②「作風をとりもどせ!!」
バイトをクビになったので書く時間が出来ました。
次のバイトを探すまでペース早いと思いますが、ブックマーク、感想をお願いいたします。
某検索エンジンは、いろいろなことを教えてくれる存在である故に「先生」と呼ばれている。
訊いた事をすぐに調べてくれるし、訊こうとしたことを予測して提案してくれるし、英訳・和訳もお手の物。何て良い教師なのだろう。
『あっ、あなたはこれを調べたいんじゃないですか? 良いですよ、私に任せてください!』
イメージは二十代の美人女教師。新米という訳じゃないけれど、生徒を思いやり寄り添う感じ。しかし、フレンドリーな余り生徒にちょっかいをかけられることもしばしば。
『先生がなんでも教えてあげますよ! どんと来い、です! お・な――お腹が痛かったりします? ……って、何を訊こうとしているんですか、もうっ!』
『その、一応調べましたけど……わっ、急にどうしたんですか!?』
『せっ……先生は別に保険体育の先生じゃないんですからね……っ!』
そう考えると、すごく萌える。……だが一つだけ、彼女に物申したいことがある。
『幼なじみ……結婚、とかですか? 後輩……かわいい、なんて♡ 妹……。妹?』
妹に対してだけ塩対応なのである。ちなみに「姉」と打ち込むと誕生日プレゼントはもちろんのこと、姉川の合戦を提案してくれる。なんでやねん。
要するに、結論。
妹に性教育されたい。
「きしょい」
俺の素晴らしい演説を聞いた友人、加藤の感想はこれでした。
「おい、どこが気色悪いんだよ。俺は検索エンジンの脆弱性についてだな……」
「脆弱性という言葉は、主にウイルス上の欠陥を指す言葉だよ」
……むう。
「それに、僕が吐き気を覚えたのはそこじゃあない。……いや、正直イメージの下りで、消化したはずの朝食が上ってきたけどさぁ」
「汚ぇな。下ったのか上ったのかどっちなんだよ」
「とにかくね、最後の結論がおかしいんだ。いくら賑やかで周りに聞こえないとはいえ、五月の朝日が差し込む教室の端で口に出されるべきワードじゃないんだよ」
確かに、言葉足らずだったかもしれん。
「妹に蔑まれながら手取り足取り教育してもらいたい」
「駄目だこいつ……なんとかするには遅すぎる……」
失礼だなぁ。親しき仲にも礼儀あり、だぞ。…………催してきた。家出る前に言っておけばよかったな。
「すまん、少しキジを撃ちに行ってくる」
ちなみに、キジ――雉を撃つ、という言葉は男版のお花摘みだ。なかなかシャレてるな。
「そんな小銃で?」
「ぶち殺すぞ」
確かにサイズに自信があるわけでは無いが、小さいわけじゃ――って、
「まるで俺の愛銃のサイズを知っているかのような口ぶりだな」
「…………さて、情報として売ろうかな」
「おいコラ、まさか俺の部屋にカメラを――」
「そんなことしてないよっ! そんな映像……見たくない!」
まあ、確かに。俺もお前のは見たくない。
「……ぶっちゃけ、大きいの?」
「その情報、売れねぇし、売るな! 気持ち悪ぃ!」
俺の友人、加藤。この学校の裏で暗躍する情報屋で、伝説の忍――加藤段蔵の末裔。
「錬汰。……気持ち悪い友人は、嫌かい?」
……前にもあったな、こんな質問。初めて話した時だったか。
…………やっぱ類は友を呼ぶってマジだな。コイツは大馬鹿野郎だ。
「嫌いだったら付き合ってねぇよ。怒るぞ」
「…………ごめん」
はぁ……。小便行ってくるか。
『ぶお~ん』
ポケットの中でスマホが震えた。あっぶね、チビるところだった。
「あぁ……バイト先?」
「……初仕事だってさ」
俺の名前は持内錬汰。この学校の何も特筆することがない二年生で、なんの伝説もない持内家の息子だ。強いて言えば、何故だかモテなさそうな気がする。
ついでに言うと、レンタル彼氏のバイトを最近始めた、レンタル彼氏「フツメン枠」だ。