真実はいつも斜め上
ジュリアンに後押しを貰い、情けなくも彼がお膳立ててくれたおかげで、今夜はティナとのやり直し一夜も出来そうな邂逅でもあったはずが、ティナはやっぱりジュリアンの妹だった。
――あなたが兄を愛していても――。
それ違う。
――あなたを順番に兄と取り合うのは嫌なの。
俺もそんな生活嫌だから。
彼女の誤解を笑えばいいのか、真面目に違うと言ってやった方がいいのか、とりあえず俺は脱力し、いや、本当は腹の底から笑っている自分を必死に隠していた。
ムードも何もあったものじゃないが、ティナは確実に俺を愛しているらしく、俺とのベッドの事まで想像してくれていたという事実を知ることが出来たのだ。
嬉しい事この上ないじゃないか。
玉砕覚悟でこの部屋に踏み入れ、ティナがバスルームから出てくることを待っていた時と比べれば、俺の踏みしめているこの場所は天国でしかない。
「ダン、あの、気分を悪くしたのかしら。あの、やっぱり、あなたは兄だけの方がいいのかしら。」
「違うよ、違う。どうして君がそんな誤解をしたのかふし……。」
ふしぎをふしだらと言い換えそうになってしまった。
俺の様子を窺うために俺の方へと四つん這いで動いて来たらしいが、その体制の為にローブの前はしっかりと重力によって下がり、胸どころか臍まで見通せそうなトンネルを作っていた。
「うわあ!」
俺は仰け反るようにして尻餅をついた。
しかし、その行動がティナには彼女を避けるためのものにしか思えなかったようだ。
悲しそうな表情になったティナは、両目に涙をじわっとにじませたのである。
彼女の涙を見ても、初めて心が痛まなかった。
俺の行動一つでティナが一喜一憂していたのだと思い知らせる涙でしかなく、その涙を目にした途端に俺の頭の中ではリンゴンリンゴンとウェディングベルががなり立てているのである。
もう結婚したじゃないかと言い聞かせてもだめだ。
まだ結婚していないだろ、とベルはけたたましく鳴り響く。
さあ、突撃しろ。
お前に破られる事を待っている清き膜へと進むのだ、と。
「うわあ!」
俺は情けなくも再びみっともない声を出すと身を起こし、これ以上の俺からの危険をティナに負わせるべきでないとローブの前立てへと両手を伸ばした。
俺はティナが勘違いしかしない純粋なたわけ者であったことを忘れていたようだ。
俺が前立てに手を伸ばしたその行為を、彼女は俺が彼女を抱き締めようとしていたと勘違いし、彼女から俺の胸に飛び込んでくれたのだ。
それはとっても素晴らしい行為だったともいえる。
彼女のローブの前立てをタイミング悪く掴んでしまった俺のせいで、俺の胸に彼女が飛び込んでくる時には、彼女の上半身が丸裸になってしまったのだ。
ぷるるん、と、音などしなかったが、俺の頭の中ではそんな音が木霊していた。




