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帰宅した俺を待つ者

 皮肉にも俺の職務放棄ともとれる早退は、俺を敵視しているらしいジュリアンの部下が手を借してくれた。

 メイヤーは思い詰める程に思い詰めており、ジュリアンの気持ちにようやく気が付いた鈍感な俺をジュリアンに差し出す事で一歩先に進みたいと望んでいるようだった。


「どうぞ行ってください。新婚のあなたが二日ぐらい欠勤しても、この平和な世界の軍部は全く困りませんからご心配なく。」


「君がジュリアンの気が惹けないのは、その毒のある所をあいつに見せた事が無いからだと思うよ。」


 メイヤーは俺を鼻で笑って見せた。


「あなたの真似をして純朴な間抜けを演じていた俺の失態ですね。養殖は天然には勝てないってさっさと気が付くべきでした。」


「意味がわかんないな!」



 そんなこんなで俺はムカつく後輩を基地に残して自宅に戻って来ていたのだが、まずジュリアンと話をする前にティナに席を外してもらうべきだと彼女の部屋に入った。

 しかし彼女は不在だ。

 俺の脳裏には涙をためた瞳のティナの顔がフラッシュバックし、慌てた俺は急いで通信機器を取り出した。だが、そんな俺の後ろからにょっきりと生えた腕によって俺の行動を止めてしまった。

 俺は後ろから抱き締められて囚われたのだ。


「ジュリアン?」


「ティナには俺から頼んだ。二日は戻らないでくれ、とね。」


「どうしてだ?」


 俺はジュリアンにそのまま後ろに引かれ、俺の背中にジュリアンの胸板を感じ、俺のうなじにはジュリアンの唇が当たった。


「俺がお前を愛していて、お前に振られたその後は二日くらい一人になりたいからかもね。」


 俺が、ジュリアンを、振る?

 明日からはジュリアンがいない世界になる、のか?


「どうしてお前が泣くんだよ。俺は覚悟を決めたんだ。さあ、俺を思い切ってくれ。俺はお前を愛している。愛しているんだ。返らない愛は辛くて堪らない。俺に引導を渡してくれ。」


「き、……君に、ああ、君に引導を渡したら、俺も君を思い切らなきゃいけないのか?」


 俺の十年はジュリアンと共にあったのだ。

 子供のような十代に出会い、そこから今まで一緒に歩んで大人になって来たのだ。


「簡単な一言だろ?俺の事は友人にしか見えない。俺はティナを愛している。その一言で終わりだ。」


「言ったら、どうなるんだ?」


「君はティナの向かったホテルに行く。俺は引越し業者を呼んでもう一つのアパルトメントに移動する。君達はここに住んでいてもいいし、別のところに新居を移してもいい。そんな感じ、かな。」


 俺は俺を抱き締めるジュリアンの腕を掴み、俺の身体から手を離させた。

 そして、俺はジュリアンから体を離し、そしてそして、俺は彼を正面から抱き締めた。


「ダン?」


「ティナの部屋で話す事じゃない。まず君の部屋に行きたい。いいかな。」


「一言なのにね。」


「黙って。」


 俺達は見つめ合い、どちらともなく唇を合わせていた。

 なんてことだよ!

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