目覚めたらあなたがいない
ダンの温かさでぐっすりと眠れたならば、ダンが消えたことで冷えたから私は目覚めたのだろう。
私は寒くないように布団をしっかりかけられているという過保護状態だったのに、隣にダンが眠っていないというそれだけで取り残されたような寂しさを感じてしまった。
一緒に寝たのは昨日が初めてだったのに。
ダンがもしもいなくなってしまったら、私は一体どうしたらいいのだろう。
――ティナ、ホテルに行ってくれるかな。俺もそろそろ終わりにしたいんだよ。
ようやく兄の気持ちがわかった気がする。
兄はダンが傍にいるだけで幸せだったのだ、きっと。
――終わりって?ジュリアン?
――欺瞞の世界の終わりって事。君はいつまでも可愛い子供で、ダンはいつまでも独身の親友。そんな世界の終わりだよ。俺はね、君の産んだ甥か姪を可愛がりたい気持ちもあるんだ。
猫や犬でなく、ナマケモノ(モモカ)を兄が買って来た気持ちがその時分かったのだ。
とっても寂しがり屋の彼なのに、私がダンを奪ったから、自分を抱き締めてくれる存在が必要になったのであろう。
でもモモカはダンに夢中になり、そのおかげで私とジュリアンはそんな生物に対しての愚痴を言いあったりをして、そう、意外と兄妹らしくなれたような気がする。
そうだ。
モモカが死んでしまうまで、私達の世界は完ぺきだったのだ。
完璧すぎて、誰も壊したくないって思って、恋心を心に仕舞っておこうと思う程に。
「私が子供を産んだらジュリアンは一緒にいてくれるのかな。いいえ、もしかしたら、自分とダンのハッピーエンドにはダンの未来が無いからと考えて諦めたの、かな?」
ずくん、と胸と一緒に下腹部も痛んだ。
私は胸の方ではなく、いつもは鬱陶しく感じるだけのその生理痛を生まれて初めて喜んだ。
これがあるからこそ私はダンの子供を産むことができる、というジュリアンが私に適う事が出来ないと思った優位性である。
「でも、生理があったって子供を産めない人だって沢山いるわ。私が子供を産めなかったら、兄がダンを想って諦めた気持ちを台無しにするのかしら。」
その時は、今度こそ私の方から去るべきなの?
「どうしたの?具合が悪いのかな?」
私の涙が零れたばかりのその時に、その涙を拭いに来たという風に私のヒーローが現れた。




