さな美少女がいた。常に光が当たっているかのような純銀色の髪にチャーミングな翠色の瞳。

 それは……もし、出会ったのがトイレでなければ。便座の上で足を開き気味に体育座りしていなければ。綺麗な銀髪が、寄りかかったタンクの水が出るとこにたっぷりと入ってなければ。極めつけに、シャワーを出しっぱなしで風呂の途中でトイレにきたらしく全裸でなければ。


「——何だっ、お兄ちゃんか。親帰って来たかと思ったぎそ」

「ガブリエル……ッ」


 もし。もし、喋り方に変な語尾がなく、俺に驚いて床に落とした薄い本が知的な文庫本か何かだったら。

 いや、もう原型はないが、とにかく——白良ばくらガブリエルは、血の繋がっていない俺の妹である。親は今海外に行っているので家には俺と、っ。



「ぅぉぉぉお兄ぢゃああああーーーーん‼︎‼︎ 帰ってきたぎそか⁉︎ 久しぶりぎそ! 一瞬パニックになってしまって何が起こってるかわからなくて本当に本物か疑ってしまっ、うううっ。今生の別れかと心配したぎそー!」

「ッ、泣くほどか⁉︎ 本物って何だよ! 俺の偽物って向こうだとありえるし不安なるわッ。——ズンッ、って来る! おまえのタックル判定強ェよッ」

「あまりの切なさと恋しさによって最近では家中の至るところにお兄ちゃんの幻覚が見えていたぎそ……。うちが話しかけると、お返事してなでなでしてくれるぎそ……。あ、そうだ」



 ガブリエルが頭からタックルしてきたのを直撃した俺は廊下に背中をぶつけ、俺の上からどいたガブリエルはさっき落とした本を拾って、開いて俺に馬乗りになった。

 俺は、廊下の奥の施錠された部屋を反射的に見ていた。そこには秘密がある。


「お兄ちゃん……っ、いいところに帰ってきたぎそ……っっ。これっ、これ見て。今日出たばっかりの新刊、即落ち催眠音声つきでめちゃ使えるぎそ——♡」


 ——

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