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あなたはどこへ?

 私はドキドキどころではない。


 失敗した!という焦りと、このままの方がダンの本音が聞けるのかも!という打算が頭の中でせめぎ合ってしまった。

 しかしそこで結果がどうなるかどころか、数十秒後にはその闘争に参加していなかった別のところが私の肉体の主導権を奪ってしまった。


 私はいつだってダンを見つめていたいの、という乙女心だ。


 私はそっと瞼を開け、きっと私を見つめているだろうダンへと顔を向け、彼と視線を絡めようとした。

 …………いない。

 あなたは一体どこですか!


 ガバっとベッドから跳ね起きると、私は乙女心を捨て、バーゲンで欲しかった服をワゴンで取り合う時の女の気持ちになった。

 絶対にあのカットソーは私が手に入れるのよ!

 そのぐらいの闘争心だ。


 私はベッドからぴょんと飛び降りると、バスルームのドアを開け、いない!次にベッドの方へと急いで戻り、床に転がってベッド下を覗き込んだ。


 いない!


 ここにいられてそれを見つけてしまったら、それこそ気持ち的に困るかもしれないけれど、どうしてあなたはどこにもいないの!


 私は床にぺたんと座った格好で、ベッドの脇、部屋の真ん中ともいえる場所で叫んだ。


「ダン!あなたはどこに行ったの!バトンはどうしたっていうの!粉々になるんでしょう!」


 ははははは。


 心地よい男性的な笑い声が私の背中側から起き、私はそろりと声のした後ろへと振り向いた。

 ベッドの反対側、廊下に面した部屋のドアに寄りかかったダンが口元に手を当てて笑いに咽ており、私は自分の行動を全て彼に見られていたと気が付いて恥ずかしさで一杯になった。

 私の姿が獲物を求めるグールみたいだと、きっと彼に思われたはずだ。


 白いシャツにベスト姿のダンが輝いているのだから尚更に、そんな自分の浅ましい行動と格好に恥じ入るばかりである。

 せっかくエステでつやつやにしてもらった髪なんか、床に転んだりしていたからぼさぼさに膨れ上がってしまった。

 綺麗な肌になったはず身体は、着崩れたバスローブで清潔感どころではない。

 私は自分の姿の気恥ずかしさで、せっかくのダンに対して子供みたいな怒り声をあげてしまった。


「いたのだったら返事をしてよ。」


 私の乱暴な物言いに対してダンは気分を害するどころか、なんだかそこまで私のその振る舞いこそ嬉しいみたいに彼は目を細めた。

 ああ、なんてあなたは素敵なの!

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