日常
どうせなら、一人っ子で生きていたいと思ったが…
こんな生活を送りたかった訳では無い!!
カチャカチャカチャカチャ
「緑也お兄ちゃん、そこ邪魔〜」
カチャカチャカチャカチャ
「ねぇ聞いてるの? そろそろゲーム辞めて学校行かないと、
将来ニートになっちゃうよ?」
うるせぇ…めっちゃうるせぇ…
単位とってるんだから、あとは出席日数を稼げばいいんだよ。
まぁ、学校好きな桃香にはわからんだろうが。
ガサガサ音がするな…何いじってんだ?
って、それは "愛たん" の限定パッケージ……!
「ちょ、そこ動かさないで!」
「なにこれ? お菓子の袋? ゴミはちゃんと捨ててよねー」
そう言って桃香は "愛たん" をゴミ箱に捨てようとする。
「おい! それはゴミじゃねぇよ!」
「えぇ? 確かに女の子が描いてあるけど……」
馬鹿。マジで馬鹿。
こんだけ綺麗に置いてあるグッズをゴミだと勘違いするとか
マジで頭が悪すぎる。
「でもゴミじゃん」
「お前に俺の気持ちを分かれとは言わないが、勝手にお兄ちゃんの部屋に入って掃除を始めるのを辞めてくれ」
「え〜? だって部屋散らかってるの見るとつい……」
しくしく…と出てもない涙を拭うふりをして、また掃除を始める。
「それは、裏面から丁寧にカッターで切り取って梱包を出来るだけ傷つけないようにしためっちゃ気持ちのこもった物なんだよ。頼むから傷ひとつ付けないでくれ」
「え、ごめーん。折り目ついちゃったよ?」
「はぁ!?」
てへっ、とウィンクしている妹には目もくれず、
俺はすぐさま "愛たん" の傍に駆け寄る。
頼むから軽傷でありますように……!
「あああああぁぁぁ……っ」
祈りは届かず、顔が折れ曲がった "愛たん" がそこにあった。
「桃香ぁ……!」
「っていうか、触られたくないなら "緑也" ってちゃんと名前書いといてよ」
「名前なんて書くわけねぇだろ! グッズに名前書くやつなんか居ねぇんだよ!」
「でも誰のか分かんないじゃん! 青依お兄ちゃんなのか、きーくんなのか」
「どう考えても俺しか居ねぇよ! 俺が無駄に明るい元気野郎と誰に似たのか才能ありあり君のどこが似つくんだよ!」
「あ、なんかごめんね」
「うるせぇよ!! どっかいけ!!」
「はーい。あ、もうご飯だってママが」
「ご飯呼びに来てたのに掃除しようとしてたのかよ……」
「あーお腹減った! 早く来てね!」
「……はぁっ」
あーあ、きょうは最悪な日だ。
飯食ってすぐ寝よう。