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幸運は使い果たした

 ティナの唇は柔らかく清純で、それはきっと彼女の言う通りに彼女が俺の為に誰ともキスをしていなかったからであろう。

 しみじみと感じた感激は、脳みそにその意味をしみ込ませた事で俺をハッとさせた。


 誰とも?俺の舌が彼女の中に侵入していいのか?気持ち悪がられないか?


 俺の動きはピタと止まった。


 唇は齧って舐めてもいたが、いいのか?このまま舌も入れてしまって!


 俺の躊躇に対してティナが不信感を抱く前に、俺の通信機器が再び余計な振動を起こした。

 先ほどティナをベッドに寝かせたその時にも邪魔をした振動だ。


「ダン、電話に出ないの?」


 俺のキスにうっとりしていた割には冷静な声をティナは出し、そのいつもの優等生ぶった振る舞いに対していつもは健気だと俺は思ってもいたが、今は俺をカチンとさせた。


「君は……。軍人の良き奥さんになれるよ。俺は悪い恋人になって欲しいのにね。」


「悪い恋人?どうするの?」


 目を丸くしながら、ねえねえ、という風に尋ねてくるのはいつものティナだ。

 このおねだりをするティナは今の俺でも大好きで可愛いと、彼女の頬にチュっと軽くキスをしてから悪戯をする同士のように彼女に微笑んだ。


「俺から電話を奪って捨ててしまいなさいよ。」


 ティナはくすくすと可愛らしく笑い、俺の腰へと手を伸ばした。

 通信機器は俺のズボンのポケットで振動している。

 彼女はそれを器用に取り出し、そして、捨てるわよ、という風に自分の目の前で通信機器をひらひらさせ……固まった。


 彫像のようになってしまったティナは、手に持っていたそれを床にごとりと落とした。


 俺は強張った表情になってしまったティナの姿に背筋が凍え、彼女が落とした「情報を伝えるもの」を拾い上げてその画面を見つめた。

 メイヤーからのもので、俺がほんの数分前に話したジュリアンが病院に運ばれたというものだった。


――ねえ、ダン。邪魔していたらごめん。コーヒーシュガーってどこに片付けていた?


 お前に何が起きたんだ?

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